【フェブラリーS】強敵不在でレッドルゼルが最有力 穴はソリストサンダーとテイエムサウスダン

山崎エリカ

2023年フェブラリーS出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

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過去2年より時計の掛かる馬場の可能性大

先週の東京ダートは雪の影響で超高速ダートだったが、今週は先々週までの時計が掛かる馬場に戻っている。土曜は凍結防止剤が撒かれた影響で稍重発表だったこともあり、騎手が先週に近いイメージで乗り、前が崩れて外から差し、追い込みが決まるケースが目立っていた。しかし、日曜はその傾向が弱まってくるだろう。

過去2年は高速ダートで内有利の傾向が顕著で、特に昨年は明確に内と前が有利だった。しかし今年はそれよりも1秒は遅い馬場状態。昨年同様に逃げ、先行馬がそれなりに揃い、1分35秒前後の決着となると、外差しが決まる公算が高いと見ている。今回はその前提で予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

2023年フェブラリーS出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 レモンポップ】
前哨戦の根岸Sを優勝した馬。前走は13番枠からやや出遅れながらも、二の脚で挽回し好位の中目を追走。3~4角で前のエアアルマスの外に出し、4角3列目付近からラスト2Fですっと抜け出した。ラスト1Fで外から伸びてきたギルデッドミラーを振り切り半馬身差で完勝。前走は外差し馬場で内が伸びない状況だったが、中目から正攻法の競馬で優勝した内容は評価できる。

本馬は昨年、東京ダ1400mで破竹の4連勝。2走前の武蔵野Sではギルデッドミラーに差され、2着に敗れたことから「東京ダ1400m専用機」などという言われ方もされた。しかし、武蔵野Sは3番手の中目で逃げたバスラットレオンを追い駆け過ぎたわりには、ハナ差とよく粘っており、いわゆる勝ちにいっての惜敗だった。上手く脚をタメることが出来れば、東京ダ1600mも問題ないとみている。

しかし、今回は当初は陣営が「根岸Sがキツい競馬で、疲労感が抜けない」とコメントし、フェブラリーSへの出否未定だったように、休養明け好走の反動が懸念される。実際に本馬は根岸Sよりも前の段階では、確実にフェブラリーSに出走できる立場ではなかったことから、根岸Sに照準を合わせた感がある。

東京ダ1600mに大きな不安はないが、逃げ、先行馬が手薄な今回は武蔵野S同様に好位から正攻法の競馬をする可能性が高い。臨戦課程と展開に不安はあるが、本馬はデビューから10戦7勝2着3回で連対率100%。抜群の安定感を誇り、軽視するのは危険だ。

【能力値2位 レッドルゼル】
2021年JBCスプリントの覇者。金沢の1400mで行われた同レースは前半3F37秒0-後半3F36秒0のややスローペースとなった中、大外12番枠から好位の外目を追走。3~4角で各馬が砂の深い内を嫌い外に出していくのに対し、本馬は内に進路を切り替え、そこから位置を押し上げて3馬身差の完勝。本馬はこのJBCスプリントが自己最高指数だったことからも、マイルはやや距離が長いと言える。

しかし、過去2年のフェブラリーSは4、6着と悪くない結果だった。特に一度目の2021年4着時は、大外16番枠から好発を決めていたが、じわっと促しながら中団外目を追走。中団の中目に入れて壁を作りながら3角。3~4角でも中団馬群の中で脚を温存しながら直線へ。ラスト2Fでしぶとく抜け出し、ラスト1Fで流れ込んでの4着だった。

2021年は確かにラスト1Fでは甘さを見せたが、この日は3~4角から最後の直線で内を通った9番人気エアスピネル2着、8番人気ワンダーリーデル3着、10番人気エアアルマス5着と、内有利が顕著だった。本馬はフラットな馬場だったらもっと着順を上げていた可能性もあった。

昨年のフェブラリーSは5番枠から五分のスタートを切ると、ある程度流れに乗って好位の直後を追走。最終的には中団の内目、3~4角ではカフェファラオの直後から同馬とともに位置を押し上げ3列目で4角。この日は前と内有利が顕著だったこともあり、好位のカフェファラオを目標に動いて行ったため、直線では甘さを見せて6着。結果的には早仕掛けだった。

前走の盛岡1200mで行われたJBCスプリントでは4着に敗れたが、前に行った3頭が3着以内を独占。本馬は高速ダートで前が止まらない流れを1番枠から出遅れ、二の脚も遅く、単独最後方からのレースだった。3~4角で苦しくなり下がってくる地方馬が多数いて、仕掛けをワンテンポ遅らせて位置を押し上げる形にもなっており、ここでも本来の力を出し切れなかった。

今回は前走から一転して2021年のフェブラリーS同様に、上手く脚をタメられる外枠15番枠に入った。今年は良馬場で行われる可能性が高く、近2年よりも時計が掛かりそうな点も好ましい。また今回は同レース2連覇中のカフェファラオ不在。昨年の2着馬テイエムサウスダンも昨年ほどの勢いがなく、近2年よりも相手に恵まれた。ここはチャンス到来とみて本命視したい。

【能力値3位 ドライスタウト】
デビュー3戦目で全日本2歳優駿を優勝した素質馬。同レースは10番枠からまずまずのスタートを切り、カイカノキセキを行かせて2番手を追走。3~4角で楽々と先頭に立つと、ラスト1Fでさらに加速して楽勝した。記録した指数は2歳馬ながら古馬重賞でも通用する驚きのものだった。

長期休養明け2戦目の前走すばるSは12番枠から五分のスタートを切り、中団の外目を追走。しかし、外からバトルクライにずっとフタをされて包まれ、進路のないまま直線へ。同馬が抜け出すのを待ち、そこから外に出すロスが生じてのクビ2着だった。ラスト1Fでは一番伸びていただけに、もったいない競馬だった。しかし、ここへ向けて余力を残せたという意味では加点材料だ。

今回は前走の二の舞にならないためにも、外枠が欲しかったが4番枠。この枠だとある程度は出して位置を取る必要があり、戸崎騎手だと最後の直線でまた詰まってしまう可能性も考えられる。自己最高指数が全日本2歳優駿であることや、ダ1400mでは前半が速くなく、追走にやや忙しさを見せていることから、マイルへの距離延長も明確に加点材料だが、対抗評価くらいまでとしたい。

【能力値4位 メイショウハリオ】
昨年の帝王賞は5番人気ながらテーオーケインズらを撃破し、優勝した馬。同レースは大外9番枠からやや出遅れたが、前半のペースがかなり遅かったこともあり、わりと楽に好位の外を確保。テーオーケインズをマークしながらの競馬になった。

しかし、向正面でスワーヴアラミスが外から捲って一気にペースアップ。これに抵抗して速度を上げたテーオーケインズ、クリンチャー、オーヴェルニュは最後の直線で余力がなく、苦しくなり潰れた。一方、本馬はここでワンテンポ待ち、脚をタメることを選択したことで、最後の直線で余力を残せた面が大きい。帝王賞は本馬が強かったというより、前記した馬たちが自滅したことが大きかった。

前走の東京大賞典は3着。5番枠から五分のスタートを決め、中団の外目を追走。このレースでも向正面で捲りが起こったが、ここではそれらにじわっと食らいついていく形。3~4角の外から位置を押し上げ、4角では3列目。そこからジリジリ伸びて先頭列付近まで上がってきたが、外からウシュバテソーロに抜け出され、ラスト1Fでノットゥルノにも差されての3着だった。

本馬は昨年のマーチS勝ちや、平安S3着の実績があることから、前走くらいは走れて当然で、メンバーが手薄なここなら通用するレベルの能力はある。しかし、マイル戦となると薫風S(3勝クラス)同様、後方からのレースとなる可能性が高いだけに、展開に恵まれる必要がある。前が崩れる展開ならチャンスありといったところだ。

【能力値5位 ソリストサンダー】
マイル重賞では2021年の武蔵野S勝ちのほか、かしわ記念で2度の2着やマイルCS南部杯で3着の実績がある馬。本馬が自己最高指数を記録したのは昨年のかしわ記念2着時。このレースは2番枠からまずまずのスタートを切り、1番枠からハナを主張したショウナンナデシコの後ろ、2列目の最内を追走。道中でスペースを作り、3~4角でそのスペースを詰めて外に出した。直線序盤でしぶとく伸びてテイエムサウスダンを交わし、ラスト1Fでショウナンナデシコに食らいついての2着だった。

ただ、かしわ記念は1番枠ショウナンナデシコ1着、2番枠ソリストサンダー2着、3番枠テイエムサウスダン3着と、枠順通りに決着したように、内から2頭分が断然有利な馬場状態だった。

前走のマイルCS南部杯は、自己最高指数を記録した後の休養明けの一戦。1番枠から五分のスタートを切ると、そこから押して先行争いに加わり、それを制して逃げるヘリオスの外から競り掛けていく形。3~4角ではカフェファラオも競り合いに加わり、前半4F45秒9-後半4F48秒7の激流となったため、最後の直線で苦しくなり失速、7着に敗れた。

前走時は激流に飲み込まれてしまったのが敗因だけに、今回は巻き返して来る可能性が高い。昨年のフェブラリーSは内と前が有利の状況の中、序盤に中団の外からじわっと好位の外まで上がっていく競馬で4着と好内容だっただけに、今年も上位争いが期待できる。前走は1番枠だったため無理して出していった面があるが、今回は11番枠と昨年同様に外枠。昨年よりも時計が掛かりそうな点も好ましく、脚をタメての巻き返しを期待したい。

【能力値5位 ケイアイターコイズ】
逃げ馬を見ながらマイペースでレースを運べると、不気味な存在の馬。本馬の自己最高指数は昨年2月のバレンタインS2着時。同レースは4番枠から好発を決め、逃げたメイショウウズマサの外2番手から、最後まで離されずについて行く形でのクビ差2着だった。本馬はその後、オープンで2勝、3走前の霜月Sではドライスタウトの2着に好走しているが、全て逃げ馬を見ながら2番手でレースを進めたもの。

今回は久々のマイル戦で、前走から2Fの距離延長。さらにGⅠ初挑戦で一気に相手が強化される。たとえ2番手に付けたとしても、マイペースの競馬はできないだろう。今回は狙いが下がる。

穴馬は昨年の2着馬テイエムサウスダン

本馬は一昨年の黒船賞を2番手から4角先頭に立ち8馬身差で圧勝して以降、完全にひと皮剥けた。昨年は根岸Sを優勝し、フェブラリーSでも2着に善戦。昨年は15番枠からトップスタートを切って、そこから押し進めていたが、内からサンライズホープがハナを主張したので、序盤は好位の外を追走。しかし、同馬が少しペースを落としたその隙に、外から一気にハナを奪った。そこからは岩田康騎手得意のペースダウンで3~4角では馬群が凝縮。ラスト1Fでカフェファラオに交わされたが、マイペースに持ち込み、粘り込みを図り2着だった。

前走の根岸Sは外差し馬場。8番枠から好発を切り、2列目の内を追走。先頭列の内にオーロラテソーロ、その外からヘリオスが競っていき、本馬はそのヘリオスの後ろを追走。直線序盤で馬場の良い外に出そうとしたが、外のエアアルマスに閉められて出せず。また前にいたヘリオスが苦しくなったことで3列目に後退。ただ、ラスト2Fで外に出して進路を確保してからも、ほとんど伸びず14着に敗退した。

前走時は砂の内側が深い状態で、そこを通ったオーロラテソーロ、ヘリオス、テイエムサウスダンは揃って14~16着に敗れた。ここまで極端に内を追走していた馬が苦戦した日ではなかったが、オーロラテソーロとヘリオスが競り合いペースを引き上げたことも影響したのだろう。まして本馬はスタミナが不足する休養明けで、前々走から1Fの距離延長でもあった。

今回は前走から変わり身が期待できる条件が揃った。本質的にマイルは距離が長いので、10番枠から無理をせず、上手く脚をタメることができれば、昨年同様に驚きの善戦、一発がありそうだ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)レモンポップの前走指数「-34」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも3.4秒速い
●指数欄の下線の緑は芝
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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