【高松宮記念】フラワーパーク、ビリーヴ、カレンチャン! 先頭で駆け抜けた3頭の牝馬たち

高橋楓

高松宮記念における牝馬の成績,ⒸSPAIA

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先頭でゴールを駆け抜けた3頭の牝馬

春の訪れを告げる高松宮記念。かつては「高松宮杯」の名称で中距離レースとして行われ、ハイセイコー、トウショウボーイ、オグリキャップなど錚々たるメンバーが勝ち馬に名を連ねている。1996年に短距離GⅠとして生まれ変わり、1998年からは現在の「高松宮記念」と名称が変更になった。

GⅠ昇格以降の27回で、先頭でゴールを駆け抜けた牝馬は3頭(※2020年は降着により2位入線モズスーパーフレアが優勝)。今回はその3頭の牝馬に注目して当時を振り返ってみたい。

三冠馬参戦! GⅠ昇格初年度の戦い

1996年 第26回 高松宮杯,ⒸSPAIA


1996年5月19日。この年からGⅠに昇格した「高松宮杯」だが、グレードだけでなく距離も変更。それまでの2000mから1200mのスプリント戦へ生まれ変わった。だからこそ、出走予定馬にクラシック三冠馬・ナリタブライアンの名前があることに強烈な違和感があった。もしや間違いなのではとも思ったが、前年にはホクトベガとヒシアマゾンが川崎のエンプレス杯に登録しざわついたこともあり、新たな歴史の幕開けになるのではと胸が高鳴った思い出がある。

レース当日、1番人気は前年のスプリンターズSを制していたヒシアケボノ。米国産で550kg超えの黒光りする筋肉質な馬体は、強者の風貌そのものだった。2番人気はその年の阪神大賞典でマヤノトップガンと世紀の叩き合いを制し、天皇賞(春)で2着だったナリタブライアン。約2年半ぶりの1200m戦出走となった。

3番人気にはデビューしてからわずか7か月のフラワーパーク。怪我に泣きデビューが遅れたが、初の重賞挑戦となった前走のシルクロードステークスで、京都競馬場芝1200mのタイレコードを記録し勝ち上がってきた快速娘だ。そして4番人気で短距離路線の強豪ビコーペガサスが続き、ここまでが単勝オッズ一桁台となった。

当日は、中京競馬場の入場人員記録となる7万4201人が駆け付け、短距離のスペシャリスト対三冠馬ナリタブライアンの戦いに注目した。レースは前半600mが33秒1というハイペースのなか、3番手を先行したフラワーパークが直線ですんなり抜け出すと、2着のビコーペガサスに2馬身半差をつける快勝劇。走破タイムの1分7秒4は中京芝1200mのコースレコードだった。

注目のナリタブライアンはスタートこそ上手く出るも、道中のスピード戦にはついていけず、先団から少し離れ後方4番手くらいの位置。直線になっても前との差は縮まらず、ゴール直前で馬群を割って飛んでくるも4着まで。勝ったフラワーパークは当時12月に行われていたスプリンターズSでエイシンワシントンをわずか1cm差し切って歴史的接戦を制し、1996年のスプリント戦線の頂きへと登り切った。

安藤勝己、悲願の中央GⅠ初制覇!

2003年 第33回 高松宮記念,ⒸSPAIA


2003年3月1日。笠松競馬から移籍した安藤勝己がJRA所属として初騎乗。2戦目で初勝利をあげた。オグリキャップやマックスフリートの主戦騎手であり、フェートノーザン、オグリローマン、ライデンリーダーなど多くの強豪の背中を知る人である。全国的にすでに「アンカツ」というニックネームは十分に認知されていた。その安藤騎手が早速GⅠ制覇のチャンスを掴んだのがこの第33回高松宮記念である。先に着順から振り返ってみよう。

1着 ビリーヴ(安藤勝己)3番人気
2着 サニングデール(福永祐一)2番人気
3着 リキアイタイカン(武幸四郎)10番人気
4着 テイエムサンデー(秋山真一郎)7番人気
5着 ゴールデンロドリゴ(佐藤哲三)11番人気

ゲートが開くと連覇を目指す圧倒的1番人気のショウナンカンプがハナを奪う。が、前年とは少々違う展開。最初の600mは同じ32.9秒なのだが、思うように後続を引き離すことが出来ず、終始ストレスがかかる競馬となってしまう。それを見るような形でレースを進めたビリーヴが直線を向くと一気に並びかけ、スプリンターズSに続くGⅠ制覇を成し遂げた。

それにしてもビリーヴという馬は「初」という言葉に縁がある。兵庫所属時代の岩田康誠騎手に初の中央重賞制覇をプレゼントし、その年のスプリンターズSで大種牡馬サンデーサイレンスの産駒として初のスプリントGⅠ制覇。安藤勝己騎手にはJRAのGⅠ初制覇をもたらした。そして母となってからはスプリンターズSにて子のジャンダルムが同レース史上初の親子制覇を達成した。そう考えると、安藤騎手との出会いは必然だったのでは、と思えてならない。

2011年最優秀短距離馬の意地! カレンチャンの逆襲

2012年 第42回 高松宮記念,ⒸSPAIA


「冠名+愛称」でカレンチャン。芦毛の可愛らしい馬体と馬名が実にマッチしている。成績の面でも、2011年に国内では6戦5勝、重賞4連勝で最優秀短距離馬のタイトルを獲得した快速馬だ。特に初GⅠ制覇となったスプリンターズSは、当時21戦17勝2着4回の世界的名スプリンター・ロケットマンを退けた、非常に価値のある1勝だった。

そのカレンチャンが2012年の高松宮記念は1番人気ではなく2番人気で迎える事になる。暮れの香港スプリント5着となり、3月のオーシャンSでは直線伸びきれず4着。単勝316.9倍のベイリングボーイにまで後塵を拝し、3連単266万馬券を演出してしまう。その結果も受けてか1番人気は8戦6勝2着2回、重賞連勝中の4歳牡馬ロードカナロアに譲ることとなった。

レースが始まるとエーシンダックマンが絶対に逃げる気迫を見せあっという間に先頭へ。その後ろにカレンチャンがスッとつけた。ロードカナロアは1枠という事もあり、無理せず4番手に控える形。3番人気で前年の2着馬サンカルロは後方で脚を溜めている。

直線を向くと、ロードカナロアが懸命に前を行くカレンチャンに迫ろうとするが差が縮まらない。前年の最優秀短距離馬の底力をみせる。ラストでサンカルロが鋭く伸びて来るがクビ差しのぎ切ったところがゴールだった。スプリンターズSではスピード、この高松宮記念では他馬を捻じ伏せる力強さを見せてくれた。

今年はメイケイエールやナムラクレアなど牝馬の上位人気が予想される高松宮記念。今回登場した3頭は共通して国内スプリントGⅠの連勝を記録しているだけに、結果次第では秋まで楽しみが続いていく。

《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレース、競輪の記事を中心に執筆している。

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