【高松宮記念】サンデーサイレンスの血は割引 特注はダッシュ力に優れるStorm Cat内包馬
坂上明大
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傾向解説
春の芝スプリント最強馬決定戦・高松宮記念。昨年の同GⅠ以降に芝1200m重賞を2勝以上したのはナムラクレアとヴェントヴォーチェのみという大混戦の芝スプリント路線。血統面を中心に高松宮記念で求められる適性を整理しつつ、新王者に最も近い存在を探っていきたいと思います。
まず紹介したいデータは社台系生産馬の成績。社台グループといえば、日本競馬を牽引する一大グループであり、特にノーザンファームにおいては過去10年の日本ダービーで6勝を挙げるという素晴らしい成績を残しています。しかし、そんな社台グループも高松宮記念では過去10年で未勝利。日本の主流条件である芝中距離で強い馬をつくるのが社台グループの生産方針であり、芝スプリント路線ではその勢いが鈍るのも仕方ないことといえるでしょう。
血統面においても社台グループを中心としたリーディング上位種牡馬の苦戦傾向が目立ちます。特に1990年代以降の日本競馬の血統地図をたった一頭で塗り替えた大種牡馬サンデーサイレンスの血は、むしろ持たない方がいいほど。父系での勝利もダイワメジャー産駒とゴールドアリュール産駒の2勝のみで、日本の主流血統は苦戦傾向にあるといえるでしょう。
反対に注目血統に挙げたいのはフォーティナイナーやStorm Catなどのダッシュ力に優れた北米血脈。特にStorm Cat内包馬は2019~21年の3年連続で勝ち馬を出しており、昨年も5番人気2着ロータスランドと17番人気3着キルロードが波乱を演じました。さらに、馬券圏外でも2014年15番人気4着エイシントップや2016年16番人気4着アクティブミノル、2020年12番人気5着シヴァージなど期待値以上の走りを見せる馬も多く、爆発力にも期待が持てる大注目の血統といえるでしょう。
血統解説
・ナムラクレア
3代母Coup de Genie(1993年モルニ賞、サラマンドル賞など)はMachiavellian(1989年モルニ賞、サラマンドル賞など)の全妹という良血。Northern Dancerの血量が多い反面、母母Fountain of Peaceが同血脈を持たない素晴らしいバランスの好配合馬です。サンデーサイレンス系ミッキーアイル産駒ではありますが、本馬は母父Storm Catの影響が強い馬体を有し、スプリントGⅠを獲れる資質を十分に秘めた素質馬とみています。
・メイケイエール
父ミッキーアイルのスピード源であるデインヒルを4×4でインブリード。近親交配がきついことも影響してか気性的にも短距離向きの荒々しさが表現されています。ただ、母父ハービンジャーは影響力の強い芝中長距離血統で、サンデーサイレンスを3×4でインブリードすることからも身体的な適距離は1400~1600mでしょう。スプリンターズSよりは高松宮記念向きですが、短距離戦では緩い流れの方がベターでしょうか。
・アグリ
父カラヴァッジオは2~3歳時に芝6FのGⅠを制した早熟スプリンターで、Tenebrism(2021年チェヴァリーパークS、2022年ジャンプラ賞)など仕上がりの早いスピード馬を多く輩出するStorm Cat系種牡馬です。さらに、父父Scat Daddyは2019年1着馬ミスターメロディを出しており、昨年2着馬ロータスランドも母父にScat Daddyの血を持ちます。サンデーサイレンスの血を持たない血統構成でもあり、成長途上とはいえ魅力の大きな一頭といえるでしょう。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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