【日本ダービー】世代王者決定戦で輝く血統とは 京大競馬研の本命はハーツコンチェルト

京都大学競馬研究会

日本ダービー、サンデーサイレンスを持つ種牡馬の成績(過去5年),ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

血統にヒント

5月28日(日)に東京競馬場でGⅠ・日本ダービー(以下、ダービー)が行われる。無敗二冠を目指すソールオリエンスを筆頭に、皐月賞上位のタスティエーラ、ファントムシーフ、青葉賞でハイレベルな走りを見せたスキルヴィング、ハーツコンチェルトなど、今年も18頭が集結した。

かつて馬産奨励のため、優秀な繁殖馬を選ぶことを目的に始まった当レースは、その目的を果たし続けて今年で90回。ディープインパクト、キングカメハメハという種牡馬の二大巨頭を送り出し競馬界を賑わせた。この2頭が亡くなった今、馬柱の父名欄には多くの名前が並ぶようになり、複雑な「種牡馬戦国時代」が始まっている。今一度血統を振り返ることで、次代に残すべき馬、つまり今年のダービー馬が分かるはずだ。


サンデーサイレンス持ちが好走の条件

直近のトレンドを掴むため、過去5年のダービーの種牡馬別、母父馬別成績を調べた。まず種牡馬別成績。

過去5年のダービー好走馬の父馬,ⒸSPAIA


ディープインパクトが4勝、ハーツクライ1勝。多くの予想記事で話題になるデータであるが、日本競馬で大成功したサンデーサイレンス(SS)の血統が、今でもダービーで強いことは当たり前である。

好走馬15頭中13頭の父はSSの血を引いており、残りの2頭(ステラヴェローチェ、コズミックフォース)も母父がSS直仔であるため、やはり軸はここからとるべきだ。今年、SSの血を持たない馬は、トップナイフとファントムシーフの2頭。人気しそうなファントムシーフは、残念ながら日本ダービーで好走できる血統ではないようだ。


母父はバラバラも、勝ち馬は全て米国血統

次に過去5年の母父別成績を調べてみる。

過去5年のダービー好走馬の母父馬,ⒸSPAIA


種牡馬名はバラバラなので気にする必要はないのだが、近年の勝ち馬に共通していることとして、「母父が米国産馬であること」が挙げられる。特に近3年の勝ち馬の母父は、2歳時に重賞勝ちの実績がある仕上がり早の血統ばかりだ。父は日本競馬適性の高いSS系で、母父は早熟要素のある、米国色の強い血統であることが、ダービー勝利の条件なのだろう。

一方で、母父欧州型の血統は、2020年2着サリオスが最高着順で、良血でも勝っていないことから紐までに留めるべきだろう。母父内国産馬も2018年のワグネリアンを最後に勝ち切れていないが、SSの時代が遠くなるこれからは、母父内国産馬が増えていくことが予想される。2021年の2、3着馬の母父はそれぞれハーツクライ、ディープインパクトと、ダービーへの適性は見せている。母父欧州型よりは高い評価をしたい。


父SS系×母父米国産の馬は

◎ハーツコンチェルト
青葉賞はスキルヴィングの末脚に屈して2着。しかし中京の新馬戦や東スポ杯、青葉賞と左回りの末脚勝負で光るものを見せており、東京の舞台適性は高い。前走からの上積みがあれば、スキルヴィングに引けを取る馬ではないと考える。近年の勝ち馬に共通する父SS系×母父米国系を満たし、かつ父ハーツクライ×母父Unbridled’s Songは東京が得意であったスワーヴリチャードと同じ組み合わせ。速い時計が出た青葉賞ぐらい走れば通用するのではないだろうか。

◯スキルヴィング
青葉賞勝ち馬。外から手応え良く伸びて青葉賞歴代3位の時計を出すなど東京2400m適性は高い。青葉賞出走馬がダービーで勝てないのは、皐月賞のレベルが高いことが原因である。ただ今年の皐月賞は重馬場の巧拙と展開のアヤで決まっており、ダービーに向けた能力比較で参考にしづらい。またローテーションの多様化で、皐月賞の重要性自体が薄れていることも考えると、ジンクスがあるから消し、とは言い切れない。血統的には父SS系×母父内国産馬で、適性はあるがダービーで勝ち切れないエフフォーリアやイクイノックスに似通う血統。魅力度としてはハーツコンチェルトに劣る。

▲ソールオリエンス
皐月賞馬。前走は直線だけで16頭をごぼう抜きする圧倒的なパフォーマンスを見せたが、切れ味に欠ける馬が多く、前崩れだったという展開勝ちの要素はある。新馬戦で良いレースをした東京替わりはプラスだが、逃げ馬が減って前走ほどのハイペースが見込めない今回は、皐月賞と同じ乗り方だと届かない可能性が高い。母父Motivatorは英国ダービー馬。血統的に日本ダービー向きでない点もマイナス。

△ショウナンバシット
父シルバーステートはSS系、母父Medaglia d'Oroは米国産馬で血統評価は◯。距離が長い印象は拭えないが穴で一考。

×タスティエーラ
父サトノクラウンは重馬場で活躍。欧州色の強い血統で、重馬場の皐月賞の方が明らかに向いていた。母父父がSSなので無印にはできないが、東京でキレ負けしており舞台適性もよくない。

×ベラジオオペラ
皐月賞で本命を打った馬。前走は明らかな展開負けで巻き返しは可能。しかし母父ハービンジャーはマイナス。

馬券はスキルヴィング2着固定、1着に◎と▲を据えた三連単8点で勝負する。関係者の思いが詰まった最高の栄誉が日本ダービーである。2019年のような展開のアヤではない、全馬が実力を発揮する良い勝負を期待する。

日本ダービー 予想印
◎ハーツコンチェルト
◯スキルヴィング
▲ソールオリエンス
△ショウナンバシット
×タスティエーラ
×ベラジオオペラ

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
25年以上の歴史がある京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えを目指す本格派が揃う。

《関連記事》
【日本ダービー】タスティエーラとファントムシーフは真っ先に消し! ハイブリッド式消去法で確実に残る3頭は
【日本ダービー】「不利データ」を打ち破り皐月賞を制覇 Cアナライズはソールオリエンスを信頼
【日本ダービー】4年連続で「Seattle Slew」内包馬が優勝 有力馬の血統解説

おすすめ記事