【皐月賞】ペースアップへの対応力がカギ 血統面からの注目はNureyev≒Sadler’s Wells内包馬

坂上明大

2023年皐月賞の傾向と血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

牡馬クラシック第1戦・皐月賞。中山芝2000mという紛れが多いコースで行われ、求められる適性も日本ダービーとは大きく異なるレースです。血統を中心に皐月賞で求められる適性を整理していきます。

まず紹介したいポイントは前哨戦と皐月賞での前半1000mのペース差。「多頭数でのハイペースが多い皐月賞」と「少頭数でのスローペースが多い前哨戦」では求められる適性が大きく異なります。今年の前哨戦についてもスプリングSこそ前半1000m59.4と例年の皐月賞並みのペースで流れましたが、その他のレースについては多くが60.0秒を大きく上回るペースであり、本番での大幅なペースアップに対応できるかが大きな課題となりそうです。

京成杯:62.2秒
若駒S:63.4秒
きさらぎ賞:61.2秒
共同通信杯:60.5秒
すみれS:64.4秒
弥生賞:61.0秒
若葉S:64.0秒
スプリングS:59.4秒
皐月賞(過去10年平均):59.3秒

上記の理由から①芝1600~1800mでの勝利実績、あるいは②前走初角5番手以内の先行実績というペース経験は大きなアドバンテージとなります、①については多くの馬が該当するパターンではありますが、過去10年の連対馬はすべて該当しており、②についても非常に優秀な回収率を記録しています。

ペース経験(過去10年/単勝オッズ49.9倍以下),ⒸSPAIA


血統面では中山芝2000m重賞でお馴染みのNureyev≒Sadler’s Wellsの活躍が目立ちます。両血脈は内回りコースをうまく立ち回る機動力とタフな競馬でもへこたれない底力を兼ね備えており、日本の主流血脈に足りない資質を補強してくれるスパイスとなっています。

血統別成績1(過去10年/単勝オッズ49.9倍以下),ⒸSPAIA


その他ではノーザンテーストLyphardなどにも注目。ノーザンテーストは北米血脈のスピードとHyperion的な底力を伝え、Lyphardは内回りコースに強い機動力を伝えてくれます。なお、Lyphardの場合は代を重ねていることが多いため、クロスなどで増幅している形がベターでしょう。

血統別成績2(過去10年/単勝オッズ49.9倍以下),ⒸSPAIA


血統解説

・ファントムシーフ
3代母Arriveは名繁殖牝馬Hasiliの全妹で、母母Promising Leadは名種牡馬Dansiliとほぼ同血という間柄。そして、本馬はDansili系ハービンジャーを父に配し、Dansili=Promising Leadの2×2と表記することができる野心的な配合形です。現状は強い近親交配のデメリットも見られず、Sadler's Wellsの血を内包する点も魅力。ただ、ストライド走法のため、ホープフルSでの走りからも大箱コースの方が良さを活かしやすいでしょう。

・ソールオリエンス
2021年ドバイターフ2着馬ヴァンドギャルドの半弟。母父MotivatorはSadler's Wells→Montjeu系のなかでも瞬発力に優れた種牡馬で、日本の芝適性も非常に高い血統です。Blushing GroomやDanzigで機動力を強化した点も良く、中山芝2000mはピッタリの舞台といえるでしょう。ただ、スローペースの経験しかない点は大きな不安要素です。

・フリームファクシ
名門ソニンク牝系に属し、母ライツェントは本馬の他にディアドラ(2017年秋華賞、2019年ナッソーS)、オデュッセウス(2015年兵庫ジュニアGP3着)、リューベック(2022年ニュージーランドT3着)などを出しています。本馬は父にルーラーシップを配し、Nureyevの5×4などからバランス型に出た中距離馬。馬体のバランスも素晴らしく、ポテンシャルの高さは今回のメンバーに入ってもヒケを取りません。ただ、本馬も2000m戦の流れしか経験していないため、本番のペースに対応できるかがカギとなりそうです。

皐月賞の有力馬の血統と評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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