【注目3歳馬(牡馬編)】クラシックは混戦模様 瞬発力武器のソールオリエンス、強敵破ったファントムシーフなどに注目

三木俊幸

注目3歳馬ソールオリエンス,ⒸSPAIA(写真撮影:三木俊幸)

ⒸSPAIA(写真撮影:三木俊幸)

牡馬クラシック候補をピックアップ

昨年の2歳牡馬戦線は、新馬戦で先が楽しみな勝ち方をした馬たちが次走でまさかの敗戦、というシーンが目立った。さらに朝日杯FSを制して最優秀2歳牡馬に輝いたドルチェモアはマイル路線へ、ホープフルSを勝利したドゥラエレーデはUAEダービーに登録があり、クラシックに向かうか不透明な状況となっている。今回は「注目3歳馬・牡馬編」として、そんな混戦の皐月賞・ダービーで期待がかかる馬を紹介する。

瞬発力は超一級

最も期待しているのは、キタサンブラック産駒のソールオリエンス。デビューは11月13日の東京芝1800m戦。スタートはあまり良くなかったが、1000m通過が1:05.0という超スローペースで流れるところ3番手の外からレースを進め、直線では上がり33.3の末脚で人気の一角レーベンスティールとの一騎打ちをクビ差制した。

ペースが遅く瞬発力勝負となったにせよ、ラスト11.0-11.0は秀逸。敗れたレーベンスティールも次走で後続に0.6秒差をつける完勝で勝ち上がっている。

続く京成杯ではその強さが偽りでないことを改めて感じさせてくれた。少頭数で1000m通過は1:02.2と遅かったが、6番手で控える形。4角では大きく外に膨れて他馬に迷惑をかけるシーンもあったが、あっという間に先頭に立ち、最後は余裕がありながら後続に2馬身半差をつける完勝。このレースもラスト11.7-11.5と加速。強いメンバー相手だったとは言えず荒々しさが目立ったが、前を捉えるまでの瞬発力は超一級のものだった。

この後は皐月賞へ直行とのこと。一気の相手強化や多頭数となることなど未知な面は多いが、勝負所でモタモタする様子も感じられず、それらの課題も杞憂に終わりそうなほどの能力の持ち主だ。あっさりクリアするようなら世代の頂点も視界に入ってくる。

注目3歳馬ソールオリエンス,ⒸSPAIA(写真撮影:三木俊幸)


東京コース向き、距離延長も歓迎

強い相手と戦い、力を証明してきたという点ではハービンジャー産駒・ファントムシーフの名前もあげておかなければならない。

6月18日の阪神芝1600mでデビュー。好位からレースを進めて直線に向くと馬なりで前を捕まえにいき、残り200mで追い出されると後続に1.1/4馬身差をつけて勝利。勝ちタイムは1:36.8と平凡ながら、距離延長でさらに良さが出るタイプとみていたが、続く2戦目の野路菊Sでは想像以上の強さを見せた。

1000mの通過が1:01.4で流れる中、4番手を追走。3角で前との差を徐々に詰めて直線に向くと、次走でアルテミスS3着となるアリスヴェリテを0.6秒も上回る上がり33.5の末脚で差し切った。勝ちタイム2:00.2も優秀で、4着のトップナイフ(後に京都2歳SとホープフルSで2着)には9.1/4馬身もの差をつけるなど、素晴らしいパフォーマンスだったと言える。

ホープフルSは7番手のインで脚を溜める競馬となったが、結果的に前残りのスローペースに加えて勝負所で前が詰まるような形となり、直線で外に持ち出すのも時間がかかり4着と言い訳可能な結果。共同通信杯次第でクラシック有力候補となるか、脱落となるかに注目が集まった。

その共同通信杯ではスタートして1ハロンが過ぎ、ラップが11.1と上がったところで果敢に一旦先頭へ。その後は出遅れから巻き返したタッチウッドを行かせるもピッタリマークしてラップは11.3。レース中盤でペースは落ち着くが、ラスト3F11.3-11.3-11.5の展開で残り100mでタッチウッドを捉えた。この内容は高く評価したい。

中山コースよりは東京コースでこそ、距離延長も歓迎のタイプ。しっかりと結果を残し、有力候補としてクラシック戦線へ向かう。

注目3歳馬ファントムシーフ,ⒸSPAIA(写真撮影:三木俊幸)


フリームファクシはレーン騎手で皐月賞へ

ここからは、上記2頭のライバルたちをレース別に見ていこう。

皐月賞の舞台が合いそうという点では、タッチウッドとフリームファクシ。タッチウッドの新馬戦は11月20日の阪神芝2000m戦、逃げて4角では一旦後続に並びかけられる場面もありながら再び突き放して6馬身差の完勝。稍重ながらラスト2Fも11.0-11.2でまとめた。

続く共同通信杯はファントムシーフから1.1/4馬身差の2着。スタートで出遅れたが、途中から先頭に立って最後までしぶとく食い下がった内容は勝ち馬に匹敵するもの。まだまだ未完成で、賞金面でも皐月賞に出走できるか微妙だが、世代でも上位の能力は示した。

フリームファクシは新馬戦2着だったが、勝ち馬は葉牡丹賞で素晴らしいパフォーマンスを見せたミッキーカプチーノ、3着グリューネグリーンも京都2歳Sを制するなどレベルは高かった。自身はその後3連勝できさらぎ賞を優勝、若干折り合い面に不安を残すが素質は上位。皐月賞はレーン騎手とのコンビで参戦することが発表されているが、機動力もあるタイプで皐月賞の舞台は合いそうだ。

すみれSでは最後方から上がり33.1

日本ダービー候補の一角として推奨したいのは、シャザーン。

7月31日の新潟芝1800mでデビュー。大接戦となったゴール前はダノントルネードにハナ差競り負けるも、逃げて上がり32.5を繰り出したレースは負けて強しの内容だった。2戦目は年が明けた1月の中京芝2000mの未勝利戦。2番手追走から直線は馬場の真ん中に持ち出されると後続に2馬身半差をつけて勝利した。重馬場ながらラスト11.4-11.4のレースラップはかなり優秀なものだった。

3戦目のすみれSはスタートで接触があり最後方からのレース、1000m通過1:04.4と超スローペースながら上がり33.1の末脚で豪快に差し切り。力が抜けていないとできない芸当であり、余力十分だった内容からも、距離延長も問題なく非常に楽しみな存在だ。「友道康夫厩舎×金子真人HD」のコンビで3度目のダービー制覇なるかという意味でも注目が集まる。

マイル路線はダノンタッチダウンとドルチェモア中心

「注目2歳馬」の連載で紹介した馬たちでは、共同通信杯3着のダノンザタイガーもまだ圏内につけているが、またしても勝ちきれず評価は上げにくい状況。有力候補として再浮上していくためには若葉Sでの勝利が必須だ。

オープンファイアは皐月賞に向かわず横山武史騎手とのコンビで青葉賞へと向かう。きさらぎ賞は2着も、ゴール前は外から追い込みフリームファクシをあと一歩のところまで追い詰めた。新馬戦も残り100mを切ってから猛追してきたように、エンジンのかかりが遅いタイプで2400mへの距離延長は間違いなくプラスに働く。

朝日杯FSで2着だったダノンタッチダウンは、皐月賞に直行予定。結果次第では日本ダービーに向かう可能性もあるが、マイル路線に進めば力上位。ドルチェモアとともにマイル路線の中心になっていくだろう。

ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在はカメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場を飛び回りつつ、ライターとしても執筆している。

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