【ジャパンC】イクイノックスがGⅠ連勝を伸ばす可能性大 好走候補はリバティアイランドと天皇賞(秋)敗退組

勝木淳

2023年ジャパンCに関するデータ,ⒸSPAIA

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世界の注目を集めるジャパンC

イクイノックスはドバイ、阪神、東京とまったく異なる舞台を走り、ドバイシーマクラシック以降、世界ナンバー1の座に君臨している。もはや国内にとどまらず、世界中の競馬ファンがジャパンCに注目している。世界の強豪を日本に招待し、世界と競う場を設けることで国内のレベルアップを目論んだレースは、43回目にして世界の耳目を集め、日本にいる世界ナンバー1ホースの雄姿を発信する場という、まるで逆のコンセプトに変わった。メアジードーツの衝撃から42年が経ち、イクイノックスの衝撃が世界を駆け巡るか。

または今回待ったをかける存在はいるのか。牝馬三冠を達成したリバティアイランドはイクイノックスに対し、斤量4キロのアドバンテージがある。同世代の牝馬を圧倒した女王とイクイノックスには差があるのか。単純に「1キロ=1馬身」とするなら、4馬身以内であれば逆転は可能になる。

天皇賞(秋)では乗り替わりと休み明けの分、本来の力を出せなかったドウデュース。今度はイクイノックスに先着を果たしたダービーと同じ舞台で相まみえる。ここまで1勝2敗と負け越しひとつ。雪辱を果たせるか。

ガネー賞を勝ったイレジンや、兵庫からチェスナットコート、クリノメガミエースも登録し、この秋にふさわしい豪華な一戦になりそうだ。データは過去10年分を使用する。

ジャパンCの人気別成績,ⒸSPAIA


人気別では1番人気が【5-1-2-2】勝率50.0%、複勝率80.0%と抜けている。その分、2番人気は【0-2-3-5】複勝率50.0%と善戦止まりで、勝ち馬はすべて5番人気以内。6番人気以下の2、3着は5頭にとどまり、基本は5番人気以内の競馬になる。

ジャパンCの年齢別成績,ⒸSPAIA


次に年齢の傾向をみる。リバティアイランドの3歳は【1-4-2-16】勝率4.3%、複勝率30.4%。三冠牝馬は18年アーモンドアイ1着、20年デアリングタクト3着。3歳牝馬は【1-2-1-6】で、斤量差を活かした好走は十分考えられる。イクイノックスに勝てるかどうかは別として、好走する可能性は極めて高い。

イクイノックス、ドウデュースなどの4歳は【5-3-3-37】勝率10.4%、複勝率22.9%。5勝のなかにはイクイノックスの父キタサンブラックもいる。データに父が入るのは珍しい。父はジャパンCを前後半1200m1:14.2-1:11.6で逃げ切った。天皇賞(秋)で3番手をとったイクイノックスはどんな戦法に出るだろうか。脚質も変幻自在な絶対王者は、タイトルホルダーとの枠の並びや出方次第では、父を彷彿とさせる先手もあるのではないか。実際、スロー濃厚のドバイシーマクラシックは自ら先頭に立ち、後続を完封した。

イクイノックス、初の中3週

もはやイクイノックスの前に細かなデータは必要ないかもしれない。ただ、馬券は残り2枠ある。データを検討し、着実に的中に結びつけたいものだ。そこでいつものように前走成績をみていこう。

ジャパンCの前走クラス別成績,ⒸSPAIA


データ上、どうにもならないのが外国調教馬だ。前走海外【0-1-0-29】の2着1回は14年ジャスタウェイで、外国調教馬のものではない。ハーツクライ産駒コンティニュアスが回避となり、今年も厳しそうだ。

ジャパンCの前走GⅠ、レース別成績,ⒸSPAIA


国内に視点を移す。前走GⅠ【7-6-7-48】勝率10.3%、複勝率29.4%は天皇賞(秋)【6-3-6-36】勝率11.8%、複勝率29.4%、秋華賞【1-1-1-3】勝率16.7%、複勝率50.0%が主要ローテだ。イクイノックスもリバティアイランドも残るが、ドウデュース、ダノンベルーガ、エヒトも候補になる。

ジャパンC、天皇賞(秋)での着順別成績,ⒸSPAIA


ジャパンC、天皇賞(秋)での人気別成績,ⒸSPAIA


天皇賞(秋)についてデータを見る。1着馬は【1-0-3-0】と馬券圏内を外さないものの、連勝はアーモンドアイしかいない。牡馬はキタサンブラックを筆頭に3頭とも3着に負けた。イクイノックスもはじめて中3週でレースに出走する。もちろん、若い頃のような弱さは微塵もなく、そもそもジャパンCが最大目標なので、ここで調整ミスが起きるとは思えない。父を超えてほしい。

ダノンベルーガの4着は【1-0-0-3】、ドウデュースやエヒトが当てはまる6~9着も【2-0-0-10】なので、データは巻き返しをあと押しする。2勝はエピファネイアとスワーヴリチャード。どちらも天皇賞(秋)が休み明けだった。特にエピファネイアは4月クイーンエリザベス2世C以来と長めの休養明けを使い、ジャパンCで復活を果たした。ドウデュースもこのシナリオに続きたい。

一方、天皇賞(秋)の人気別成績は1番人気が【3-0-3-1】勝率42.9%、複勝率85.7%と強く、2番人気だった馬は【0-1-0-2】複勝率33.3%と冴えない。4番人気【1-0-1-3】勝率20.0%、複勝率40.0%を根拠にダノンベルーガもある。ダービー4着馬で昨年のジャパンCは5着。昨年は天皇賞(秋)3着から着順を落としたが、今年はこれを踏まえて調整してくるはず。上昇があってもおかしくない。

今年の天皇賞(秋)は前後半1000m57.7-57.5、1:55.2と想像を超える競馬だった。前半1000m57.7で入って、後半はさらに0.2も速かった。これを3番手から抜けたイクイノックスは言うまでもなく、伝説クラス。このまま負けない公算は高い。天皇賞(秋)の反動を心配したくなるが、レース直後のイクイノックスは私の眼には涼しい顔をしていたように見えた。決して内面が追い詰められてもいない。

ジャパンCに関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。


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