【日本ダービー】「不利データ」を打ち破り皐月賞を制覇 Cアナライズはソールオリエンスを信頼

貴シンジ

2023年日本ダービー、皐月賞組の前走人気別成績,ⒸSPAIA

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

オークスではリバティアイランドを推奨し1番人気1着。圧巻の走りで牝馬二冠を達成した。あの走りを見ると当然三冠達成を期待したくなるものだ。さて、今回は5月28日(日)に東京競馬場で行われる日本ダービー(以下ダービー)について、下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走不利データ」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった19頭のうち、除外対象のトーセントラムを除く18頭を検討対象とし、データは過去10年を使用する。


重要データ:勝ち馬が出る主要ローテーション3つ

前走レース別成績(一部),ⒸSPAIA


ダービーでは皐月賞組が【7-9-6-69】勝率7.7%、複勝率24.2%という成績を残している。全ホースマンの夢であるダービーは、一冠目からクラシックに乗っていた馬の活躍が顕著ということだろう。同組をもう少し深掘りすると、「前走皐月賞で5番人気以内だった馬」は【7-8-3-22】勝率17.5%、複勝率45.0%。ここを中心に考えるのが鉄則だ。皐月賞人気馬はダービーでも人気することが多いが、その分、好走率も高い傾向にある。

皐月賞組以外で勝ち馬を輩出している前走は、京都新聞杯と毎日杯。この2つのレースから勝利した馬は13年キズナ、19年ロジャーバローズ、21年シャフリヤールの3頭だ。ロジャーバローズは大穴的存在だったが、キズナとシャフリヤールは前走の内容を評価されて上位人気に推されていた。皐月賞上位人気を中心に考えつつ、レースレベルや内容を考慮し、別路線組を入れた馬券を組むのが的中への近道だろう。

【前走皐月賞で5番人気以内の出走予定馬】
・ソールオリエンス
・タスティエーラ
・ファントムシーフ
・フリームファクシ
・ベラジオオペラ


前走不利データ:皐月賞のソールオリエンス

ソールオリエンスの前走は皐月賞1着。同レースは前走レースが重要なファクターとなっていて、ソールオリエンスの京成杯組は【0-0-1-4】と連対馬はいなかった。有力馬は直行するか共同通信杯、スプリングSなどのレースを経由するため、どうしてもレースレベルが低くなりがちだ。

ソールオリエンスの京成杯は4コーナーで手前が上手く替わらず、外に膨れて距離のロスが大きかった。それでも最後は流す余裕がある勝利だっただけに、皐月賞の好走は必然だったのかもしれない。

血統解説:スキルヴィング、ソールオリエンス、タスティエーラ

・スキルヴィング
日本での牝祖は3代母ソニンク。ソニンク牝系はいわずもがなの名牝系で、近親にはダービー馬ロジユニヴァース、海外でも活躍したディアドラなど。先日ヴィクトリアマイルを勝利したソングラインもこの一族だ。

この牝系の特徴は非常にタフであり力強いこと。重馬場も得意なファミリーだが、それでも青葉賞の勝ち時計は歴代3位と優秀。オークスの勝ち時計が2分23秒1でこれ以上の高速決着となると厳しいかもしれないが、少しでも時計のかかる馬場になればダービー制覇のチャンスがあっても良い一頭だ。

スキルヴィングの血統表,ⒸSPAIA


・ソールオリエンス
日本での牝祖は母スキア。同馬は現役時にフランスの芝中距離GⅢフィユドレール賞を勝利している実績馬だ。牝系を遡れば3代母Gleam of Lightの孫に英オークスなどGⅠ・5勝のLoveがいて、牝系の活力も十分重賞級だろう。兄にディープインパクト産駒のヴァンドギャルドがいる通り、母系のデインヒルの影響も強く、早期からの活躍も可能だ。

一方MotivatorやRainbow Questも持ち合わせているので成長力も高い。新馬戦は前半1000m65.0秒の超スローペースを上がり3F33.3秒で勝ち切ったり、京成杯の一気のピッチアップからも瞬発力は十分。重厚な母系の持ち主だから皐月賞のように時計のかかる馬場でも対応可能で、人気通りダービー馬候補筆頭だろう。

ソールオリエンスの血統表,ⒸSPAIA


・タスティエーラ
日本での牝祖は4代母クラフテイワイフ。同馬の直仔世代はマイラーズC勝ちのビッグショウリ、中山GJ勝ちのビッグテーストなど、多くの重賞好走馬を輩出した。

繁殖牝馬として非常に優秀だったが、さらに秀逸なのは孫以降の世代。ブリリアントベリーは天皇賞(秋)やマイルCSを勝ったカンパニーを含む3頭の重賞馬をターフに送り、エヴリウィスパーは天皇賞(秋)勝ちのトーセンジョーダンなどを出した。

エヴリウィスパーの子アドマイヤキラメキからは、エミレーツS(GⅠ・芝10F)を勝ったトーセンスターダムや、オールカマー勝ちのセンテリュオが出た。

活力は抜群の一族といえるだろう。気になるのは本馬は活力のあるエヴリウィスパーの分岐ではなく、キョウエイフォルテの分岐であること。こちらは本馬以外に重賞級の活躍馬は出ておらず、牝系の活躍馬たちと違ってパワーに勝ったタイプが多い。

これはキョウエイフォルテ自身がダート馬だったこともあるが、そもそもこの牝系はアメリカのダート種牡馬が代々つけられてきたため、ダートで走れるほどのパワーを備えたことに由来すると考えられる。成長力がある一族で後々の活躍は期待したいが、ダービーの時計勝負、瞬発力勝負となると厳しい印象がある。

タスティエーラの血統表,ⒸSPAIA


Cアナライズではソールオリエンスを推奨

今回のCアナライズではソールオリエンスを推奨する。今年の皐月賞は時計のかかる馬場状態だったこともあり、上位馬をダービーでも素直に信頼してもいいか疑ってかかる必要はある。

しかし、ソールオリエンスの一番の魅力は瞬発力。皐月賞も4角の手前替えがスムーズにいかなかったが、それでも大外一気で勝ち切った。追走さえしっかりできればダービーでの上積みは十分だ。

少し時計がかかるようならスキルヴィングにもチャンスが生まれそうだ。また、今回は特段取り上げなかったが上位人気の可能性が高いファントムシーフは、ダービーより皐月賞向きの血統構成。ソールオリエンスを逆転できる要素は見出しづらいだけにどうか。

【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほかPOG本での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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