【菊花賞】最後の一冠を制するのはどの馬か ソールオリエンス、タスティエーラ、サトノグランツをデータで比較
高橋楓
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春の二冠を分け合った両雄が参戦
10月22日に京都競馬場で菊花賞が開催される。今年は皐月賞、日本ダービーでワンツーを決めた2頭が参戦。それだけでも今年の菊花賞は楽しみが広がる。とはいえ、セントライト記念でソールオリエンスが敗れたように、ひと夏を越したことで他馬にもチャンスはありそうだ。そこで今回は春の二強ソールオリエンス、タスティエーラとトライアルを制したサトノグランツの3頭を比較し、菊花賞制覇に一番近い馬を考えてみたい。
トライアル出走組が圧倒的に優位
はじめに3頭の前走レースから見ていく。皐月賞馬ソールオリエンスはセントライト記念2着、ダービー馬タスティエーラは直行、そしてサトノグランツは神戸新聞杯を制して菊花賞に向かってきた。近10年の前走レース別成績は以下のようになる。
セントライト記念組【3-3-1-43】
日本ダービー組【0-0-0-1】
神戸新聞杯組【6-5-4-51】
近10年の勝ち馬は、2018年ラジオNIKKEI賞2着からの臨戦だったフィエールマン以外は、すべてトライアル組だ。まずはソールオリエンスのセントライト記念から見ていこう。2015年キタサンブラック、阪神開催だった2021年タイトルホルダー、2022年アスクビクターモアと3頭が菊花賞を制している。タイトルホルダーは13着、アスクビクターモアは2着から巻き返しており、ソールオリエンスの敗戦を気にする必要はなさそうだ。ちなみにセントライト記念2着馬は本番で【1-1-1-4】と3頭が馬券に絡んでいる。
次にタスティエーラ。そもそもダービーからの直行例が少なく、近10年で2021年ディープモンスターの前走16着、菊花賞5着の一度のみ。1986年以降でみても【0-0-0-5】。近年は直行ローテもずいぶん当たり前になったが、3000mという未知のマラソンコースに挑むうえでは正直、不安が残る。
最後はトライアルの神戸新聞杯を制したサトノグランツ。このローテが最も結果を残していて、6頭が1着、15頭が馬券に絡んでいる。神戸新聞杯勝ち馬は【3-0-2-2】で堅実な走りをしているが、菊花賞を制した3頭はすべて日本ダービーの連対馬。11着だったサトノグランツにとってはあまりありがたくないデータになる。前走レースの面ではソールオリエンスが一歩リードといったところだ。
ソールオリエンスの末脚が生きる舞台
次に3頭のここまでの走りを振り返ってみたい。
ソールオリエンス
通算【3-2-0-0】2000m以上【2-2-0-0】上がり3Fベスト33秒3
タスティエーラ
通算【3-1-0-1】2000m以上【2-1-0-0】上がり3Fベスト33秒5
サトノグランツ
通算【4-1-0-2】2000m以上【3-1-0-1】上がり3Fベスト33秒1
まずはソールオリエンス。衝撃だったのが皐月賞の内容だ。重馬場のなか4コーナー後方から2頭目の17番手にいながら、直線だけで全馬を差し切った。今でも鬼脚として語り草になっている、1993年のナリタタイシンがビワハヤヒデとウイニングチケットを差し切った時が4コーナー12番手だったことからも、どれほど異次元だったかが分かる。
皐月賞の上がり3F35秒5は、上がり3F2位タイのファントムシーフより0秒9も速かった。菊花賞が行われる京都芝3000mは長距離戦でスローペースになることが多く、直線で切れ味の鋭い馬が台頭するケースが多い。皐月賞のようなレースが出来れば二冠達成は十分にありうる。
次にタスティエーラ。皐月賞2着、日本ダービー1着と当然、このメンバーではトップクラスの成績。上がり3Fのベストは33秒5。3頭の中では一番遅いが、先団にとりついて早めに抜け出すタイプだけに、そこまで気にする必要はない。しかし、決して切れる脚が使えるタイプではないことは頭に入れておきたい。
最後にサトノグランツ。上がり3Fベストは33秒1。3頭の中では一番速く、近2走連続で記録している。最後は良い脚を使えるタイプで、ソールオリエンスより前でレースが出来れば面白い存在だ。
2500m以上はJ.モレイラ騎手が一歩リード
競馬界には「長距離は騎手で買え」という有名な格言がある。ということで今回は、騎乗予定の3騎手の長距離成績を調べてみた。ただレースが行われる京都芝3000mだけではサンプルが少なすぎるので、2013年10月1日~2023年10月16日までの、芝2500m以上の計549レースを対象に集計してみた。
横山武史【10-7-12-83】
J.モレイラ【7-1-3-7】
川田将雅【12-8-10-52】
まずはソールオリエンスに騎乗予定の横山武史騎手。勝率8.9%、連対率15.2%、複勝率25.9%と3騎手の中では見劣る。1番人気でも【4-0-1-7】複勝率41.7%と少し心許ない。とはいえ菊花賞は2021年(阪神開催)タイトルホルダーで1着、2022年(阪神開催)ドゥラドーレスで4着など大崩れはしておらず、相性はむしろいい方だ。
次にタスティエーラとコンビを組む予定のJ.モレイラ騎手。騎乗機会が18回しかなかったが7勝を挙げ、勝率38.9%、連対率44.4%、複勝率61.1%とハイアベレージを残している。また、1番人気の成績が【6-0-2-1】に対し、2番人気以下【1-1-1-6】と傾向がはっきり分かれているので、当日の人気に注目したい。
最後にサトノグランツに騎乗予定の川田将雅騎手。勝率14.6%、連対率24.4%、複勝率36.6%で、10勝以上あげている日本人騎手のなかではトップの数字だ。ただし、勝利は全てOPクラス以下で、重賞では【0-4-6-34】複勝率22.7%。平均人気5.3に対して平均着順7.6と、人気を下回っている点は気になる。
産駒の距離別成績からソールオリエンスがリード
有力馬3頭の父について、種牡馬別成績を騎手同様の条件で調べてみようと思ったが、サトノクラウンとサトノダイヤモンドが昨年の新種牡馬、キタサンブラック産駒も2021年夏デビューで、サンプル数が少ない。そこで今回は、各産駒のデビュー~2023年10月16日までの成績から、それぞれの特徴を見ていくことにする。
まずはソールオリエンスが該当するキタサンブラック産駒。これまで芝92勝に対し、ダート39勝と芝が優位だ。芝の距離別成績をみると、
1400m未満【8-14-7-55】勝率9.5%
1400~1600m【27-22-15-139】勝率13.3%
1700~2000m【47-34-33-254】勝率12.8%
2100~2400m【7-4-7-51】勝率10.1%
2500m以上【3-1-1-10】勝率20.0%
2500m以上のレースで勝率20.0%、単回収率147%と一番の成績になっている。3000mが舞台の今回は追い風となるデータだ。
続いてタスティエーラが該当するサトノクラウン産駒。同産駒は芝22勝、ダート5勝。芝の距離別成績は、
1400m未満【3-2-1-42】勝率6.3%
1400~1600m【9-6-7-93】勝率7.8%
1700~2000m【8-10-13-170】勝率4.0%
2100~2400m【1-0-1-12】勝率7.1%
2500m以上【1-0-2-8】勝率9.1%
勝利は2000m以下のレースに集中していて、距離の壁がある印象。2500m以上の1勝は未勝利戦で、1勝クラス以上では連対もない。ただサンプル数が少なく判断が難しい。
最後にサトノグランツが該当するサトノダイヤモンド産駒。芝32勝に対しダート10勝。デビュー当初は期待の高さから色々な声が上がったが、現状は芝でしっかり成績を残している。芝の距離別成績をみると、
1400m未満【5-4-3-21】勝率15.2%
1400~1600m【5-4-7-53】勝率7.2%
1700~2000m【19-12-17-127】勝率10.9%
2100~2400m【3-2-3-28】勝率8.3%
2500m以上【0-0-0-6】勝率0.0%
1400m未満の短距離戦で勝率15.2%と、距離別では一番良い成績を残している。これには正直驚いた。2500m以上は6戦だけだが、最高6着と掲示板にも載っていない。サトノクラウン産駒同様にサンプル数が少なく判断が難しいが、サトノダイヤモンド自身は皐月賞3着、ダービー2着、神戸新聞杯1着から菊花賞を制覇し、長距離で良績を残している。2400mで2勝しているサトノグランツならデータを覆す力もあるのではないか。
ここまで見てきて、菊花賞制覇に一番近いのはソールオリエンスだろう。皐月賞のパフォーマンスが発揮出来れば二冠達成のチャンスは十分ある。しかし、タスティエーラには長距離戦に滅法強いJ.モレイラ騎手が騎乗予定で、サトノグランツには先日の秋華賞でリバティアイランドを牝馬三冠に導いた川田将雅騎手が騎乗予定。データ的には一歩劣る両馬だが、逆転があってもなんら不思議はない。
《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。
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