【天皇賞(秋)】「左回りGⅠ連対馬」に関する複勝率85.7%データあり データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

2023年天皇賞(秋)、穴馬候補のイメージ,ⒸSPAIA

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データで見る「穴候補3頭」

今週日曜の東京メインは天皇賞(秋)。秋古馬三冠の初戦を飾る伝統の中距離GⅠだ。

注目はなんといっても「世界最強馬」イクイノックスと、日本ダービー馬ドウデュースの2頭だろう。3歳秋以降は驚愕のレースを続けるイクイノックスが人気の上では一歩リードしそうだが、いやいや、ドウデュースも4歳始動戦の京都記念を圧勝し、今回は限りなくベストに近い東京芝2000mが舞台。両者一歩も譲らない名勝負が期待できそうだ。

とはいえ、他の出走馬も例年なら1、2番人気に推されても不思議のないツワモノ揃い。この2頭にお手上げとするのは早計だろう。今週も様々な切り口のデータを駆使し、3頭の穴馬候補を導き出した。


同年の左回りGⅠ実績が決定打 ダノンベルーガ

まずはダノンベルーガをチョイス。昨年のクラシックではイクイノックス、ドウデュースとしのぎを削った、現4歳世代トップ格の1頭だ。

天皇賞(秋)、年齢別成績(過去10年),ⒸSPAIA


……と本題の前に。天皇賞(秋)についてデータ的な前提を紹介しておきたい。このレースは高齢馬の不振が著しく、過去10年で5歳以下【10-10-9-76】、6歳以上【0-0-1-51】と明暗くっきり。6歳以上で馬券に絡んだのは13年3番人気3着エイシンフラッシュ(6歳)ただ1頭であり、複勝回収率は2%という有様だ。あらゆる買い材料を「6歳以上」という減点要素が全てかき消してしまう。予想の上でもデータを見る上でも、年齢の話を避けては通れない……と、先に断っておく。

天皇賞(秋)、同年左回り芝GⅠ連対馬の成績(過去10年),ⒸSPAIA


話をダノンベルーガに戻す。天皇賞(秋)では「同年、左回りの芝GⅠで連対していた馬」が好成績。なお、ここ10年では事実上、東京かドバイのGⅠで結果を出してきた馬のことになる。

該当馬の成績は【5-4-3-6】勝率27.8%、複勝率66.7%。このうち6歳以上馬と、異次元の不良馬場だった17年(キタサンブラックが勝った年)を除くと【5-4-3-2】複勝率85.7%、複回収率160%まで上昇する。

ダノンベルーガは昨年このレースでイクイノックスと0.2秒差の3着。今年は左回り芝1800mのGⅠドバイターフで日本馬最先着の2着に健闘した。札幌記念は4着に敗れてしまったが、ああいう力の要る馬場の1周競馬より、大箱東京のパンパン良馬場が合うのは今さら書くまでもないだろう。絶好の条件替わりを味方に、同期2頭にリベンジだ。


「秋天は逃げ馬不利」の通説を逆手に ジャックドール

2頭目は大阪杯の勝ち馬ジャックドールを取り上げる。登録中唯一といっていい逃げ馬で、展開の利は大きいだろう。

ところで、「天皇賞(秋)は逃げ馬が不利」と言われることがある。確かに、このレースを逃げて勝ったのは91年プレクラスニーが最後。ただこれもメジロマックイーンの1位入線18着降着によるもので、正確に言うと「逃げ切り」ではない。「逃げ切り」は87年のニッポーテイオー以降、実に35年間起こっていない。

天皇賞(秋)、逃げた馬の成績,ⒸSPAIA


しかし、逃げ馬は本当に不利なのか。2000年以降の22回(中山開催除く)を対象に逃げ馬の成績を調べると【0-2-3-17】。この大半は伏兵で、GⅠ馬(国内外問わず)が逃げたケースに限ると【0-2-3-5】複勝率50.0%と案外悪くない。そして、やはり5歳以下に絞ると【0-2-3-3】で複勝率62.5%、複回収率162%とさらにアップする。「逃げが不利」というより、「紛れにくいレースなので、力のない馬は逃げても残れない」と言った方が的確ではないか。実際、昨年は海外GⅠ馬のパンサラッサが大逃げであわやのシーンを作った。

「若いGⅠ馬が逃げたら複勝率6割超」とくれば、ジャックドールを推さない手はない。もともと左回り2000mがベストの戦績であり、近走より一段パフォーマンスを上げる予感はある。イクイノックス、ドウデュースらが後ろで睨み合ううちにセーフティーリードを作れれば、36年ぶりの逃走劇が成るかもしれない。


秋の府中でキタサンまつり ガイアフォース

3頭目はガイアフォースの名前を挙げる。安田記念で4着に入った芦毛の4歳牡馬で、父はイクイノックスと同じキタサンブラックだ。

キタサンブラック産駒の成績(通算),ⒸSPAIA


これまでのキタサンブラック産駒の大まかな傾向としては、「小回りより広いコースが得意」「牡馬に活躍馬が偏る」の2点が挙げられる。この東京芝2000mもフィットする条件のひとつであり、産駒の当コース成績は【6-5-2-17】。牡馬に限ると【5-3-2-6】勝率31.3%、複勝率62.5%、複回収率149%と頼もしい数字だ。

「じゃあイクイノックスじゃないか」と思った方もいるだろう。それもその通りなのだが、穴でガイアフォースも侮れない。セントライト記念でアスクビクターモアを破り、マイラーズCはシュネルマイスターとタイム差なし2着、安田記念ではジャックドールに先着。カテゴリは違えど、GⅠ級の相手と互角に戦えることは証明済みだ。2000mの距離では昨夏小倉で1.56.8の衝撃的なレコードVもある。人気馬を脅かす存在になりうるだろう。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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