【クイーンS】好条件そろったウインピクシスの巻き返しに期待 内枠有利の舞台、出走馬をPP指数で分析
山崎エリカ
ⒸSPAIA
内枠有利の舞台
札幌はJRA全競馬場の中でもっともコーナーの距離が長いコース。コーナーで外を回ると距離損が大きくなる上に、札幌芝1800mは最初のコーナー(1角)までの距離が185mと極めて短く、外枠の馬はスタートも二の脚も速くないと初角の時点で外を回ることになるため、ロスなく立ち回れる内枠有利なコースとなっている。また、レース当日は開催2週目で内側の芝の状態も良い。
実際に札幌で行われた直近10年で1~2番枠だった馬は、5勝、2着2回、3着4回と活躍していることから、なるべく内枠の馬を中心視するのが常套手段と言える。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 ジネストラ】
3走前の若潮S(3勝クラス)では3着馬に3馬身差を付け、2着と好走した馬。3走前は4番枠から好スタートを切ってハナを主張。最序盤で内からアールバロンが絡んだので、そこから促して差を広げ、その後もペースは落とさず、ややスローペースで一貫したペースの逃げ。最後の直線序盤でも後続を引き離したが、ラスト1Fで甘くなったところを外からゾンニッヒ(後のダービー卿CT・3着)に迫られ、ハナ差で敗れたが、負けて強しの内容&指数だった。
しかし、本馬は逃げにこだわるタイプではない。前々走の幕張Sでは4番枠からまずまずのスタートを切ったが、内からかなり押してハナを主張するルースに行かせて2番手を追走。向正面で内から2頭に捲られてもそれに付き合わずに単独4番手に控え、3角で最内からスペースを詰めて4角で2列目の外に出されると、ここでも直線序盤で抜け出して勝利している。
また前走の福島牝馬Sは初めての1800m戦を意識し、8番枠から五分のスタートを切って、コントロールしながら中団中目を追走。道中は進路を作れず、後方に近い位置。さらにラスト4Fが速い流れで3角で内にモタれて仕掛けが遅れ、4角で大外から進出するロスが生じながらも4着に善戦しているように、差す競馬もできる。
本馬は幅広いレースに対応できる点は魅力で、実力ほど人気にならないタイプ。ただし、今回は外枠。今回のメンバーだと3列目くらいからの競馬で外々を回る可能性が高いだけに、それがどうか? 今回も崩れすに走ってくる可能性が高いが、前走の福島牝馬Sは向正面でストーリアが一気に捲ったことで差し馬有利のレースになっているので、前に行った馬の巻き返しに期待したい。
【能力値2位 グランスラムアスク】
逃げの手に出て目下2連勝と勢いのある馬。前々走の胎内川特別では10番枠からまずまずのスタートだったが、そこからしつこく押してハナを主張する形。ハナを取り切ってからは、徐々にペースを落としてはいたが、大逃げの形で3角。3~4角でもペースをそれほど落とさず、後続と3馬身半差で直線へ。直線序盤でじわっと加速し、残り300mくらいで追い出されると、後続との差をさらに広げて4馬身差で圧勝した。
前走の弥彦Sも9番枠からまずまずのスタートで、ここでもしつこく押されたが、序盤はホウオウカラーズの2列目。そこから外枠を活かしてじわっとハナを奪い取り、そこからは前々走同様に徐々にペースを落とし、3~4角でも我慢。後続と2馬身半差で直線へ。ラスト2Fで半馬身差に詰められ、ラスト1Fで外のルドヴィクスにハナ差まで迫られたが、何とか押し切った。
本馬はこれまで逃げて4勝しているが、そのどれもが二の脚で楽に先頭に立ってのものではなく、新潟・東京の3角まで750mあるコースを生かして、時間を掛けてハナを主張し、勝利したもの。最初の1角までの距離が185mと短い札幌芝1800mの昨夏の1勝クラス時は、4番枠だったが前に行けずに8着に敗れている。
また今回は前回の休養明けから連闘、中1週、中1週、中1週で使われており、今回はそこから休ませての一戦。矢作厩舎は本質的にレースを短期間で使えるだけ使って、疲れが出たら休ませるというスタイルの厩舎。この場合の始動戦は楽をさせた影響で走れないことが多く、本馬も苦戦が予想される。
【能力値3位 ルビーカサブランカ】
牡馬が相手だった昨年のチャレンジCの2着馬。同レースはレッドベルオーブの大逃げで、阪神芝2000mで前半5F57秒7-後半5F59秒8のかなり速い流れとなった。本馬は2番枠からまずまずのスタートを切ったが、徐々に置かれて後方付近まで下がり、1~2角のコーナーワークで最内から中団に押し上げ、3~4角では前のエヒトが外に出したことで4列目の最内を通し、4角出口でひとつ外に出して3列目で直線へ。序盤で馬群を捌いてすっと伸び、ラスト1Fで2番手。そのまま前に食らいついて、外のエヒトの追撃を振り切ってクビ差の2着だった。
チャレンジCは差し馬有利の流れを、1~4角まで最短距離という完璧な立ち回りで、自己最高指数を記録した。本馬は前走の函館記念でも2着に好走しているが、同レースも時計の掛かる馬場を前半5F60秒0-後半5F61秒4のややハイペースを7番枠から中団の内をすくって1~2角では最内を追走。3角で下がったテーオーシリウスを外から交わして、4角でまた内に入れ、そこから押し上げて2列目で直線へ。序盤で前を割って先頭に立ったが、ラスト1Fで外からローシャムパークに一気に突き抜けられ、最後はブローザホーンの追撃をアタマ差凌いでの2着だった。
本馬の好走パターンは速い流れの芝2000m戦を中団の内目からロスなく立ち回ってのもの。かなりの高速馬場での芝1800m戦だと、前々走の巴賞時のように、テンに置かれて最後の直線でジリジリとしか差を詰められない可能性が高い。この夏に復帰してから順調に来ており、ここもそれなりに走ってくるとは見ているが、距離と展開が不安だ。
【能力値4位 ビジン】
芝でデビューしたものの初ダートで1勝目を挙げ、しばらくダートを使われていたが、4走前に愛知杯を使われると、中団中目から最後の直線で意外な伸びを見せ、再び芝路線に転向。前々走では皐月賞当日のタフな馬場で行われた芝2500mのサンシャインSを勝利した。
サンシャインSは13番枠からやや出遅れたが、そこから二の脚でじわっと先行し、逃げ馬から離れた2番手を追走。3角の時点で逃げ馬との差は8馬身くらいあったが、3~4角の外から一気に差を詰めて4角で逃げ馬に並びかけると、直線序盤で先頭。ラスト1Fで外から迫るホウオウエクレールをクビ差で振り切り、3着馬に5馬身差以上で完勝した。前半5F61秒4-後半5F64秒0とかなりレースが流れていただけに、前から押し切った内容は高く評価できる。
また前走のマーメイドSでは超高速馬場にも対応し、6着に善戦している。前3頭がゴリゴリに競り合って前半5F57秒3の超絶ハイペースになったが、本馬は前3頭から離れた2列目の外4番手を追走。3~4角で外から前に並びかけ、4角で先頭。直線序盤で苦しくなって内から外から差される結果となった。
前走は早仕掛けが祟っての6着だったが、もう少し仕掛けを遅らせていればもっと上の着順が狙えていた可能性もある。本馬は再び芝路線に転向してから地力を付けているが、近走の良馬場時は、前へ行く積極的な競馬をしているだけに、外枠の今回で後半型の競馬をした場合に、どこまで鋭い脚が使えるかが未知なものがある。それだけに侮れない。
【能力値5位 サトノセシル】
牡馬が相手だった昨年の福島記念での2着馬。7番枠から五分のスタートを切って、そこから促されて好位の直後の中目を追走。2角過ぎからペースが落ち着いたので徐々に前との差を詰めて好位の外まで上がり、3~4角で好位外から位置を押し上げて、3列目の3番手で直線へ。序盤ですっと2番手に上がったが、ユニコーンライオンとの差は詰められず、最後に少し詰めたが1馬身3/4差の2着だった。それでも相手を考えれば、強い内容だった。
本馬は昨年のクイーンSでも2着。同レースは4番枠から五分のスタートを切ったが少し狭くなって二の脚がひと息。それでも枠の利で好位の内目を追走したが、1角できゅう屈になって中団と一列下げる形。結局、3角で外を回り、3~4角の大外から回して追い上げ3列目くらいで直線へ。序盤でしぶとく伸びて2列目まで上がり、ラスト1Fで先頭のローザノワールを捉えたが、内から上がってきたテルツェットとの叩き合いとなり、ハナ差敗れた。
昨年のクイーンSも強い内容だったが、前の位置を取り切れないことが祟って、3~4角でロスの大きい競馬になっており、今回もそういう競馬になることが予想される、また昨年は長期休養明け3戦目、今年はぶっつけ本番となる。本馬は前記の福島記念も休養明け2戦目だったように、叩いて良化するタイプでこの中間の追い切りの動きも平凡だった。ここよりもこの先で狙いたい。
穴馬はラッキーゲートを引き当てたウインピクシス
【ウインピクシス】
4走前の五色沼特別(2勝クラス)では、13番枠から思い切ってハナを主張し、後続にしっかり差をつけて強い内容で逃げ切り勝ち。するとその次走の壇の浦S(3勝クラス)では、重馬場の小倉芝1800mを2番枠からトップスタートを切ってハナを主張し、緩みないペースで逃げて快勝した。このように自分の形の競馬ができれば強い馬だ。
次走の中山牝馬Sではその強さが評価され、4番人気に支持されたが8着敗退。大外14番からやや出遅れたが、そこから促して1角までにハナを取り切って主導権を握る競馬。序盤で無理脚を使わせた帳尻合わせのように、1~2角で強烈にペースを落とし、そしてまた競られて慌てて一気にペースを引き上げる酷い乗り方だったこともあり、ラスト1Fで甘くなって8着に失速した。
また前走の福島牝馬Sは、12番枠から五分のスタートを切って、二の脚の速さで楽にハナを狙えそうだったが、なぜかブレーキで内枠から先頭に立ったストゥーティとハナを譲り合う競馬。道中もブレーキをかけながら2番手を追走。その結果、超絶スローペースとなり、向正面でストーリアらに一気に捲られて蓋をされ、3~4角で馬場の悪化した最内から抵抗する形。直線でも馬場の悪い内を通り、ゴール手前でも進路が狭くなって13着に大敗した。
今回は、横山武騎手に乗り替わり鞍上強化。さらに2番枠を引き当てた今回はハナへ行ける可能性が高い。好走条件が整った今回は本命候補だ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ジネストラの前走指数「-18」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.8秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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