【神戸新聞杯】ナイトインロンドンに2つの不安要素 データで導く「過信禁物の注目馬」

藤川祐輔

2023年神戸新聞杯の過信禁物の注目馬像,ⒸSPAIA

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阪神に戻る今年は順当決着の予感

9月24日、阪神競馬場では神戸新聞杯(GⅡ)が行われる。近3年は中京競馬場で行われており、波乱含みの決着も多かった。だがそれ以前の阪神開催の過去10年間では1番人気馬が9連対、2桁人気馬の激走は1度もなく順当決着の傾向が強い。

特に今年は登録メンバーが13頭と少なく、高配当は望みにくい。少頭数のレースで買い目を絞るためにも、予想に際しては人気馬の取捨選択が重要になりそうだ。今回は阪神競馬場で行われた過去10年(2010年~2019年)のデータを基に「過信禁物の注目馬」を導いていく。


日本ダービーからの転戦組が圧倒、その他は相手まで

2023年神戸新聞杯の前走レース別成績,ⒸSPAIA


前走のレース別成績を見ると、日本ダービーからの転戦組が【9-6-2-25】勝率21.4%、連対率35.7%、複勝率40.5%と圧倒的な成績を残している。当然ながらダービーまで駒を進めた面々は世代のトップレベルであり、当レースでもその力を存分に発揮していることがわかる。

その他の重賞・オープンからの転戦組は【0-1-5-18】勝率0.0%、連対率4.2%、複勝率25.0%とまずまずの成績だが、勝ち馬は1頭も出ていない。前走で条件戦を使った馬は【1-3-3-59】勝率1.5%、複勝率6.1%、連対率10.6%と勝ち馬こそ1頭輩出しているが、複勝率は大きく落ち込んでいる。

このように、前走のレベルが落ちるにつれて複勝率も低下していることがわかる。したがって、日本ダービー出走組が優勢であり、それ以外のレースからの転戦馬は相手までに留めるのが無難だろう。


前走右回りよりも左回りが優勢

複勝率が10.6%と低かった前走条件戦組だが、7頭が馬券圏内入りを果たしている。今年の注目馬にも条件戦を勝利してきた上がり馬がおり、この組の取捨選択が重要になりそうだ。これを絞り込むために2つのデータを紹介していく。

2023年神戸新聞杯、前走条件戦組の周回方向別成績,ⒸSPAIA


1つ目は前走の周回方向別の成績だ。前走条件戦組の中で、右回りコースだった馬の成績は【0-1-2-49】勝率0.0%、連対率1.9%、複勝率5.8%で、当レースと同じ右回りであるにも関わらず全く奮っていない。一方、左回りを使っていた馬は【1-2-1-10】勝率7.1%、連対率21.4%、複勝率28.6%と好成績だ。

この要因としては、各コースの直線の長さが関係していると考えられる。夏のローカル開催で使われる右回りの競馬場は札幌・函館・福島・小倉であり、4場とも直線の短い小回りコースだ。それに対して左回りの新潟・中京は直線が長い。

当レースの舞台である阪神2400mは外回りの直線が長いコースであり、コーナーでの旋回性能よりも直線での瞬発力が強く要求される。この直線の長さの違いを考えれば左右の回りこそ違えども、求められる能力により近い新潟・中京コースで結果を残してきた馬が好成績を残している点にも納得がいく。よって、右回りコースからの転戦組は評価を下げたい。

2023年神戸新聞杯、前走条件戦組の距離別成績,ⒸSPAIA


前走条件戦組に関するデータで、次に紹介するのが前走距離別の成績だ。前走で2200m以下を使っていた馬の成績は【1-3-3-38】勝率2.2%、連対率8.9%、複勝率15.6%で、この中に前走条件戦から好走した7頭全てが含まれる。一方の2400m以上を使っていた馬は【0-0-0-21】勝率0.0%、連対率0.0%、複勝率0.0%と全滅だ。

2400m以上の長距離での条件戦はレース数が多くなく、そういった条件を狙って使う馬は純粋なスピードよりも持久力に秀でているケースが多い。一方で神戸新聞杯は2400mではあるがスローペースの傾向が非常に強く、前半1000mの通過が60秒を切った年はフルゲートで行われた13年のみ。この年も1000m通過は59.8秒と決して速くはなく、62秒~63秒の緩いラップを刻んでいる年も多い。

結果的に後半3ハロンの瞬発力勝負になりやすく、加速力やトップスピードに秀でた馬が好走している。こうしたラップの傾向を踏まえた上でも、前走2400m以上の条件戦組には荷が重いレースとなるだろう。


データで導く「過信禁物の注目馬」

ここまで紹介したデータを総括すると、当レースにおける不安要素は以下の2点となる。

・前走条件戦で右回り
・前走条件戦で2400m以上

これを踏まえて、今回はナイトインロンドンを「過信禁物の注目馬」とする。当馬はデビューから2戦は二の脚がつかず後方からのレースで敗れていたが、弱点が改善しレースの流れに乗れるようになると一変。未勝利から前走の阿寒湖特別(2勝クラス)まで余裕のレースぶりで3連勝を飾った。

勢いそのままに菊への切符を期待する声も多いが、前走が右回りの2600m戦であり2つの不安データに該当。デビュー戦以外の4戦で上がり最速をマークしているものの33秒台の末脚は一度も出せておらず、一線級を相手にスローからの瞬発力勝負で通用するかは疑問が残る。洋芝、長距離という当レースとは関連性が薄い前走結果で人気を集めるようなら、積極的に買い目に入れる必要性は感じない。

《ライタープロフィール》
藤川祐輔
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。

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