【金鯱賞】本命候補は単独2番手叶うホウオウビスケッツ クイーンズウォークは末脚生かす形なら前進可能
山崎エリカ

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逃げ馬有利、追込馬苦戦の舞台
2016年まで12月上旬に開催されていたが、17年に3月の中京開幕週に移行(20年除く)。21年は重馬場で行われるなど、雨に見舞われることも多く、今年もレース当日は雨予報。しかし、この開催は最終日に高松宮記念が行われるため、芝の悪化した箇所は広範囲にわたって張り替えられており、完全な良馬場なら高速馬場となる。
また2017年以降の過去8回で平均ペースになったのは昨年のみ。極端なスローペース5回でややスローペース2回。ゴール手前の急勾配の途中からスタートして、向正面半ばまで坂を上っていくコース形態のため、とにかくペースが上がりにくい。
このため2021年に10頭立て10番人気のギベオンが逃げ切ったように、逃げ馬が大活躍。過去8回で逃げ馬は1着2回、2着3回、3着1回という活躍ぶり。一方、追込馬の3着以内は23年プログノーシスのみ。逃げ有利、追込苦戦の傾向がはっきり出ている。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 デシエルト】
近2走の芝で本格化。2走前アンドロメダSは6番枠からまずまずのスタートを切り、押して二の脚で楽にハナを取り切った。そこからはコントロールして折り合い重視で進めていたが、それでも後続と差を広げて3角に入った。
3角下りではペースを上げて大逃げの形。後続が追い上げてくるものの、4角で仕掛けリードを維持して5馬身差で直線へ。直線序盤でもその差を維持し、ラスト1Fではロードデルレイに差を詰められたが、3馬身半差で圧勝した。
前走の中日新聞杯は8番枠から五分のスタートを切り、押して内のタマモブラックタイのハナを叩き、内に切れ込んでペースを引き上げた。1~2角で鞍上がペースを落とそうとしたが抑えきれず。向上面では少し掛かりながらペースを引き上げ、やや差を広げて1馬身半差のリードで3角を迎えた。
3角で少し我慢して3~4角で徐々に差を広げ、4角で促して2馬身半差のリードを保って直線へ。直線序盤で追われてリードを広げ2馬身半差。ラスト1Fで追ってくる各馬を問題とせず、2馬身差で完勝した。
本馬は3年前のダービーでは、14番枠からかなり押して内の先行馬を制しハナを主張するなど、かなり掛かって暴走したことがある。
当時と比べるとかなり折り合いに新境を見せている。しかし、テンにもっさりしたところがあり、2走前のようにスムーズにハナへ行けないときは、押して気性にスイッチが入り、ペースを平均以上に引き上げてしまう可能性がある。
そのため今回、内に同型馬のホウオウビスケッツがいることが厄介だ。本馬は前走も掛かってハイペースで逃げたことを考えると素直に評価できないが、コントロールしての逃げなら令和のサイレンススズカになれる可能性もある。重い印は外せない。
【能力値2位 プログノーシス】
一昨年の札幌記念で今回のメンバーでは断トツのGⅠ勝ち負けレベルの指数を記録。その時は13番枠からやや出遅れてふらつく場面があり、無理せず後方付近からの追走。道中も前3頭が飛ばしてペースは緩みなく流れたが、本馬は向正面で中目を捌いて押し上げ、一気に好位まで進出した。
3~4角ではそのままの勢いで外に誘導しながら2番手に上がり、馬場の悪化した最内から先に先頭に立ったトップナイフを追撃して1馬身半差ほどで直線へ。直線序盤で同馬に並びかけると、ラスト1Fで抜け出して4馬身差で完勝した。
一昨年の札幌記念はタフな馬場で逃げ馬が多数出走。そのためオーバーペースとなり、先行馬が総壊滅する展開。またこの週はA→Cコース替わりで最後の直線で外に誘導した馬が猛威を奮っていた。つまり、ここでのプログノーシスは追い込み有利の展開に恵まれただけでなく、完璧なコース取りで自己最高指数を記録した。
本馬は昨年の本レースも勝利。昨年は4番枠から五分のスタートを切り、コントロールして後方馬群の内目を追走。道中はドゥレッツァをマークしてじわっと押し上げ、中団内目まで進出。3角手前で上手く同馬の内に入り、3角では3列目付近に付けた。
3~4角では最内を通り、4角出口で中目を狙ったが前が壁。直線序盤で進路を内に切り替えてすっと抜け出し、一気に先頭に立ち2馬身差。ラスト1Fでさらに突き抜け5馬身差で圧勝した。
昨年は珍しく前が競り合って前半が速い流れ。道中のペースが落ちたタイミングで中団内目まで押し上げ、3~4角でもほぼロスなく立ち回り、直線序盤も上手く捌いていた。ここでは末脚の違いを見せつけたが、いわゆる神騎乗でもあった。
前走の有馬記念は超絶スローペースで前有利の展開。出遅れは想定内としても、道中でポジションを上げなかったことで、生涯で初めて掲示板に載ることが出来なかった。
今回は前走より相手緩和もどうしても後方からになるだけに、展開と押し上げのタイミングに大きく左右される。2022年の中日新聞杯(中京芝2000m)で最後方から届かず4着に敗れたことを忘れてはいけない。
【能力値3位 ラヴェル】
デビュー2戦目のアルテミスSは後方から3~4角でリバティアイランドに蓋をしながら先に動き、同馬を完封した素質馬。古馬になってからはスランプだったが、2走前のエリザベス女王杯で2着。前走チャレンジCで重賞2勝目を挙げ、完全復活を遂げた。
前走は9番枠から出遅れて外に誘導。しかし、外に出し切るのが難しく、中団中目のスペースを軽く促して拾う形。道中もマイネルモーントの後ろの中団中目を走り、3角手前で同馬の内から押し上げ3角を迎えた。
3~4角では好位の中目のスペースを拾い、4角でセイウンハーデスの後ろから2列目まで押し上げ直線で外に誘導。直線序盤で追われるとすっと抜け出して1馬身差。ラスト1Fでディープモンスターらに迫られたが、問題とせず1馬身3/4差で完勝した。
前走は前後半5F58秒4-59秒8と緩みなく流れたが、出遅れを挽回して中団までポジションを上げ、早め先頭に立っての勝利ととても強い内容だった。ただ近2走は2歳時のように前半で位置を取りに行かなくなったことが好走に繋がった面がある。
スランプ期とは言え、一昨年の秋華賞では先行して11着に崩れている。また昨年3月の中山牝馬Sでも序盤で好位直後の外まで上がって11着に敗れた。また前記の2戦は稍重でスローペースを意識して動いたものだった。
本レースは前有利な傾向があり、前半から位置を取りに行く可能性もある。また今回は前走で自己最高指数を記録した後に楽をさせての始動戦。叩き台の印象が強い一戦だけに、評価を下げたい。
【能力値4位 ホウオウビスケッツ】
昨夏の函館記念で初重賞制覇を達成。同レースは12番枠から五分のスタートだったが、二の脚で楽に逃げ馬アウスヴァールの外2番手に取り付いた。1~2角では手綱を抑えてコントロールし、道中は同馬から2馬身半ほど離れた2番手を追走した。
3角ではアウスヴァールと3馬身差だったが、3~4角で徐々に差を詰めながら外に誘導し、4角で一気に並びかけた。直線序盤で抜け出すと、ラスト1Fで突き抜けて3馬身半差で圧勝した。
この函館記念は一つ前の巴賞を逃げ切り勝ちした後の一戦。そのため控えたことでやや掛かってはいたが、道中で逃げ馬から離れた単独2番手になったことで折り合いもつき、自己最高指数を記録した。
また3着アウスヴァールと4着サヴォーナが後にオールカマーで2着、4着と善戦したように、意外とハイレベルな一戦だった。出走馬の近5走では、プログノーシスが優勝した昨年の金鯱賞に次ぐ2番目の指数を記録している。
本馬はその後の毎日王冠2着、天皇賞(秋)3着。ともにマークが薄く、スローペースで逃げられたことも好走要因ではあるが、逆にペースを落とし過ぎたため、勝ち馬の決め手に屈した面もある。しかし、デシエルトの逃げ濃厚な今回はスローはないだろう。
前走の中山金杯はスタミナが不足しがちな休養明け。また大外18番枠からやや掛かってハイペースで逃げるクリスマスパレードに絡んでいったため9着に失速。しかし函館記念のように上手く2番手を立ち回れれば面白い。今回の本命候補だ。
【能力値5位 マイネルモーント】
今年の中山金杯2着馬。同レースは7番枠から出遅れて後方からの追走となったが、促して中目のスペースを拾って挽回。道中はパラレルヴィジョンを見ながら中団やや後方の内目を進んだ。
3~4角で内目から中目のスペースを拾っていったが、4角でパラレルヴィジョンが外を選択すると、同馬の内を追走していたアルナシームが前に入ってきた。直線序盤で同馬の後ろから追われ、しぶとく伸びて3列目に上がり、ラスト1Fでアルナシームとの差はやや詰めたが、1馬身1/4差で2着までだった。
中山金杯ではホウオウビスケッツに先着しているが、この時は同馬が外からクリスマスパレードに絡んで行ったことでペースが速くなり、差し馬に有利な展開だった。また4角で手応え抜群だったアルナシームの後ろを取ったことで、直線の進路取りに苦労せず、スムーズに着順を上げることができた。
前走の白富士Sでは前半は逃げていたが、向正面で内からシュトラウスがハナを主張すると、スムーズに2番手に控え、3角で被され3列目の最内に下がっても、何の問題もなく最短距離を通って2着に善戦。このように本馬は操縦性が抜群で自在性があり、幅広い展開に対応できる強みがある。ただ今回は相手が強化される点が不安だ。
クイーンズウォークは末脚を生かす形なら
クイーンズウォークは昨秋のローズSの勝ち馬。この時は2番枠からまずまずのスタートを切って、いったん好位の内目を取り、そこからコントロールしながら控えていく形。
道中ではやや掛かりながら中団内目を進んでいたが、道中でごちゃつき外目に誘導され3角を迎えた。3~4角で徐々に進出し、4角出口でさらに外へ誘導されると、直線序盤でじわじわ伸びて3列目に上がり、ラストはそのまま突き抜けて1馬身半差で完勝した。
ここでは11番人気の逃げ馬セキトバイーストが3着に粘ったように、前有利の展開。ここで末脚の違いを見せつけたことは価値が高い。
本番の秋華賞はローズSから一転、セキトバイーストの大逃げでかなりのハイペースとなった。本馬は3番枠からスタート後に大きく躓いて後手を踏み、道中で捲って行く形。3、4角で大外をぶん回したことも影響して最後はもう脚がなく、15着と大失速した。
秋華賞はひどい騎乗だったが、行きっぷりが悪かったのは休養明けで自己最高指数を記録した後の一戦で、疲れによるものが大きい。
そこから立て直された前走の小倉牝馬Sは、9番枠からまずまずのスタートを切った。しかしこれが災いして、激流の好位外を進むことになった。結果、ラスト1Fで外差し勢に飲み込まれてしまったが、叩かれての今回は前進が期待できる。本馬は成長期の4歳馬であり、ローズS時のように中団から末脚を生かす形なら有力だ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)デシエルトの前走指数「-24」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.5秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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