【エリザベス女王杯】京都開催では欧州血統の馬が好相性 イチオシはルージュエヴァイユ

坂上明大

エリザベス女王杯の血統と傾向,ⒸSPAIA

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傾向解説

2019年以来4年ぶりに舞台を京都芝2200mに戻すエリザベス女王杯。阪神芝2200mの内回りから京都の外回りに替わるため、当然全体のペースも大きく変わってきます。本記事では京都と阪神の両開催での違いも含め、当レースの傾向を整理していきます。

年齢別成績(2013~19年),ⒸSPAIA


<年齢別成績(2013~19年)>
3歳【2-2-2-20】勝率7.7%/連対率15.4%/複勝率23.1%/単回収率44%/複回収率56%
4歳【5-3-4-30】勝率11.9%/連対率19.0%/複勝率28.6%/単回収率90%/複回収率98%
5歳【0-1-1-36】勝率0%/連対率2.6%/複勝率5.3%/単回収率0%/複回収率21%
6歳【0-1-0-11】勝率0%/連対率8.3%/複勝率8.3%/単回収率0%/複回収率27%
7歳以上【0-0-0-4】勝率0%/連対率0%/複勝率0%/単回収率0%/複回収率0%

まず紹介したいのは年齢別成績。データの通り、京都開催時の好走馬のほとんどは3~4歳馬です。当然これには、牝馬の多くが繁殖にあがるため高齢での出走が少ないことも多分に関係していますが、直線の長いコースの芝中距離戦は日本の主流条件のため、層が厚く世代交代が早い傾向にあることも関係しています。同じく層が厚い天皇賞(秋)やジャパンCでも同様の傾向。阪神開催時以上に年齢には注意する必要があるでしょう。

また、京都芝2200mと阪神芝2200mではペースの差も大きく、過去10年で京都開催だった2013~19年の7回の前後半1000m平均は61.7-59.5の後傾2.2秒。それに対して、阪神開催だった2020年以降の3回は同59.5-60.1の前傾0.6秒のハイペース競馬が繰り広げられました。そのため、京都芝2200mではスローペースからの末脚勝負、阪神芝2200mではハイペースでの消耗戦が基本。これは馬体重にも大きな影響を与えています。

馬体重別成績(2013~19年),ⒸSPAIA


<馬体重別成績(2013~19年)>
~439kg【1-2-0-12】勝率6.7%/連対率20.0%/複勝率20.0%/単回収率101%/複回収率101%
440~459kg【1-4-4-26】勝率2.9%/連対率14.3%/複勝率25.7%/単回収率19%/複回収率64%
460~479kg【3-1-2-38】勝率6.8%/連対率9.1%/複勝率13.6%/単回収率42%/複回収率56%
480~499kg【1-0-1-18】勝率5.0%/連対率5.0%/複勝率10.0%/単回収率19%/複回収率17%
500kg~【1-0-0-7】勝率12.5%/連対率12.5%/複勝率12.5%/単回収率67%/複回収率23%

データの通り、京都開催時は追走スピードが求められにくいため軽量馬の活躍が目立ち、逆に阪神開催時に馬体重510kg以上の馬が2勝していることもこの傾向の裏付けとなりそうです。

Sadler's Wells内包馬(2013~19年),ⒸSPAIA


<Sadler's Wells内包馬(2013~19年)>
該当馬【3-3-1-16】勝率13.0%/連対率26.1%/複勝率30.4%/単回収率110%/複回収率105%

血統面ではSadler's Wellsに注目。直線距離が長い芝中距離戦のため、ディープインパクトなどのサンデーサイレンス系やキングカメハメハなどのKingmambo系が強いことは間違いありません。ただ、ダービーやオークスなどと比べるとより成長力が求められ、さらにペースも緩みやすいため2000m以下のような基礎スピードも求められません。そうなると、北米血脈でスピードを強化したタイプよりも欧州血統で成長力と底力を強化した馬の方が合い、2018~19年は2年連続でSadler's Wells内包馬のワンツー決着となりました。


血統解説

・ブレイディヴェーグ
母インナーアージは2016、17年3着馬ミッキークイーンの全姉で、母自身も芝1600~2500mで4勝を挙げた中距離馬です。スレンダーな体つきは母譲りのそれで、ロードカナロア×ディープインパクトという主流血統でもあり、阪神芝2200mよりも京都芝2200mの方が条件は合うでしょう。遅咲きの3歳馬でもあり、初物づくしの舞台でもチャンスは十分です。

・ジェラルディーナ
母ジェンティルドンナは2014年有馬記念などGⅠ・7勝の名牝で、Lyphardの4×4やDanzigなどからFair Trial血脈を豊富に受け継いでおり、ディープインパクト産駒のなかでも機動力に長けた競走馬でした。モーリス産駒の本馬も小回りコースで機動力を生かす競馬がベスト。Sadler's Wellsの血を引き、標準程度の馬体重でもありますが、京都芝2200mがピッタリといった馬ではないでしょう。

・ルージュエヴァイユ
母母デインドリームは2011年凱旋門賞などGⅠ・5勝の名牝で、母父はSadler's Wells系Frankel。濃い近親交配で主張の強い母を、アウトブリードの父ジャスタウェイが支えており、父母の組み合わせも◎。無駄肉の少ない馬体から距離延長も歓迎で、血統面からは期待の一頭です。

エリザベス女王杯の血統と傾向,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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