【中京記念】前に行けばしぶといセルバーグ 休み明け2戦目の変わり身に期待

山崎エリカ

2023年中京記念出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

差しが決まりやすい

2018年は逃げ馬が多く、前半3Fが33秒8と速くなり、1分32秒3のレコード決着となった。しかし、このレースの多くは前半3Fが34秒後半~35秒前半と遅めながら、3~4角の下り坂でペースが一気に上がり、残り340mの上り坂で失速するパターンが多い。これは外差し馬場のときによく見られる傾向だが、今年も3回中京開催の最終週らしく、外差しが有利の傾向となっている。

このため中京芝1600mの直近8年で逃げ馬の3着内はなし、先行馬も2勝2着2回3着0回と前に行く馬は苦戦傾向。基本的に差し、追込馬有利の傾向となっている。しかし、2019年に同年ヴィクトリアM2着の追込馬プリモシーンが前半の遅い流れを意識し、3角手前から早めに動いてラスト1Fで失速して3着に敗れたように、差し、追込馬が早めに動いて自滅することもしばしばある。負けられない立場の差し馬は危険だが、無欲の差し馬には注意したい。

能力値1~5位の紹介

2023年中京記念出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 ウイングレイテスト】
3勝クラスで何度も善戦しながら勝利するのに17戦も要したが、オープンに昇級してからはわずか2戦で4走前のニューイヤーSを制した馬。4走前は1番枠から好スタートを切り、そこから促されて先行したが、最終的にハナを取り切った。松岡騎手らしく、外の逃げ馬ノルカソルカがハナへ行くなら2番手でもいいというスタイルで逃げていたが、同馬は前々走のディセンバーSで大逃げを打って最下位に敗れたことから、ハナには行かずに折り合いに専念していた。

それにより前半4F47秒4-後半4F45秒8のかなりのスローペースだったが、中盤はノルカソルカに突かれたこともあり、ある程度ペースは流れていた。本馬は3~4角から進出を開始し、ラスト1Fでやや甘くなり、外からサクラトゥジュールにクビ差まで詰め寄られたが、これまでの競馬ぶりから一転、自ら目標になりながらも重賞通用レベルの指数で勝利したことは評価できる。

前走の米子Sでは4着敗退。本馬は7番枠から好スタートを切ってハナを主張したが、内のノルカソルカ、アナゴサンが競ってきたので、好位の中目に控える形。しかし、ここではノルカソルカが行き切って激流を作ったため、前には厳しい流れとなった。その流れを3~4角で同馬との差を詰め、直線早め先頭の競馬。最後は内外から差されて4着も、2着のラインベックからクビ+ハナ差と粘った。

前走はスタミナが不足する休養明けだったことを考えるとよく粘っている。ただ陣営は重賞のここが目標だったはずだが、前走で馬体重16Kg減と、大きく減らしたことは誤算だったはず。今回は体重を戻しながらの調整になり、万全の状態ではない可能性が高い。近走は詰めの甘さが解消され、地力強化は確かだが、そこが不安材料で本命には出来ない。

【能力値2位 メイショウシンタケ】
前走の米子Sではウイングレイテストを4着に下して勝利し、サマーマイルシリーズを一歩リードしている馬。前走は11番枠から出遅れて後方からの追走。道中は中団のやや後ろで前のジャスティンスカイとのスペースを作って進め3角へ。3~4角では最短距離を立ち回り、4角でスペースを詰め切って出口で中目に誘導すると、好位列の間を割ってしぶとく伸び、ラスト1Fで突き抜けて1馬身1/4差で完勝した。

しかし、前走はノルカソルカが激しい先行争いを制して逃げ、前半4F44秒9という激流をなったことで、後方で脚をタメたことが功を奏した。それも3~4角でかなり上手くロスなく乗られて、上手く脚をタメたことで自己最高指数を記録している。今回は休養明けで好走した疲れが懸念される。

【能力値3位 サブライムアンセム】
本馬はフィリーズレビュー1着の実績があり、今春の阪神牝馬Sでも10番人気の低評価を覆して2着と好走した。しかし、本馬の重賞好走は毎回展開に恵まれたもの。フィリーズレビューは前半3F33秒5で決着タイム1分20秒の壁を破るかなり速い流れ。この流れを4番枠から出遅れ、中団やや後方から3角で最短距離を通り、4角では狭いところを上手く通って外目に出された。直線序盤でも上手く捌いて2列目まで上がり、ラスト1Fでナムラクレアとの叩き合いをアタマ差で制した。

また前々走の阪神牝馬Sは一転して前半4F48秒0-後半4F45秒9のかなりのスローペース。この流れを1番枠から五分のスタートを切り、2列目の内で流れに乗り、逃げるウインシャーロットの後ろをスペースを作って追走。3~4角で最短距離を通って直線へ。直線では進路がない状態で何度も進路を替えていたが、ラスト1Fでサウンドビバーチェが抜け出した後ろから1馬身1/4差で2着を確保。先に抜け出した同馬との着差を詰められなかった辺りから、内枠の利を生かした一戦だったと言える。

本馬は出遅れ癖があるが、ゲートを決めて展開が嵌ればここでも通用する。しかし、展開が噛み合わないと難しいものがある。また前走は出遅れて後方馬群の中目で包まれ大敗したように、多頭数のマイル重賞となると、出遅れたときに挽回するのが難しい。特に出遅れたときの三浦騎手は後方のままで終わることが多く、そのリスクを承知の上でヒモに加えるぶんには悪くない。

【能力値3位 ホウオウアマゾン】
昨春のマイラーズCの2着馬。同レースは7番枠から好スタートを切り、押して押しての先行争いになったが、内からベステンダンクがかなり抵抗したため、最終的には同馬の外2番手を追走。3~4角も2番手で進め、4角でひとつ外に出されると、直線では馬場の良い中目に誘導。そこからしぶとく粘り、ラスト1Fでベステンダンクを交わして3着馬ファルコニアの追撃はクビ差で振り切った。

マイラーズCはやや時計が掛かる馬場で、前半4F46秒1-後半4F47秒2とややハイペース。ソウルラッシュの追い込みが決まったことを考えると、よく粘っていた。その次走の安田記念では休養明けでマイラーズCを好走した疲れで12着に敗れたが、自ら逃げて目標にされる形で着差は0.5秒差と大きく崩れていない。

前走のオールエイジドSは豪州の重馬場で、前半3F35.27(日本の計測方法ならあと1秒は速い)-後半37秒63の超絶ハイペースを7番枠から出遅れて中団の外を追走。3~4角では斤量59Kgの影響もあって追走に苦労し、後方に下がってしまった。しかし、直線は悪くない伸びで7着。3~4角で位置が下がってしまったことが致命的だったと言える。

今回はベストのマイル戦に変わるのは好ましい。ただ上がりの掛かるレースがベストであり、中京の良v馬場が向かないのは確か。また前走が豪州の重馬場でかなりタフな馬場だっただけに、さすがに疲れは出たはず。今回は立て直されてはいるものの、万全の状態での出走は難しいと見て、評価を下げたい。

【能力値5位 ダノンスコーピオン】
昨春のNHKマイルCの覇者であり、そこからの始動戦となった昨秋の富士Sではセリフォスにクビ+クビ差の3着と好走した馬。同レースは14番枠から好スタートを切ったが、内の馬が速く好位を取れず、好位直後の外を追走。3~4角では前のラウダシオンを壁にして仕掛けを待ち、4角出口で外に出されると、そこからしぶとく伸びてラスト2Fで先頭。ラスト1Fで外からソウルラッシュに並ばれ、しぶとく食らいついたが、最後にクビ差前に出られ、クビ+クビで敗れた。

富士S当日は外差し馬場で、緩みのない流れ。最後の直線で早め先頭に立ったところを外からセリフォスとソウルラッシュに差されたが、この一戦に関しては前記2頭に見劣らない内容だった。その後は本来の走りを見せられず苦戦が続いたが、休養明け3戦目のここは変わる余地がある。実際、この中間の追い切りでは負荷を掛けられても力強い走りが出来ていた。今回は変わり身が期待できるが、ハンデ59Kgはさすがに不安だ。

指数上の穴馬はルージュスティリアとセルバーグ

【ルージュスティリア】
昨秋から芝マイルを使われ、3連勝で3勝クラスの長篠Sをオープン級の指数で勝利した馬。同レースは6番枠からトップスタートを切って一旦ハナに立ったが、そこからコントロールし、内のシルヴェリオに行かせて2番手を追走。やや折り合いに苦労していたが、同馬を壁にして追走し、3~4角で最短距離を通って4角出口で逃げ馬の外に誘導。直線序盤で追い出されるとすっと先頭に立ち、ラスト1Fでリードを広げて2馬身差で完勝した。

休み明け緒戦となった阪神牝馬Sでは1番人気に支持されながらも6着敗退。しかし、同レースは川田騎手らしからぬラフプレーが目立った。7番枠から五分のスタートを切って、二の脚で2列目を取りに行ったが、サウンドビバーチェに前を取られて好位の中目を追走。レースがかなりのスローペースだったこともあり、道中はやや折り合いに苦労していたが何とか我慢させ、3角ではスペースを作って中団に近い位置。4角中目から前のスペースを詰めて3列目で直線へ。

しかし、最後の直線では前のサウンドビバーチェに突っ込みそうになってバランスを崩し、急に外に進路を切り替えて外のイズジョーノキセキと接触。しばらく左右にフラ付く不利があった。前走のヴィクトリアマイルでも10着に敗れているが、同レースは15番枠から五分のスタートを切ったが、その後内の馬に接触。そこから位置を取りに行ったが、外からソダシに切れ込まれて、そこでも内の馬に接触する不利があった。

前走は致命的な不利ではなかったが、近2走ともスムーズなレースが出来ておらず、能力値上位にランクインできなかった。今回は現時点でまさかの1番人気に支持されているが、もともとは能力上位で今回はハンデ53Kgと斤量にも恵まれた。ここでの巻き返しを期待したい。

【セルバーグ】
4勝中3戦を3角2番手以内で勝利しているように、前に行ってしぶとさを生かしてこその馬。タフな馬場で行われた3走前の武庫川S(3勝クラス)は6番枠から五分のスタートを切り、そこからじわっと進出して3角手前でハナを主張。3~4角で徐々に後続を引き離して、1馬身半差のリードで直線へ。最後まで後続にほぼ差を詰めさせず、4角3番手のサマートゥリスト(本日の豊明S勝ち)に1馬身半差で完勝し、オープン級の指数を記録した。

前走の米子Sはスタミナが不足する休養明けで12番枠。五分のスタートは切ったが、序盤から先行争いが激しく、前半3F33秒7とテンが速かったため好位を取り切れず、終始中団の外々を回らされた。ペースが速く追走に苦労し、4角で手応えが怪しくなったところを外から一気に来られ、直線序盤で挟まれて後退。挟まれる不利がなくても上位争いは厳しかったにせよ、不利があったため12着まで着順を下げたのも確かだ。

前走は不完全燃焼に終わったが、休養明け2戦目の今回は息持ちが良くなってくるはず。また今回のメンバーで6番枠ならハナ主張も可能なだけに、ここでの変わり身に期待したい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ウイングレイテスの前走指数「-18」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.8秒速い
●指数欄の下線、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

《関連記事》
【中京記念】ルージュスティリアら前走ヴィクトリアマイル組を全消し 残ったのは高配当も期待できる4頭
【中京記念】複勝率42.9%の好データに唯一該当 Cアナライズからはメイショウシンタケを推奨
【中京記念】中京マイルの過去7回で8頭が連対 好相性のノーザンテーストの血を持つ有力馬とは

おすすめ記事