【小倉2歳S】キャリア2戦の経験値と末脚が魅力 本命候補は大外のアスクワンタイム

山崎エリカ

2023年小倉2歳SのPP指数,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

外枠の差し馬が優勢

小倉2歳Sが行われる小倉芝1200mは、コース最高部の2角ポケットからスタートして、すぐに下り坂となるため、ダッシュが付きやすく、非常にテンが速くなりやすい。また3~4角もスパイラルカーブで下りとなっているため、スピードが落ちにくく、ハイペースになりやすいのが特徴だ。

また小倉芝は開催が進んだわりに内側がそこまで悪くないが、内より中目が伸びる馬場状態。逃げ、先行馬よりも外枠の差し馬が優勢と見て予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

小倉2歳SのPP指数,ⒸSPAIA


【能力値1位 ビッグドリーム】
夏の福島開幕週の芝1200m新馬戦の勝ち馬。同レースは大外10番枠からトップスタートを決めハナに立つ勢いだったが、内からパキラがハナを主張したので、スッと控えて2番手を追走し、折り合うセンスの良さを見せた。3~4角で早々と先頭に並びかけると、直線では馬場の良い外に出す余裕があった。あとは完全な独り舞台。後続に6馬身差を付けて圧勝した。

ただラスト2Fは11秒4-11秒9。良い指数の圧勝劇だったが、着差が付いたのは多少相手に恵まれた面があった。実際、この新馬の2着以下からまだ1頭も未勝利戦を勝ち上がった馬がいない。本馬の全兄は現3歳芝短距離路線で大活躍中のビッグシーザー。同馬は大型馬だが、本馬もかなりの大型馬でフットワークの軽さが目立つ。

ビッグシーザーは新馬戦で敗れて初勝利はデビュー3戦目の未勝利戦だった。しかし、そこで1クラス上の好指数を記録し快進撃が始まった。そこが今後の成長曲線にどのような影響を与えるか。本馬も将来的に大きな活躍が期待できるが、ここは割り引きたい。

【能力値2位 ミルテンベルク】
6月の阪神芝1200m新馬戦の勝ち馬。同レースは2番枠から抜群のスタートを切ったが、コントロールして2番手を追走。馬場がタフだったからか、芝1200mの新馬戦なのに早々にバテる馬が多数で、最後の直線入り口では隊列がバラけた。本馬はラスト1F手前で楽に先頭。追われてから強烈に伸びるというわけではなかったが、2着馬ドナヴィーナスに3馬身差をつけて楽勝。3着馬には10馬身差をつけての好指数勝ちだった。

馬場状態が悪く、ラスト2Fは11秒5-12秒0とさすがに減速したが、自身の上がり3Fタイム35秒1はこの日の馬場としては優秀。同日8Rの古馬1勝クラスで、今春のオークス2着に相当する指数で勝利した3歳牝馬マスクトディーヴァが、上がり3Fタイム34秒6を記録。これにはかなり差を付けられたが、同日の古馬を含めて3位タイの上がり3Fタイムを記録したことは評価できる。ここも有力な一頭だ。

【能力値3位 パッシングシャワー】
夏の小倉開幕週の芝1200m新馬戦の勝ち馬。同レースは1番枠からはっきりと出遅れて最後方からの出だし。ポジション取りでは苦しい形となったが、道中で進路を探しながら徐々に位置を上げ、3角では好位の内に入った。さらに、4角入口では2列目、出口で馬の間を割って2番手で進路を作ると、フットワークの回転が上がった。最後は逃げ馬を目標に抜け出し、2着馬に1馬身1/4差、さらに3着馬に3馬身半差を付けて勝利した。

競馬センスの高さを感じさせるレースぶり。走破タイム1分9秒1もこの日の小倉芝としてはなかなか優秀。ラスト2Fは11秒3-11秒7と減速したが、上がり3Fタイム34秒3はこの日の小倉芝では古馬を含めて最速だった。

この日の小倉芝は後半に向けて馬場が急速に悪化したのであまり高い評価はできないが、ある程度は評価して良いはず。また、出遅れて新馬戦を勝利した馬は、次走で大きく上昇することが多く、今回10頭立ての6番枠、差し馬場の小倉芝1200mも加点材料。今回の対抗候補だ。

【能力値4位 キャンシーエンゼル】
7月の中京芝1200m新馬戦の勝ち馬。同レースは4番枠から好スタートを切って一旦は先頭に立ったが、外からニシノミニョンヌが押してハナを主張したので、控えて速い流れの2番手を追走。最後の直線では同馬が飛ばしていたが、ラスト1Fでそれを交わすと、そのまま押し切り2着に2馬身半差をつけて勝利した。

走破タイムは同日1Rの2歳未利戦よりもかなり速いが、これは馬場回復が影響したのだろう。ラスト2Fは11秒5-12秒0とラスト1Fでそこまで余裕がなく、今回で上昇し切れない可能性が高い。しかし、それでも新馬戦としては良い指数だっただけに警戒はしておきたい。

【能力値5位 アスクワンタイム】
新馬戦は発走後に外に膨らむロスがありながら、外から良い脚で伸びて上がり3F最速タイで2着。勝ったクリノハレルヤがかなり強い勝ち方だったが、本馬も光るものを見せていた。

前走はデビュー2戦目で、6番枠から五分のスタートを切った。二の脚でやや置かれて中団の外を追走していたが、そこから位置を押し上げ3角では4番手。コーナーで内から押し上げて3番手に上がり、直線では前を目標にスパート。残り300m付近で先頭に立つと、後続を引き離し、5馬身差で圧勝した。

ラスト2Fは11秒2-12秒6ではあるが、これでデビューから2戦連続上がり3Fタイム最速と底を見せていない。今回は外差し有利の馬場で大外10番枠を引き、脚を溜める競馬でどれだけ弾けるか楽しみだ。この時期の2歳戦はキャリアを積んでいる優位性もあるだけに、本命候補としたい。

穴馬は2戦2勝のテイエムチュララン

前走のひまわり賞は8番枠から五分のスタートだったが、そこからダッシュ良く先頭に立ってハナを主張。しばらくエイヨーカルムに競られて緩みないペースで逃げたため、本馬も最後の直線では苦しくなって外に寄れる場面があった。それでもしぶとく粘り通して、2着馬に3馬身半差で勝利した。

ラスト2Fは11秒6-12秒5。さすがにラスト1Fで失速したが、かなりタフな馬場で2歳戦としてはかなりのハイペースで逃げたことを考えれば仕方ない。新馬戦でも序盤からウエルカムキリシマと競り合い、緩みないペースで逃げたことで、最後の直線では苦しくなり蛇行したが、もうちょっと脚をタメて追走できれば問題ないだろう。

今回はテンの速いドナヴィーナスを見ながらレースができる組み合わせ。メンバー中で唯一の2勝馬であり、キャリアも2戦と他馬よりも豊富な点が魅力。ここを勝てば1998年コウエイロマン以来の九州産馬による小倉2歳S勝ちとなる。調子がいいからの連闘策であれば、ここでも通用していい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ビッグドリームの前走指数「-6」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.6秒速い
●指数欄の下線の茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

《関連記事》
【小倉2歳S】先行して多くの経験を積んだ新馬戦を評価 京大競馬研の本命はパッシングシャワー
【小倉2歳S】注目はデビュー戦圧勝のビッグドリーム 同舞台組なら上がり最速のパッシングシャワー
【小倉2歳S】3着以内の過半数が「新馬勝ち」 最多の好データはパッシングシャワー

おすすめ記事