【エリザベス女王杯】レコードはトゥザヴィクトリーの2:11.2 由緒ある牝馬GⅠの「記録」を振り返る

緒方きしん

2023年エリザベス女王杯の「記録」,ⒸSPAIA

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レコードで待望のGⅠ初制覇を飾ったトゥザヴィクトリー

中央競馬に加えて海外競馬、地方競馬でも盛り上がった三連休が終わり、今週はエリザベス女王杯が開催される。ここから年末まで中央競馬では怒涛のGⅠ開催が続く。

エリザベス女王杯は1976年から続く由緒あるレース。当初は牝馬三冠の最終戦として親しまれてきたが、秋華賞が創設された1996年からは3歳(現表記)と古馬が激突する2200m戦へと変貌を遂げた。今回は、京都開催のエリザベス女王杯にまつわる記録を振り返っていく。

レースレコードは2分11秒2。勝ち馬はトゥザヴィクトリーで、これがGⅠ初勝利だった。本馬は早くから期待された素質馬で、重賞未出走ながら挑戦した桜花賞では5番人気3着といきなり好走。オークス、秋華賞ではどちらも1番人気に推されたものの、タイトルには手が届かなかった。

翌年には2戦連続で重賞逃げ切り勝ちを収めてエリザベス女王杯に挑んだものの、直線でファレノプシスらに差されて4着と敗北。翌年はダートに切り替えてフェブラリーSで3着、ドバイワールドCで2着と好走。その後、再びエリザベス女王杯に挑戦し、前年とは一転して後方からの競馬で差し切った。

基本的に2分11秒〜2分14秒で決着しているエリザベス女王杯。創設されてから今まで2分15秒台での決着は一度もない。しかし2年連続で2分16秒台で決着したことがあり、それがともに重馬場開催だった2012年レインボーダリアの2分16秒3と、2013年メイショウマンボの2分16秒6である。レインボーダリアは4度目のGⅠ挑戦で初の馬券圏内となる大金星、一方でメイショウマンボはこれが5度目のGⅠ出走で、オークス、秋華賞に続くGⅠ・3連勝という快進撃を遂げた勝利だった。

また、阪神開催の2020年には2分10秒3という時計でラッキーライラックが勝利をあげている。本馬は前年に京都でも同レースを勝利しているため、"京都・阪神でエリザベス女王杯を制した唯一の牝馬"だ。

上がり36.9のテイエムプリキュアが32.9の末脚を凌ぐ

その他の記録を見ていくと、2019年ラッキーライラックはエリザベス女王杯史上、最速の上がりタイムを繰り出した勝ち馬でもある。上がり32.8という数字は、勝ち馬だけでなく馬券圏内だった全ての馬の中で最速だった。2位は2009年3着のブエナビスタが出した32.9となっている。

また、馬券圏内の馬で最も上がりが遅かったのは、上述のブエナビスタが上がり32.9の脚を使った2009年2着のテイエムプリキュア。記録した上がりは36.9で、同レース勝ち馬クィーンスプマンテも36.8と、そのレースの異質ぶりがその上がり差からも見てとれる。1番人気ブエナビスタが大逃げを打った2頭を猛然と追い込むも、惜しくも届かなかったあのエリザベス女王杯は、今でも語り草となっている。

ちなみにクィーンスプマンテは11番人気だったが、これは現行のエリザベス女王杯における最低人気勝利でもある。世代GⅠ時代の1989年には20番人気サンドピアリスが勝利し、1986年以降のGⅠレースで最も高配当な単勝430.6倍という大記録も飛び出している。

2着と最大着差をつけて勝利したのは、2010年のスノーフェアリー。イギリスからの遠征馬が2着のメイショウベルーガに0.7秒差をつけて圧勝。中団から上がり最速34.0の末脚を繰り出し、4馬身差の完勝劇を見せた。スノーフェアリーは翌年もエリザベス女王杯に出走し、粘るアヴェンチュラをまたしても上がり最速で差し切り、連覇を達成した。日本馬で最大着差をつけたのはファインモーションで、無敗の秋華賞馬が重賞3勝馬だった古馬ダイヤモンドビコーに0.4秒差をつけて勝利をあげている。

混戦模様の今年のエリザベス女王杯だが、果たしてどのようなレースとなるだろうか。過去の名勝負と見比べつつ、堪能したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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