異なる競馬場でJRA同一・GⅠ連覇を達成した馬を特集 タイトルホルダーは京都での連覇なるか

東大ホースメンクラブ

異なる競馬場でJRA・GⅠ連覇に挑戦した馬の全体成績(1986年以降),ⒸSPAIA

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史上4頭目の偉業に挑む

今週日曜、京都競馬場でGⅠ天皇賞(春)が行われる。日経賞を8馬身差で圧勝したタイトルホルダー、阪神大賞典の覇者ジャスティンパレス、昨年の菊花賞馬アスクビクターモア、連続GⅠ・2着と実力十分のボルドグフーシュ、同レース2年連続2着の雪辱を誓うディープボンドら豪華メンバーが現役最強ステイヤーの座をかけて争う。

中でもタイトルホルダーは連覇がかかる一戦。もし達成すれば、異なる競馬場で同一GⅠ連覇達成という偉業となる。昨年の7馬身差の圧勝劇を淀でも再現できるか、真価が問われる一戦だ。今週は「異なる競馬場での同一GⅠ連覇」をテーマに、偉業を達成した過去の名馬たちを振り返る。


異なる競馬場でGⅠ連覇を達成した名馬たち

異なる競馬場でJRA・GⅠを連覇した馬,ⒸSPAIA


まずは異なる競馬場でJRA・GⅠ連覇を達成した3頭の記録を振り返る。

最初にこの偉業を達成したのがシンボリクリスエス。2002年の天皇賞(秋)は東京競馬場が改修工事中であったため、中山で開催された。ダービー2着、神戸新聞杯圧勝の実績を引っ提げ3歳馬として参戦。そしてナリタトップロードら歴戦の古馬勢を打ち破り、見事天皇賞(秋)を制覇した。

3歳馬の天皇賞(秋)制覇は、バブルガムフェロー以来、史上3頭目の偉業であった。舞台を府中に戻した翌年、シンボリクリスエスは不利とされる大外枠を引いてしまう。しかし、ローエングリンとゴーステディが作り出した前半1000m56.9という驚異的なハイペースを馬群の中団で追走。最後の直線では力強く抜け出し、残り200mで悠々と先頭に立った。ツルマルボーイが上がり3F33.1の鬼脚で追い込んでくるも1.1/2馬身及ばず、シンボリクリスエスは危なげなく先頭でゴール板を通過。見事、中山と府中での天皇賞(秋)連覇を達成した。

続いてこの偉業に名を連ねるのが、キンシャサノキセキ。スワンS、阪神C、オーシャンSと重賞3連勝で2010年の高松宮記念に挑み、1番人気に推された。単勝オッズ10倍を切る馬が4頭という混戦であった本レース。キンシャサノキセキは序盤、馬群の中団辺りでレースを進めた。そして最終直線ではヘッドライナーを交わして残り100m付近で先頭に立ち、外から追い込んできたビービーガルダンをハナ差で制した。2回のGⅠ・2着を乗り越え、悲願のGⅠ初制覇を成し遂げた。

翌年は中京競馬場の改修工事により、高松宮記念は阪神で開催。前年覇者のキンシャサノキセキは、NHKマイル優勝馬で連勝中のジョーカプチーノや、ダッシャーゴーゴーに人気を譲り、3番人気でレースに臨んだ。道中では不利を受けるも、最終直線で内で粘るダッシャーゴーゴーとの叩き合いを見事制し、史上初の高松宮記念連覇を達成。昨年とは打って変わって2着に1.1/4馬身差を付ける完勝だった。

そして、直近この偉業を達成したのがラッキーライラック。チューリップ賞以来、1年8ヶ月もの間勝ち星に見放されていた同馬は、無敗でオークスを制したラヴズオンリーユーや、秋華賞を制したばかりのクロノジェネシスに次ぐ3番人気で2019年のエリザベス女王杯に挑んだ。

逃げるクロコスミアが作り出したスローペースを中団のインで追走。スローペースを見越して有力馬が先行し、スパートをかけ始める中、最終コーナーでは強気の最内選択。内ラチ沿いで驚異の末脚を発揮して突き抜け、父オルフェーヴルの背中を知るC.スミヨン騎手と共に復活のGⅠ・2勝目を手にした。

そして翌年、京都競馬場改修のため阪神で行われたエリザベス女王杯に、ラッキーライラックは名手C.ルメール騎手と挑んだ。想定外のノームコアの逃げから始まった本レース、ラッキーライラックは緩みのないペースを後方追走。レースが動いたのは3コーナー、ラッキーライラックはグイグイと前方へ進出し、3番手で4コーナーを曲がり、最終直線に入った。早めに抜け出し先頭に立つと、後方から追い込んでくるサラキアやラヴズオンリーユーをクビ差凌いで連覇達成。昨年とは対照的に、外からの横綱競馬で他馬をねじ伏せた。


タイトルホルダー連覇の確率は?

異なる競馬場でJRAGⅠ連覇に挑戦した馬 条件別成績,ⒸSPAIA


<異なる競馬場でJRA・GⅠ連覇に挑戦した馬 条件別成績>
全体成績【3-2-1-2】勝率37.5%/連対率62.5%/複勝率75.0%
3番人気以内【3-2-1-1】勝率42.9%/連対率71.4%/複勝率85.7%
※1986年以降

次に1986年以降のJRA・GⅠにおいて異なる競馬場での連覇に挑戦した馬の成績を確認する。のべ8頭が挑戦しており、前述の3頭が連覇を達成している。また、惜しくも2着に敗れた馬が2頭(2003年スプリンターズSのビリーヴ、2020年マイルCSのインディチャンプ)、3着に敗れた馬が1頭(2008年ジャパンカップダートのヴァーミリアン)おり、8頭中6頭が馬券圏内に入るというまずまずの安定感だ。

さらに、3番人気以内で連覇に挑戦した馬に限ると【3-2-1-1】とさらに成績が良くなる。タイトルホルダーにとっては追い風となるデータだ。この中で唯一馬券圏外に敗れたのは、2002年ジャパンカップのジャングルポケット。「府中の鬼」と呼ばれ3歳時には、あの「世紀末覇王」テイエムオペラオーとの一騎打ちを制したが、中山2200mで行われた4歳時のジャパンカップでは5着に敗れた。競馬場ごとの適性の差が明暗を分けた一例だろう。阪神でGⅠ・3勝を挙げる「阪神の鬼」タイトルホルダーは地力の差を見せつけ、淀の天皇賞(春)を制することができるのか、注目だ。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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