【菊花賞】「皐月賞5着以内からのダービー大敗」で単勝回収率267%! データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

【2023年菊花賞、データで導く穴馬候補3頭のイメージ】,ⒸSPAIA

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データで見る「穴候補3頭」

今週の日曜メインは芝3000mの長距離戦・菊花賞。3年ぶりに戦いの地を淀に戻す、牡馬クラシックの最終戦だ。

皐月賞馬ソールオリエンス、日本ダービー馬タスティエーラが中心ではあるものの、戦前からリバティアイランド1強ムードだった先週とは打って変わって、チャンスのある馬は多い印象だ。今週も様々な角度のデータから、3頭の穴馬候補を導き出した。

ダービー大敗がむしろ「買い材料」!? ファントムシーフ

まず筆頭にファントムシーフを取り上げる。これまで三度GⅠに出走して2、1、3番人気に推されるもタイトルには手が届かず。ただ、共同通信杯ではタスティエーラを破っている。

菊花賞というレースの性質をざっくり述べると、「皐月賞の着順とは正の相関が強く、ダービーとはそうでもない」になる。これは皐月賞と菊花賞がどちらも「操縦性の高さ」と「ロングスパートのなかで相対的に伸びる末脚」を要求するのに対し、日本ダービーはもっとシンプルな、「長くて軽い直線で出せる末脚の破壊力」を問うレースだからだろう。

皐月賞出走時の着順別成績(過去10年)


実際にデータを見る。過去10年の菊花賞において、同年皐月賞の5着以内馬は【6-2-3-11】勝率27.3%、複勝率50.0%、単回収率138%、複回収率137%。これに対して、同6着以下は【0-1-1-38】複勝率5.0%、複回収率18%。皐月で結果が出せれば菊でも戦えるし、皐月がダメなら菊もダメ、という傾向が明確に生じている。

その皐月賞で5着以内に入り、「ダービーで6着以下に敗れた馬」の菊花賞成績は【2-1-1-4】で複勝率50.0%、単回収率267%、複回収率223%と素晴らしい。春二冠どちらも好走した馬は人気を背負いすぎるキライがあり、ダービーの大敗馬は侮られて妙味が発生する。馬券的に狙うべきは当然、後者だ。

ファントムシーフは皐月賞3着ののち、ダービー8着に敗退。神戸新聞杯は逃げの手に出るも3着に終わった。しかし近2走はどちらも自身の限界に近い、上がり33秒台中盤を使ってのキレ負けであり、距離延長でもう少し上がりのかかる展開を作れれば大仕事の可能性は十二分にある。怪盗が狙うとんでもないお宝はただひとつ。それは菊花賞馬の称号だ。

対古馬の「2200m実績」がキーに リビアングラス

2頭目は阿賀野川特別の勝ち馬リビアングラスをチョイス。ノースヒルズ系の勝負服、キズナ産駒の牡馬、そしてジリジリと粘り強い末脚。なんとなくディープボンドを彷彿とさせるプロフィールの持ち主だ。

春クラシック未出走組の条件別成績(過去10年)


先ほど同様、菊花賞の過去10年を対象にデータを見る。春クラシック未出走のいわゆる「上がり馬」は【4-4-6-76】複勝率15.6%で可もなく不可もなし。数の上でも率の上でも、皐月賞かダービーに出走した組と大差ない。ただ、明白に「春既成勢力」>「上がり馬」のデータが出る秋華賞に比べると、新興勢力にもチャンスのあるレースだと言える。

では二冠未出走組から選ぶならどういう馬か。興味深いのは、古馬相手に「2勝クラス以上の2200m戦」を勝っていた馬が【0-2-3-4】複勝率55.6%、複回収率314%と奮戦していること。ちなみに阿賀野川特別勝ち馬に限っても17年ポポカテペトル(13番人気3着)、18年ユーキャンスマイル(10番人気3着)が穴を開けている。2000mでも2600mでもなく、「2200m」というのがミソだ。

以下は仮説だが、夏から秋口の芝2200m戦は新潟、中京、阪神など初角までが遠くてペースが上がりやすい上に、(内回りや下り坂で)早仕掛けを誘発するコース形態が多い。必然的にスタミナを問う競馬になる。そういうスタミナ勝負の中で古馬に勝てるようなら、菊花賞でも複勝圏内までは顔を出せる、ということだと思う。

リビアングラスの前走は1000m通過58.9秒のハイペースで逃げる競馬。後半も12.0-12.4-12.4-12.2-11.6-11.8とほぼ息を入れず、持続力勝負に持ち込んで後続を完封した。スタミナ満点で距離延長は大歓迎。矢作芳人厩舎から新たなスター逃げ馬が誕生しても驚きはない。

長距離は「ルメールを自動的に買え」? ドゥレッツァ

ドゥレッツァが3頭目。こちらも古馬相手に2200m戦の日本海Sを勝っている。馬の能力もさることながら、やはり長距離は騎手。騎乗予定のルメール騎手がとにかく長距離戦に強い。

C.ルメール騎手の芝3000m以上成績(過去10年)


過去10年、3000m以上での騎乗成績は【8-2-6-9】勝率32.0%、複勝率64.0%、単回収率131%、複回収率112%。「ルメールを自動的に買え!」はひとつの真理といってもいい。

さらに踏み込むと、ルメール騎手の菊花賞成績は【2-2-1-2】で複勝率71.4%。着外は未曽有の不良馬場に泣いたアルアインと、皐月賞17着、ダービー5着、セントライト記念5着の戦績で2番人気はやや荷が重かったニシノデイジー。言い方を変えれば、前走3着以内の馬に騎乗して良馬場だった5戦はパーフェクトで馬券圏内だ。

ドゥレッツァ自身も未勝利戦でサトノグランツを破り、2走前ホンコンJCTは上がり32.7秒の豪脚を発揮。前走は骨っぽい古馬を相手に、前残りの展開を物ともせず差し切った。奇しくもこの父ドゥラメンテと、ソールオリエンスの父キタサンブラック、タスティエーラの父サトノクラウンは現役時代同期としてしのぎを削った間柄。父の名に懸けて、最後の一冠は譲れない。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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