【皐月賞】戦国クラシック開幕 初陣を飾るのは中山を経験した無敗馬ベラジオオペラだ!

勝木淳

過去10年から見る皐月賞,ⒸSPAIA

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皐月賞は関東馬

牡馬三冠ロードは牝馬戦線以上に路線が多様化し、実績馬たちが皐月賞ではじめて対戦するようになり、戦力比較が年々難しくなりつつある。まして今年は2歳GⅠ馬不在で、核になる存在がいない。ある程度の勢力図は皐月賞が終わってから固まるとすると、皐月賞は馬券的に攻略しがいがあるレースと言える。過去10年分のデータを使用して展望する。

人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【3-1-2-4】勝率30.0%、複勝率60.0%を筆頭に3番人気【1-3-2-4】勝率10.0%、複勝率60.0%以内が好成績。6勝が3番人気以内なので、勢力図が定まっていない状況ながら、基本的には上位人気は素直に信頼すべきか。4番人気【0-2-1-7】複勝率30.0%以降は確率的にやや下がる。一方で8番人気【1-1-3-5】勝率10.0%、複勝率50.0%にもツボがあり、伏兵陣もゾーンを広く検討し、うまく馬券に組み込んでおこう。

東西別成績,ⒸSPAIA


東西別成績では日本ダービーは関東2勝、関西8勝で関西馬が圧倒的に強いものの、皐月賞は関東馬【6-3-4-51】勝率9.4%、複勝率20.3%、関西馬【4-7-6-92】勝率3.7%、複勝率15.6%で関東馬が優勢だ。

おそらく、関西馬にとってここがはじめての関東圏への出走というケースが多く、輸送で力を出せない、ないし、はじめての競馬場で戸惑うといった馬のコンディション的な問題と、使う側にあくまで目標は日本ダービー、皐月賞は勝てればラッキーぐらいの割り切りがあるかもしれない。

最大目標の東京芝2400mを考えれば、小回りの中山芝2000mにフィットしてしまうと、次走への影響もある。馬も経験が重要であり、東京で力を発揮できる末脚を磨く過程で小回りへ対応するのは簡単ではない。だから三冠馬は尊いともいえる。ともあれ、皐月賞は関東馬が地元の利を活かせる舞台だ。

久々に内容が濃かったスプリングS

上位人気をある程度信頼しつつ、8番人気など伏兵に気を配り、関東馬が優勢。こういった基本的なスタンスをつかんだところで、ここからはトライアルなど各馬の前走を振り返る。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


まず前走GⅠのうちダノンタッチダウンの朝日杯FSは【0-1-0-1】で20年サリオスが朝日杯FS勝利から直行で2着にきた。残る1頭は3着馬なので、これだけではダノンタッチダウンを正確に評価できない。昨年の朝日杯FSは序盤600m34.1、800m通過45.7で後半800m48.2、最後600m36.1のハイペース。マイラー特有のスピードが活きる競馬で、マッチしなかったダノンタッチダウンは中距離で見直せる。

前走GⅡ・GⅢレース別成績,ⒸSPAIA


GⅠ直行はダノンタッチダウン1頭で、今年もトライアル含め、重賞組がカギを握る。ざっくり内訳をみると、目につくのは共同通信杯【5-0-2-9】勝率31.3%、複勝率43.8%。エフフォーリア、ジオグリフと2年連続で勝ち馬を送り、圧倒的だ。ここは2着以内【5-0-1-6】、3着以下【0-0-1-3】。1、2着ファントムシーフ、タッチウッドをピックアップしたい。

共同通信杯は序盤600m35.3とやや速めに入りながら、その後、緩んで1000m通過1:00.5のスローペース。ラップ上昇は残り600mからで11.3-11.3-11.5、34.1。好位にいた2頭で決まった競馬で、皐月賞向きの機動力は感じるものの、今年は少しインパクトに欠けるのが正直なところだ。

次に成績がいいのはスプリングS【2-1-2-31】勝率5.6%、複勝率13.9%だが、間隔のつまったローテだからなのか、数字的にはちょっと頼りない。内訳は2着以内【2-1-2-12】、3着以下【0-0-0-19】とさらに極端で、今年はベラジオオペラとホウオウビスケッツが該当する。

今年のスプリングSは例年より内容は濃く、重馬場のなかグラニットが飛ばし、序盤600m35.4、1000m通過59.4の厳しい流れから後半800m12.3-12.4-12.2-12.6の持久力戦になった。中団から上がり最速タイ35.7で差して2着ホウオウビスケッツに1馬身1/4差つけたベラジオオペラは中山最終週特有の荒れ馬場になればチャンスはある。

皐月賞より日本ダービーと好相性の弥生賞ディープインパクト記念(以下、弥生賞)は【0-5-3-33】複勝率19.5%。こちらはスプリングSより好走ラインは低く、4着以内【0-5-3-23】、5着以下【0-0-0-10】。権利をとった1~3着タスティエーラ、トップナイフ、ワンダイレクトが候補。弥生賞は例年通り、前後半1000m1.01.0-59.4の後傾ラップ。同舞台ながら皐月賞は弥生賞とラップ構成がひっくり返ることが多い。今年もその予感は強く、好位で流れに乗った上位3頭のなかでペースが速くなったときに面白いのはトップナイフではないか。

同舞台といえば、京成杯組はすべて勝ち馬が参戦しており、ソールオリエンスは該当する。ここは前後半1000m1:02.2-1:00.0でさらにスローペース。本番は多頭数であり、結果を残せるかどうか不安なところはある。

少頭数といえばフリームファクシが勝ったきさらぎ賞【0-0-1-6】複勝率14.3%も記録上は前後半1000m1:01.2-58.5のスローだが、後半600m11.3-11.1-11.9を上がり34.2で押し切ったフリームファクシは荒削りな内容からも楽しみ。ここも多頭数と久々の関東圏への輸送がポイントになる。

過去10年から見る皐月賞,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

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