【中京記念】上位人気不振の難解ハンデ重賞 注目は米子S組のメイショウシンタケ、アナゴサン
勝木淳
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かつては大穴炸裂の中京記念
先週の月曜と火曜日は、苫小牧のノーザンホースパークにてセレクトセール2023が開催された。筆者はかつて築地市場のマグロ仲卸店に10年以上勤めた。毎日マグロの競り場に出ていたせいか、競りとなると、少しだけ昔の血が騒ぐ。それにしても毎年、驚くほどの活況だ。質のいい馬を多くそろえ、買い気の旺盛なバイヤーが集まる競り会場は一種、独特の緊張感があるものだ。マグロはその日のうちに結果が出るが、競走馬はそうはいかない。これから先、長い道のりを経て、結果が導かれる。関係者の緊張はまだまだ続く。
さて、中京記念は筆者がマグロ屋さんをしていた頃は春の中京芝2000mのハンデ重賞だった。中京が改装に入る2010年までは04年16番人気1着メイショウキオウ、09年15番人気1着サクラオリオン(どちらも秋山真一郎騎手騎乗)などよく荒れた。
2012年の改装を機に夏のマイル戦に生まれ変わり、サマーマイルシリーズになった。直近3年は阪神、小倉で代替され、阪神の2020年は18番人気メイケイダイハードが勝ち、単勝万馬券。かつての中京記念らしい結末だった。4年ぶりに中京に戻った今年は果たしてどんな結末だろうか。データは中京開催の8回(2012~19年)を使用する。
マイルになってから、かつての中京記念ほどは荒れなくなったものの、1、3番人気【1-0-2-5】勝率12.5%、複勝率37.5%、2番人気【0-1-0-7】複勝率12.5%と上位人気はやや頼りない。むしろ5番人気【3-1-1-3】勝率37.5%、複勝率62.5%、6番人気【1-3-0-4】勝率12.5%、複勝率50.0%、7番人気【2-0-0-6】勝率、複勝率25.0%と中穴ぐらいが面白い。
上位人気が振るわない要因のひとつが年齢の傾向だ。主力の4歳が【0-0-3-10】複勝率23.1%と結果を残せず、5歳【4-5-2-39】勝率8.0%、複勝率22.0%、6歳【3-1-3-28】勝率8.6%、複勝率20.0%なので、条件戦だと少し敬遠しそうな5、6歳を積極的に狙おう。かつての春の荒れる中京記念は7歳など高齢馬が強かった。その流れを受け継いでいるフシはある。
中京記念が少しややこしいのは、逃げ【0-0-0-9】、先行【2-4-0-22】勝率7.1%、複勝率21.4%、中団【2-3-4-41】勝率4.0%、複勝率18.0%に対し、後方【4-1-4-31】勝率10.0%、複勝率22.5%と追い込みが決まる点にもあらわれている。梅雨どきの開催最終週という設定から馬場状態も読みにくい。
ハイペースだった米子Sから買えるのは
夏のマイル戦になっても、難しさは変わりない中京記念。では、好走ゾーンはどこにあるのか。前走成績をヒントに探っていく。
まず今年はディヴィーナなど前走ヴィクトリアマイル組がいるが、前走GⅠ【2-1-1-18】勝率9.1%、複勝率18.2%の中心はNHKマイルCで、ヴィクトリアマイルは【0-0-1-6】複勝率14.3%。19年3着プリモシーンはヴィクトリアマイル2着だった。中京マイル3勝のディヴィーナは得意コースでタイトルを獲得できるだろうか。
ダノンスコーピオンの安田記念は【1-0-0-9】。14年サダムパテックが7番人気で勝った。安田記念7着のGⅠ馬。プロフィール的にはダノンスコーピオンと共通点はある。昨秋マイルCS11着から不振が続く現状をここで打破できるか。
前走オープン・L【4-6-3-49】勝率6.5%、複勝率21.0%は同じサマーマイルシリーズの米子S【2-2-2-19】勝率8.0%、複勝率24.0%、パラダイスS【2-2-1-12】勝率11.8%、複勝率29.4%に今年も該当馬がいる。
米子Sは20年からサマーマイルシリーズ開幕戦になったので、中京施行でこのパターンは初になる。米子S組の着順内訳は1着【1-0-2-0】、2~4着【0-0-0-7】、5着以下【1-2-0-12】と、勝った馬と大きく負けた馬に好走馬が偏る。今年は勝ったメイショウシンタケ、5着アナゴサン、7着ワールドウインズなど候補が多い。
今年の米子Sはノルカソルカがちょっと強引に主導権をとり、序盤600m33.7、800m通過44.9と厳しめに流れた。後半800m46.8で残り200mまで11秒台をキープしながら、ラスト200m12.3と時計を要し、差し馬勢が台頭した。中団で上手く運んだメイショウシンタケの差し脚は当然評価しつつも、ハイペースに巻き込まれて5着に粘ったアナゴサンや、データ的には厳しいが4着ウイングレイテストなども見逃せない。
パラダイスSは相性がいいが、2着以内【2-1-1-3】、3着以下【0-1-0-9】。15着カイザーミノルはさすがに厳しいか。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『ゴールドシップ伝説 愛さずにいられない反逆児』(星海社新書)に寄稿。
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