【クイーンS回顧】ドゥーラは持続力勝負なら牝馬トップクラス 圧巻の走りで札幌重賞2勝目
勝木淳
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かつてはトレンドだったオークスからクイーンS
クイーンSは過去10年で3歳【1-0-0-10】で、勝利したのはNHKマイルCを勝ったアエロリット1頭しかおらず、苦戦傾向だった。しかし、このデータ範囲を少し広げると、10年アプリコットフィズ、11年アヴェンチュラ、12年アイムユアーズと3連勝した時期があり、クイーンSは3歳馬を買おうという傾向のときもあった。
2000年以降、前走がオークスだった馬は【3-1-3-19】とひと昔前は出走数も多く、トレンドのローテだった時期もある。だが、近年は19年メイショウショウブ以降、2年間出走がなく、昨年は桜花賞2着、オークス13着ウォーターナビレラが1番人気で10着に敗れたこともあり、トレンドではないのではという見方もあった。
オークスからクイーンSは中9週であり、春のクラシックを戦ったあとに立て直すには期間が短い。最近、流行のオークスから秋華賞直行という形なら、夏は一度馬を緩めて休ませられるが、中9週で重賞出走となれば、そこまで休ませられない。ある程度の状態を維持しつつ、ゆっくりさせるのが上策というもの。書くは易しでそれは簡単ではないはず。しかし、今年は3着ドゥーラ以下3頭が出走と、久々にかつてのトレンドローテが復活した。
血統表に並ぶ持続力特化の種牡馬
そして、今年はドゥーラが勝った。それも完勝だった。斎藤新騎手は相当自信があったにちがいない。道中は馬群に入れず、中団の外を追走、4コーナーで大外を抜群の手ごたえで回ってきた。古馬より軽い51キロとはいえ、2着ウインピクシスとの着差1馬身差以上のインパクトがあった。
だが、ドゥーラは今年、チューリップ賞、桜花賞、オークスと王道を戦い、3戦を消化していた。中9週での好走はなぜだろうか。これを冷静に分析すれば、チューリップ賞は最後の直線で進路がなく、追えないまま15着。桜花賞もスタートで遅れ、後方から14着とさほど消耗しなかった。オークス3着もきっとマイル2戦で競馬に参加できなかったからだろう。実際、同じオークス組のキタウイングは8着、ライトクオンタムも9着に負けており、どちらもマイナス体重での出走で、オークスの影響があったか。
ドゥーラもマイナス14キロではあったが、あれだけ走れば疲れがあったとは思えない。もともと、同舞台の札幌2歳Sを勝ったコース巧者で、今回もそのレースのイメージがあった。後半1000m11.6-11.7-11.7-11.7-11.7とラップが上下しない札幌特有のロングスパート合戦はドゥーラがもっとも得意とするところだ。父ドゥラメンテ、母父キングヘイロー、母系の3代父ステイゴールドに父系にトニービンと持続力に特化した血がズラリと並ぶ。牝馬同士の持久力戦ならドゥーラと覚えておこう。同時に瞬発力勝負だとあっさり負けることもありそうで、そういった条件で大敗後ならば、オークスで15番人気だったように馬券的な妙味もある。
ウインピクシスは血統面の強みが生きた
2着ウインピクシスは後半1000mのロングスパート戦を2番手から粘った。これも内容は濃い。行かなければモロい面があったが、今回はスタートがあまりよくなく、控える形になったことで新味をみせた。父ゴールドシップは北海道の洋芝に強く、札幌芝1800mでは【4-4-3-18】単勝回収値は247%もあり、穴のイメージもある。適度に上がりを要し、コーナーが緩くて動きやすい札幌は合う。ウインピクシスの好走はそんな血統的にハマった面もあるので、次走以降は条件に合うかよく注意しよう。
3着コスタボニータは2走前の阪神牝馬S以来の好走。スローのマイル戦で好走し、1800mに勝ち鞍があるのは、1800m巧者の典型であり、今後もこの距離か、直線が長く、ペースが緩くなりやすいマイル戦で狙える。イスラボニータ産駒は現状、芝では1400か1600mにツボがあり、1800m以上は確率が落ちる。ただ、コスタボニータは母の父ケンドールが欧州マイラー血統も、この系統はゼダーンからグレイソヴリンにさかのぼる欧州ナスルーラの血。ヨーロッパのマイルに合うということは、日本の1800mぐらいがスピード的にちょうどいい可能性もある。ここがイスラボニータとマッチし、距離的には1800mまでなら安定して走れそうだ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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