【皐月賞】先行力のある外枠の馬を中心視 タッチウッド、マイネルラウレア、グラニットに魅力あり

山崎エリカ

2023年皐月賞出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

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今年は外枠の3角6番手以内馬が有利

皐月賞は2回中山から連続で開催される3回中山の最終日に行われる。2回中山から3回中山2日目までの10日間はAコース使用、残る6日間はBコース使用となる。またレース当日が降雨の影響を受けることもあり、年によって馬場状態が大きく異なる。決着タイムが2分を越えることもあれば、直前に芝が刈られ1週前とは別物の超絶高速馬場で行われ、1分58秒を切ることもある。

今年は先週の時点で馬場の内側が悪化し、外差し有利の馬場。さらに今週は土日ともに雨予報で道悪が予想される。こうなれば当然、外枠有利に拍車がかかるだろう。

ただし、皐月賞の過去10年を振り返ると、追込2勝、差し1勝と差し、追込も悪くない。しかし、3着以内までで見ると、馬場に関係なく先行~好位馬が圧倒的に活躍している。3角6番手以内が1着4回、2着9回、3着6回あり、ある程度前の位置につけられる外枠の馬を中心視するのがベストだ。

能力値1~5位の紹介

2023年皐月賞出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 ファントムシーフ】
6月阪神芝1600mの新馬戦は、時期的なものを考慮してもまずまず強いくらいの内容での勝利だった。しかし、昨秋の野路菊Sで復帰するとまさに一変。同レースは1番枠からまずまずのスタートを切って、2列目の最内でレースを進め、道中は少し離れた4番手を追走。3~4角の下り坂で外から仕掛けてスピードに乗せ、最後の直線ではラスト1Fで抜け出して快勝した。2着馬に2馬身、3着馬にはさらに6馬身差を付けての圧勝。倒した相手もトップナイフ、カルロヴェローチェとかなり強く、高指数での勝利だった。

次走はホープフルSに出走して4着、ここでは野路菊S時に記録した指数では走れなかった。1番枠から五分のスタートを切って、好位の最内から最短距離を立ち回った。ただ4角で前のシーウィザードとのスペースを詰め切っていたため外に出せず、仕掛けを待たされ直線序盤では前が壁でブレーキ。そこから外に出して、再度スピードに乗せて行く形になった。

前走の共同通信杯は8番枠からまずまずのスタートを決め、そこから押して二の脚で2列目から先頭列に上がって行く競馬。最終的にはタッチウッドがハナを主張したので、それを行かせて2番手で3角。3~4角外からコントロールしながら仕掛けを待って直線へ。序盤で追い出されてもなかなかタッチウッドとの差を詰められなかったが、ラスト1Fでようやく抜け出して1馬身1/4差で優勝。

前走は前半4F47秒7-後半4F46秒5のややスローペースではあるが、馬場は道悪が残る良の芝で前半3F35秒3と、世間で言われているほど前が楽なレースではなかった。ここでもそれなりの強さは見せられたが、野路菊S時に記録した指数では走れていない。しかし、休養明けの前々走から前進は見せており、今回さらに前進を見せると推測される。ノーマークにしない方がいいだろう。

【能力値2位 トップナイフ】
ホープフルSで2着と好走した馬。同レースは8番枠からまずまずのスタートを切り、じわっと内に切れ込みハナを主張。早い段階でコントロールして後続を引き付けながらの逃げ。向正面でもペースを引き上げなかったが、2列目の外に1番人気ミッキーカプチーノが控えていたので、後続はそれをマークして動かないまま3角へ。

3~4角からじわっとペースを引き上げ、4角出口で外から並びかけてきたドゥラエレーデとともに2列目をやや離して先頭列で直線へ。序盤で追われてすっと後続を離したが、ラスト1Fで食らいつくドゥラエレーデとクビの上げ下げでハナ差2着に惜敗した。行った、行ったの流れに持ち込んでのほぼ完璧な騎乗だった。

前走の弥生賞は4番枠から好スタートを切り、そこから内に切って一旦ハナに立ったが、外から上がって来たゴッドファーザーを行かせて2列目の最内を追走。道中は前にスペースを作って追走し、3角でも我慢。4角で外から各馬が仕掛ける中を最短距離からじわっと加速し、ゴッドファーザーの内から直線へ。タスティエーラに早々と抜け出されたが、ワンダイレクトとの接戦をクビ差制して2着を死守した。

前走は前半5F61秒0-後半5F59秒4のスローペースを好位最内で上手く立ち回りながら2着に敗れた。前々走から指数もダウンする結果だったが、ホープフルS好走の疲れもあったのだろう。今回で前走以上に走れても不思議はないが、今回は同型馬が多数出走。また土日ともに雨模様。鞍上が横山典騎手だけに奇襲プランが用意されている可能性もあるが、道悪で弥生賞よりもペースが厳しくなる以上、評価を下げたい。

【能力値2位 タスティエーラ】
新馬戦から着実に上昇し、前走で弥生賞を優勝した馬。前走は6番枠からまずまずのスタートを切り、そこから促したが最終的には好位の中目を追走。1角で外に出していつでも動けるようにレースを進めていたが、向正面では動かず。3~4角で外からグリューネグリーンやワンダイレクトが上がって来たので、4角で仕掛けて2列目で直線へ。序盤で楽に先頭に立って1馬身ほどリードを奪い、食らいつくトップナイフ、ワンダイレクトらを寄せ付けず1馬身差で完勝した。

前走は勝ちにいく競馬で後続を捻じ伏せる好内容。またコーナーが連続する中山芝2000mの外々から仕掛けて優勝した辺り、中山巧者ぶりも感じる。キャリア3戦と浅いことから、まだ伸びしろが見込める一方、前走で皐月賞出走権を手にしなければ、ここには出られない立場だった。そこで自己最高指数を記録した後の一戦となると、今回は余力面で不安がある。

【能力値4位 フリームファクシ】
好指数のハイレベル決着となった10月東京の芝2000m新馬戦で、自らレースを作って2着に惜敗した馬。勝ち馬はホープフルSで1番人気に支持されたミッキーカプチーノ、3着は後に京都2歳Sを勝つグリューネグリーン。このことから次走は順当に勝ち上がり。そして3連勝で前走のきさらぎ賞を優勝した。

前走は2番枠からトップスタートを切ったが、そこからコントロールして折り合い重視の競馬。逃げ馬の外2番手を追走し、道中も番手外で進めて3角。3~4角でも仕掛けを待ち、4角出口で仕掛けて直線は馬場の良い外を選択。序盤ですっと抜け出し、一気に2馬身ほど差を広げた。ラスト1Fでさらに外から伸びて来たオープンファイアに差を詰められたが、それでもアタマ差振り切った。

前走は前半5F61秒2-後半5F58秒5のかなりのスローペースだったことを考えると、2番手外という位置は絶好位であり展開が向いた感がある。今回は先行勢がかなり手強くなるので、前走のような競馬はさせてもらえないだろう。本馬もキャリアが4戦と浅く、さらなる伸びシロは見込めるが、展開がかみ合って自己最高指数を記録した後の一戦となると、割引は必要だ。

【能力値4位 ベラジオオペラ】
上昇一途で新馬戦、セントポーリア賞、そして前走のスプリングSを3連勝した馬。前走は4番枠からバランスを崩してはいたが、まずまずのスタートを切って、そこから軽く促して中団中目を追走。グラニットが緩みないペースで逃げる流れを、コントロールして離れた中団で脚を温存。3~4角でも同馬が飛ばしていたが、それを追いかけて中団外から進出。4角でかなり外を回って4列目で直線へ。

そこからしぶとく伸びて3番手まで上がり、ラスト1Fで粘るグラニット、ホウオウビスケッツを外から捻じ伏せて1馬身1/4差で完勝。ただし、前走はタフな馬場で前半4F47秒3-後半4F49秒5のかなりのハイペース。4角でロスを作ったにせよ、展開に恵まれたことで能力が引き出される形となっただけに、今回で反動が出る危険性もある。

ただ今回は15番枠と外枠。道悪の今回でグラニットが前走時のようにペースを引き上げた場合は、ここでも展開に恵まれる可能性があり、取り扱いが悩ましい。

穴馬はタッチウッド、マイネルラウレア、グラニット

【タッチウッド】
キャリア2戦ながら、共同通信杯で賞金加算した勢いのある馬。新馬戦ではやや出遅れたが、そこから促されるとスイッチが入り、じわっとハナを取り切る形。そこから手綱を抑えてペースを落とし、3角から徐々にペースアップ。4角で仕掛けて徐々にスピードが乗ると、直線では完全に独走。2着に6馬身差をつけた。半兄ノースブリッジの新馬戦のようにしぶとさを生かすレースぶりだった。

また前走の共同通信杯でも出遅れて序盤は後方2番手だったが、そこから外に誘導して馬群の狭い間を捌いて先頭に立った。そこからは一気にペースを落とし、3~4角でもかなり手綱を引いて直線へ。ラスト1Fで甘くなり外からファントムシーフに差されたが、前半で消耗しながらも2着を死守した内容は高い評価が出来る。ゲート難で今回も出遅れた場合の危うさはあるが、外枠で道悪なら出遅れても挽回しやすい。

また、同じキャリア2戦で注目を集めるのがソールオリエンス。同馬は前走の京成杯をラスト2F11秒7-11秒5と加速し、2着馬を2馬身半突き放したように素質が高く、強い馬ではある。しかし今回は同じキャリア2戦でも、外枠の本馬を推したい。

【マイネルラウレア】
新馬戦は8番枠から五分のスタートを切ったが、控えて後方からラスト2F12秒0-11秒4の急加速で勝利した素質馬。3角でGOサインが出されてもあまり動けず、4角で置かれて最後方に下がって直線へ。ラスト1Fでも後方2番手と苦しい位置にいたが、残り100mくらいから前を一気に差し切った瞬発力には驚いた。

また前走の若駒Sでも前と内が有利な馬場を、5番枠から出遅れてここでも最後方からの競馬。そこから3角手前で前に取りつき、4角外から直線でさらに外に出されると、序盤ではバタ付きを見せていたが、ラスト1Fでグンと加速し、早め先頭に立っていたワンダイレクトをハナ差差し切って勝利した。

これまで小頭数の超絶スローペースの競馬ばかりで、素質の高さだけで連勝したという結果だが、緩みなく流れる皐月賞の舞台で、その素質が開花する可能性はある。何せ、本馬の半兄は時計の掛かる馬場巧者のマイネルウィルトスであり、エンジンの掛かりがかなり遅いあたりよく似ている。

【グラニット】
昨秋のサウジアラビアRCでは、7番人気で大逃げを展開して2着と好走し、波乱の立役者となった馬。同レースは1番枠からまずまずのスタートを切って、押してハナを主張。道中も淡々とペースを刻んで後続を引き離し、10馬身以上のリードで直線へ。直線序盤ではまだ余裕を感じさせたが、さすがにラスト2Fで甘くなり、そこで後続に5馬身くらいまで詰め寄られた。それでもドルチェモア以外には交わされず、3着馬に2馬身半差を付けての2着だった。

そしてタフな馬場で行われた前走スプリングSでも、1番枠からトップスタートを切って、後続を引き離しての逃げ。前走は重馬場でありながら優秀なタイムが出ているように、とても逃げ馬が残れるペースではなかったが4着に粘った。

とにかく自分の型のレースに持ち込むとしぶとい。今回も同型馬が馬場悪化を意識して控え、本馬を行かせてしまった場合は怖いものがある。また今回の馬場がタフであるほど、前走で厳しい流れを経験した効果が生きてくるので、ここで再度の一発があっても不思議ない。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ファントムシーフの前走指数「-15」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.5秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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