【菊花賞】ダービー馬タスティエーラに多くの不安 データで導く「過信禁物の注目馬」

藤川祐輔

2023年菊花賞、「過信禁物の注目馬」,ⒸSPAIA

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牡馬三冠の最終戦

10月22日、京都競馬場で菊花賞(GⅠ)が行われる。当レースは京都3000mの条件で施行されるが、これほどの長距離レースはほとんどの出走馬にとって初めての経験となる。距離適性の差や、展開で下馬評が覆ることも珍しくなく、近5年で連対を果たした1番人気馬は無敗三冠を達成したコントレイルのみだ。

波乱も多い一戦だけに、人気馬の取捨選択は馬券検討においても重要なポイントとなる。今回は阪神開催の21、22年を除いた2011~20年のデータを基に「過信禁物の注目馬」を導いていく。


乗り替わりは苦戦傾向

騎手の乗り替わりに関する成績,ⒸSPAIA


まず注目したいのが、鞍上に関するデータである。前走からの継続騎乗で当レースに臨んだ馬は【9-6-8-97】勝率7.5%、連対率12.5%、複勝率19.2%となっており、馬券圏内に好走する馬の多くがこの組に含まれる。一方で前走から鞍上が乗り替わりとなった馬は【1-4-2-53】勝率1.7%、連対率8.3%、複勝率11.7%と苦戦気味だ。

乗り替わりで勝利したのはフィエールマン(18年)だけ。この馬は後に天皇賞(春)を2連覇しており、結果的に能力と舞台適性の両方が抜きん出ていたと言える。このようにステイヤーとしての高い資質を秘めている馬ならば例外だが、基本的に乗り替わりの馬は評価を下げるべきだろう。


近年は「西高東低」が顕著

所属別成績,ⒸSPAIA


次に取り上げるのは東西所属別の成績だ。栗東所属馬は【9-10-8-104】勝率6.9%、連対率14.5%、複勝率20.6%と、近年の好走馬の大半は関西馬であった。一方の美浦所属馬は【1-0-2-46】勝率、連対率2.0%、複勝率6.1%と極端に成績が落ち込んでいる。

また、馬券圏内に好走した関東所属馬はいずれも単勝オッズが10倍以上であり、人気馬は馬券に絡めていなかった。ディーマジェスティ(16年2番人気4着)、ジェネラーレウーノ(18年4番人気9着)といった、春GⅠの実績馬たちも、当レースでは人気を裏切る結果に終わっている。

菊花賞は春のクラシック2戦とは異なり関西圏での実施となる。関東馬にとっては初めての長距離輸送となるケースも少なくないだけに、馬の心身に与える影響がデータに反映されていると考察できる。3000mの長丁場で折り合いが肝心なレースだけに、輸送による影響は他のレースと比べても大きいことは想像に難くない。極端に「西高東低」の傾向が出ていることから、関東馬は軽視した方が良さそうだ。


ノーザンダンサー系は好走馬が1頭のみ

主な種牡馬系統別成績,ⒸSPAIA


最後は血統に関するデータを紹介する。種牡馬系統別の成績を見るとサンデーサイレンス系が【8-8-6-95】勝率6.8%、連対率13.7%、複勝率18.8%と良好で、多くの好走馬を輩出している。また、ロベルト系も【1-2-1-8】勝率8.3%、連対率25.0%、複勝率33.3%と母数こそ少ないが優秀な成績を収めている。

一方でミスタープロスペクター系は【1-0-2-23】勝率、連対率3.8%、複勝率11.5%と低調で、同様にノーザンダンサー系も【0-0-1-16】複勝率5.9%と振るっていない。

特にノーザンダンサー系は好走馬がバンデ(13年3番人気3着)の1頭のみであり、複勝回収率も18%と低調で馬券的な妙味は薄い。ブラストワンピース(18年1番人気4着)、ニシノデイジー(19年2番人気9着)といった上位人気馬たちも敗れているだけに、この系統の馬は軽視が妥当だろう。


データで導く「過信禁物の注目馬」

ここまでに紹介したデータをまとめると、当レースにおける不安要素は以下の通りである。

・鞍上が乗り替わり
・関東馬
・父がノーザンダンサー系

これらを踏まえて、今回はタスティエーラを「過信禁物の注目馬」として挙げる。世代の頂点に立ったダービー馬ではあるが、上記3つ全ての不安データに該当する。また、日本ダービーから直行のローテーションは1986年以降で5例しかなく、全てが着外に沈んでいる。まさに異例の臨戦過程であり、秋の初戦でいきなり3000mの過酷な条件で好走するのは難しいだろう。

他にも初の関西輸送である点など不安要素が多いことから、思わぬ凡走も十分に考えられる。「ダービー馬」の勲章が人気を押し上げるようなら妙味も見込めず、馬券の中心に据えることは避けた方が良さそうだ。

《ライタープロフィール》
藤川祐輔
98年生まれ、新進気鋭の若手ライター。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。以前は別媒体での執筆を行っていたが、より「予想」にフォーカスした記事を書きたいと考えSPAIA競馬への寄稿をスタート。いつの日か馬を買うのが夢。

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