【天皇賞(秋)】1600m戦に近いスピードが必要 唯一のクロフネ内包馬ガイアフォースに注目

坂上明大

天皇賞(秋)の注目血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

出走予定馬は11頭と少ないものの(アサマノイタズラ、スターズオンアースは回避表明済み)、世界最高レーティングのイクイノックスを筆頭に4頭のGⅠ馬が集結し、GⅠ上位実績馬も多数登録。3歳世代の参戦がないのが少々残念ですが、レベルの高いレースになることは間違いないでしょう。本記事では血統面を中心に、天皇賞(秋)のレース傾向を整理していきます。

大前提として把握しておく必要があるのは、東京芝2000mは日本競馬のド真ん中に位置づけられるコースであるということ。日本競馬が芝1600~2500mを中心に形成されていることはGⅠの数や賞金額からも明白で、特に東京競馬場に代表されるような直線の長いコースが日本の主流コースと呼べる舞台です。そしてそれは競走馬の生産自体が、強い芝中距離馬をつくることをメインテーマにしていることを意味し、層が厚いがゆえに世代交代のスパンが短いこともメインカテゴリーらしい特徴といえるでしょう。そのため、過去10年の天皇賞(秋)では6歳以上での好走が2013年3着馬エイシンフラッシュ(当時6歳)の1回のみで、これはジャパンCでも同じ傾向にあります。

天皇賞(秋)の年齢別成績,ⒸSPAIA


<天皇賞(秋)の年齢別成績(過去10年)>
3歳【2-0-2-8】勝率16.7%/連対率16.7%/複勝率33.3%/単回収率50%/複回収率50%
4歳【3-6-4-30】勝率7.0%/連対率20.9%/複勝率30.2%/単回収率46%/複回収率83%
5歳【5-4-3-38】勝率10.0%/連対率18.0%/複勝率24.0%/単回収率45%/複回収率50%
6歳【0-0-1-29】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率3.3%/単回収率0%/複回収率5%
7歳以上【0-0-0-22】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%

逆に言えば、適性が向いていない馬の方が少ないため、他のGⅠよりも適性評価の重要度は低いといえます。そのなかでも特徴的な傾向としては、距離延長馬の活躍が目立つという点。3歳馬は日本ダービーからの直行が多いですが、4~5歳馬の前走距離別成績は距離延長馬、特に芝1600mからの延長馬が非常に優秀です。

天皇賞(秋)の前走距離別成績,ⒸSPAIA


<天皇賞(秋)の前走距離別成績(4、5歳馬 過去10年)>
距離短縮【3-4-2-30】勝率7.7%/連対率17.9%/複勝率23.1%/単回収率24%/複回収率49%
同距離【1-3-0-18】勝率4.5%/連対率18.2%/複勝率18.2%/単回収率16%/複回収率47%
距離延長【4-3-5-20】勝率12.5%/連対率21.9%/複勝率37.5%/単回収率92%/複回収率98%

また、芝1600m以下の重賞勝ち馬も好成績。特に外回りの京都と阪神、東京のマイル重賞勝ち馬の成績は非常に優秀で、前走距離別成績も考慮するとマイラー的なスピードが求められやすいレースだと推測できます。ちなみに、2歳重賞は本来の距離適性より短い距離を走っている可能性が高いため、マイル適性を測るにはあまり向いていません。

天皇賞(秋)出走馬、芝1600m以下の重賞勝ち馬の成績(4、5歳馬 過去10年),ⒸSPAIA


<天皇賞(秋) 芝1600m以下の重賞勝ち馬の成績(4、5歳馬 過去10年)>
該当馬【4-5-5-6】勝率20.0%/連対率45.0%/複勝率70.0%/単回収率110%/複回収率171%
※2歳重賞は除く

血統面で注目したいのはクロフネ。勝ち切れてはいないものの、2015年10番人気2着、2016年6番人気3着ステファノスや2019年6番人気3着アエロリットなど、数少ない出走回数から次々と人気薄での好走馬を輩出しています。スピード指向の強いクロフネの活躍も、マイラー的なスピードが求められていることの裏付けといえるのではないでしょうか。

天皇賞(秋) クロフネ内包馬の成績(5歳以下 過去10年),ⒸSPAIA


<天皇賞(秋) クロフネ内包馬の成績(5歳以下 過去10年)>
該当馬【0-1-3-1】勝率0.0%/連対率20.0%/複勝率80.0%/単回収率0%/複回収率248%


血統解説

・イクイノックス
母シャトーブランシュは2015年マーメイドSの勝ち馬で、本馬の半兄には2021年ラジオNIKKEI賞勝ち馬ヴァイスメテオールがいます。父にキタサンブラックを配し、母父キングヘイローの部分だけが瞬発力を担っているような形。Lyphardの血も5・5×4で継続しており、若駒時のキレキレのイメージよりもバランスの良い万能型という評価が正しいでしょう。当然、東京芝2000mの舞台適性も低くありませんが、前走2200mからの距離短縮はやや割引です。

・プログノーシス
母ヴェルダはイギリス産の繁殖牝馬で、ヨーロッパ繋養時代には2013年チェヴァリーパークS勝ち馬Vordaなどを出しています。ディープインパクト産駒としては非主流型の血統構成で、腹袋の立派な馬体からも中距離での消耗戦に滅法強いタイプといえるでしょう。国内GⅠでは宝塚記念がピッタリです。

・ガイアフォース
母ナターレは2011年戸塚記念を制すなど長丁場の競馬で実績を残しており、キタサンブラック産駒の本馬もピュアマイラーという可能性は低いでしょう。それでも、6月の安田記念では0.2秒差の4着。さらに、今回のメンバーでクロフネの血を持つのは本馬のみであり、血統面からは最注目馬に挙げたい一頭です。

天皇賞(秋)有力馬の血統と評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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