【高松宮記念】穴馬は前走不利な外枠で不完全燃焼の2頭 昨年のGⅠ好走馬キルロードとウインマーベルに期待
山崎エリカ
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今週からBコースに替わる
先週はファルコンSが3~4角で内から2頭目以内を通ったタマモブラックタイとカルロヴェローチェで決まったように、内から1~2頭目が断然有利な馬場だった。翌日の日曜も4角で内から2頭分を通った馬が穴をあけていたが、内から3頭目辺りは伸びておらず、むしろその外のほうが伸びていた。
しかし、今週からBコースに替わる。そうなると内の中でも伸びる所、伸びない所の境がなくなり、本来は内全体が有利になる。しかし、レース当日は降水確率が高く雨模様。断続的な雨の影響でどんどん時計が掛かり、外差し馬場となった一昨年のような決着になるかもしれない。そこで今回は内が残るパターンと、外差し馬場の両パターンを記載する。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 ピクシーナイト】
一昨年のスプリンターズSの覇者。同レースは4番枠から五分のスタートを決め、二の脚で楽に好位から3番手の最内まで上がって行く形。3~4角でじわっと仕掛けて前の馬とのスペースを詰め、直線序盤で前を捌いてひとつ外に出されると、ラスト1Fで突き抜けて2馬身差の完勝。本馬が当時記録した指数はここでもNO.1となる。
今回で当時の再現が出来れば、ここも勝ち負けになる。しかし、今回は香港スプリント以来の骨折休養明けの一戦。1年3ヵ月の休養明けとなると不安もある。まして休養明けはスタミナが不足するだけに、時計が掛かれれば掛かるほど不利だろう。連下の評価が妥当と見る。
【能力値2位 ナムラクレア】
前走シルクロードSで一昨年の小倉2歳S、昨年の函館スプリントSに次いで、重賞3勝目を挙げた馬。前走は2番枠から五分のスタートを切り、そこから押して中団の中目に食らいつく形。3~4角でファストフォースの後ろから、4角出口でその内を突いて3列目で直線。同馬と互角のしぶとい伸びで叩き合いになったが、最後にアタマ差捻じ伏せ優勝した。
しかし、前走時はBコース替わりで内が圧倒的有利な馬場状態。本馬は最後の直線で内を通っており、馬場に恵まれた面があったのも確か。今回本馬は上位人気が濃厚だが、GⅠとしてはレベル「?」だった昨年のスプリンターズSで差し、追い込み馬有利の展開に恵まれながらも5着だった。同レースは4角でかなり外を回すロスはあったが、完璧に乗られていたとしても3着が精一杯の内容だっただけに、過大評価は禁物だ。
【能力値3位 アグリ】
現在4連勝と急上昇中の上がり馬。前走の阪急杯は11番枠からまずまずのスタートを切って、二の脚で一旦先頭に立った。しかし、内のメイショウチタンがかなり抵抗したので、同馬を行かせて2番手外からプレッシャーをかけて行く形。最後の直線序盤で楽々と同馬を競り落として初重賞制覇を達成した。
前走はかなり強気に乗ったためにラスト1Fで甘くなり、ダディーズビビッドにクビ差まで迫られたが、3着以下をしっかり突き放している。芝1400mでもハナに行けるスピードがあり、折り合うことも出来るので芝1200mでも問題ないだろう。まして馬場悪化となれば、前走で今回よりも長い距離を使われていたことは強みとなる。ただ休養明けの前走で自己最高指数を記録した後の一戦となるだけに、疲れが残っていないか不安はある。
【能力値4位 トウシンマカオ】
京王杯2歳Sで2着に善戦するなど2歳時から高い素質を見せていたが、昨秋に本格化し、オパールSと京阪杯を連勝した。前々走の京阪杯は14番枠からまずまずのスタートを切り、軽く押して一旦2列目の外2番手まで上がった。しかし、さらに外のビアンフェがハナを主張したので、位置を5番手まで下げて追走。前2頭が引っ張る流れを離れた5番手で脚を温存し、3~4角の外から好位列まで上がって4列目で直線へ。直線序盤で3番手まで上がり、ラスト1Fで先頭のキルロードを楽に捉えて1馬身1/4差で完勝した。
前走のシルクロードSはBコース替わりで内が圧倒的に有利な馬場。15番枠からまずまずのスタートを決めるも、ペースが上がらない中で中団外を追走。3~4角で中目に入れたが、進路がなくブレーキをかけたため、4角で位置が下がって直線へ。直線では進路があり一気に追われたが、反応しきれずラスト1F地点では中団。そこからジリジリとなだれ込んで上位3頭から2馬身半差のた4着だった。
本馬はエンジンの掛かりが遅い。また前走は4角でブレーキをかけたことで、その後に追われても一気に反応できなかった。ただ重馬場でややハイペースとなった3走前のオパールSは中団外々からしぶとく伸びて勝利している。本馬の長所は半兄のベステンダンクに似て、しぶとく長い脚が使える所だ。時計が掛かって外差し馬場になった時は有力だろう。
【能力値5位 ヴェントヴォーチェ】
3走前にキーンランドC、前走でオーシャンSを優勝し勢いに乗ってきた馬。前走は9番枠から五分のスタートを切ったが、それほど無理をさせずに中団中目で脚を温存。3~4角で外から位置を押し上げ、4角では2列目外。直線序盤で楽な手応えで先頭に立ち、ラスト1Fでしっかりと抜け出して2馬身差で完勝した。
3走前は8番枠からやや出遅れて後方馬群の後ろからとなったが、3角で各馬が避けていた内に進路を絞り、そこから位置を押し上げ、4角では3列目の内。ウインマーベルの後ろから最後は同馬との叩き合いを半馬身差で制した。3走前は結果的に馬場の一番良いところを通ったことが勝因ではあるが、後半型の競馬で良さが出た面がある。
また3走前がややタフな馬場だったように、道悪も歓迎。しかも今回は乗り替わりで内目の枠を引き、後方の内で脚を温存するかは分からない。また休養明けの前走で自己最高指数を記録した後の一戦、伸び切れない可能性もある。
【能力値5位 ファストフォース】
レコード連発のコンクリート馬場で行われた21年のCBC賞で初重賞制覇を達成した馬。当時はピクシーナイトが外枠からトップスタートを切って逃げる勢いだったところを、3番枠からやや出遅れたが押して押してハナを主張。そこからペースを緩めず最短距離を通り、最後までしぶとく粘って半馬身差で優勝した。
本馬はテンがそれほど速くないものの、揉まれ弱い面があり前に行ってこその馬。その後、21年の北九州記念2着、京阪杯3着、22年のセントウルSで2着に善戦したが、いずれも逃げか2~3番手の外など揉まれない競馬をしたもの。馬群に入れると掲示板には載れないので、テンの速い馬が多く、9番枠を引いた前走シルクロードSはノーチャンスと見ていた。しかし、7歳になって悟りを開いたかのように、好位馬群の中目で折り合い、2着に善戦した。
年齢によりテンのスピードは鈍化したが、幅広いレースに対応できるようになったことで、今後も穴馬として活躍してくれそうだ。しかし、前走はしっかり体を絞っており、勝負だった感は否めない。前走からさらなる前進となると厳しいと見る。
穴馬は前走で不利な外枠だったキルロードとウインマーベル
【キルロード】
重馬場で行われた昨年の高松宮記念の3着馬。同レースは逃げたレシステンシアが次走ヴィクトリアマイル3着、道中2番手だったジャンダルムは秋のスプリンターズSを優勝しているように、前へ行った馬には厳しい流れだった。その流れを10番枠から押して押しての先行策で、道中は2列目外3番手。最後の直線ではしぶとく粘り、最内から追い込んだナランフラグとはクビ差+ハナ差。強い内容だった。
前走のシルクロードSは最後の直線で内を通った馬が1~3着を独占。そんな内が圧倒的有利な馬場状態の中を、不利な13番枠から先行する苦しい形。4角も大外では12着失速も仕方ない。今年は昨年以上に馬場が悪化する可能性もあるが、昨年よりは逃げ、先行馬が手薄。また休養明けの前々走・京阪杯で2着と好走していることから、巻き返すと見る。
【ウインマーベル】
昨秋のスプリンターズSの2着馬。同レースは7番枠から五分のスタート切り、一旦好位の中目から位置を下げて中団中目を追走。前にダイアトニックを置きながらコントロールして乗られていたが、3~4角で同馬の外に出して直線へ。中目を捌いて2列目まで上がり、ラスト1Fで甘くなったジャンダルムにクビ差まで迫った。
前走のシルクロードSは斤量59Kgを背負い、14番枠から出遅れ。内が伸びる馬場を外々から追い上げるも、4角大外では厳しかった。今回は休養明けをひと叩きされ、巻き返しが期待できる一戦。内目の枠ならもっと期待が高まったが、今回は前走よりもさらに外、大外18番枠を引いてしまった。昨年くらいの重馬場ならこの枠は苦しいが、一昨年のようにさらに馬場が悪化し、外差し馬場になればチャンスが高まる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ピクシーナイトの前走指数「-25」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.5秒速い
●指数欄の下線、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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