【皐月賞】速い流れの経験がない馬は不利 京大競馬研の本命はベラジオオペラ

京都大学競馬研究会

2023年皐月賞●●データ,ⒸSPAIA

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11年ぶりにGⅠ馬不在

4月16日(日)に中山競馬場で皐月賞(GⅠ)が行われる。出世レース・共同通信杯を制したファントムシーフや、ホープフルS、弥生賞と連続2着のトップナイフ、スプリングS覇者のベラジオオペラなど18頭が参戦するが、今年は11年ぶりにGⅠ馬が不在。重賞馬も6頭と少なく能力比較の難しい一戦となった。出走馬の馬柱を見ても差し馬が少なく先行馬ばかり、という珍しい現象が起きている。どうしてこのようなことになったのか……。

今回は近年の皐月賞のペースを調べた上で、今年の前哨戦から皐月賞に繋がりそうなレースを探すことにした。


GⅠは皆が勝ちたい、スローにはなりづらい

まずは過去10年の皐月賞の前後半5Fのラップと、上位馬のコーナー通過順位を振り返る。

皐月賞の前後半5Fラップと上位馬のコーナー通過順位,ⒸSPAIA


前半5Fが60秒を切った年が10年で7回あった。最も遅かった2021年ですら60.3秒と、近年61秒より遅い極端ななスローペースでレースが進んだことはない。GⅠという大舞台で皆が勝負駆けになった結果、前半から緩みのないペースで流れることが多くなっている。前半5Fが60秒を切った年は逃げ馬が3着以内に残っておらず、道中10番手以下からの直線一気が頻繁に起こり、前に行っても旨味があまりないことがわかる。

共同通信杯が出世レースといわれる所以は、前半から速く走るマイル質のスピードと、長い直線の末脚比べで2000mに通ずるスタミナの両方が問われやすいからだと考える。今年は逃げ宣言のグラニットや折り合いに難のあるタッチウッドなど、何が何でも前に行きたい馬がある程度揃ったため、過去の傾向通りスローペースは見込みづらい。


今年の前哨戦は前残りだらけ

ところが今年の世代重賞はスローペースからの前残りが非常に多かった。

皐月賞の前後半5Fラップと上位馬のコーナー通過順位,ⒸSPAIA


ホープフルSが前半5F61.5秒でスロー逃げ残りの波乱決着になった他にも、弥生賞が61.0秒、京成杯が62.0秒など、少頭数のレースが多かったこともあり、2歳戦を含めて2000m重賞でハイペースになった例がない。先に触れた共同通信杯でさえも今年は前半60.5秒と1800m戦にしてはスローの流れになっており、折り合いを欠いたタッチウッドが2着に残ってしまうほどだった。

前半5F60秒を切ったのが重馬場で行われたスプリングSとマイル戦の朝日杯FSぐらいしかなく、前半から速い流れを経験した馬が少ないことがわかる。ところが、後半5Fを58秒台の速い上がりでまとめた中距離重賞もきさらぎ賞しかない。前につけ、速い上がりでまとめて明らかな脚力の違いで勝ったと言える馬がほとんど見当たらず、展開利で決着したと考えられるレースが多く見受けられることが、今年混戦と言われる理由なのだろう。経験の浅さから大敗することも多い3歳馬。先述の傾向も踏まえてハイペースの経験が豊富な差し馬から買いたい。


今年一レベルの高い前哨戦、スプリングS

◎ベラジオオペラ
スプリングSは重馬場のなかハイペースを中団から差して完勝。上がり3F次点の馬と比較して0.4秒速い末脚を使っている点から、この馬に関しては脚力上位で勝ったものと考えていいのではないだろうか。 1800mを使い続けてスピードを鍛えたことは好材料で、外枠に入ったことも内の荒れてきた今の中山ではプラスだ。ハイペースを先行して苦しむ他馬を尻目に豪脚を披露してほしい。

◯メタルスピード
スプリングS3着。ベラジオオペラには完敗だったがこの馬も中団から末脚はきちんと使っていた。過去2勝がどちらもマイルで、速いペースの経験が豊富であることは皐月賞に必ずやつながるだろう。逆転こそ厳しいが、スローの経験しかない馬よりは上位入線が可能と考え2番手評価。外枠もプラスだ。

▲フリームファクシ
レースセンスの高さできさらぎ賞を勝利、未勝利戦で速い上がりを使えることは証明している。中団からの競馬が出来れば展開の利を受けられる。多頭数で揉まれた経験がないため折り合いが課題になる。完成度の高さとD.レーン騎手の腕で何とかしてもらいたい。

△ホウオウビスケッツ
スプリングSは速い流れを先行してよく粘ったが、今回は逃げ、先行馬多く展開面の不利が大きい。

×トップナイフ
近2走は先行しているが、折り合いに問題がなく中団からでも競馬が出来る。ただし弥生賞は追い出し遅れたとは言えジリジリしか伸びなかったのは不満。

×ダノンタッチダウン
マイルで実績残す。兄(ダノンザキッド)と同じであれば距離延長は歓迎。ただしマイルで戦った相手のレベルは低い。相手強化でどこまでやれるか。

ソールオリエンスは多頭数を経験したことがないにもかかわらず最内枠を引いてしまった。先週、同様のパターンでライトクオンタムが負けたばかり。経験の浅さはここでは大きな不利になる。消しとした。

ファントムシーフやタスティエーラも前残りの展開しか経験がなく、ハイペースでどうなるか未知数の部分が多い。今回はあまり評価していない。3頭ともダービーでどう巻き返すかに期待したい。

馬券は印6頭の三連複ボックス20点と人気薄のメタルスピード単複で勝負する。私がダービーの記事執筆も予定しているが、現状ダービーの本命はこの中にはいない。予想を裏切るような大物が現れるのか注目だ。

皐月賞 予想印
◎ベラジオオペラ
◯メタルスピード
▲フリームファクシ
△ホウオウビスケッツ
×トップナイフ
×ダノンタッチダウン

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
25年以上の歴史がある京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えを目指す本格派が揃う。

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