【シリウスS】コース傾向からプロキオンS組に妙味アリ カギを握るバーデンヴァイラーの取捨は?
勝木淳
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決め手が重要なコース
関西の変則日程は来春の京都競馬再開までまだまだ続く。この秋も阪神開催が中京に、京都開催は阪神に振り替えられている。その秋の阪神代替開催最終週に行われるのがシリウスS。チャンピオンズCと同じ中京で行われるが、GⅢのハンデ戦とあって前哨戦というより出走権をかけた争い。ダート戦線はGⅠに限らず、地方交流を含め賞金水準が高く、出走するためには賞金が必要。ここで稼ぎたい若い馬を中心に今年も激戦が予想される。データは12年改修後に誕生した同コース、古馬3勝クラス以上15レースを使用する。
まずこの中京ダート1900mについてざっとおさらいしよう。スタート地点は1800mより4コーナーに100m寄った地点。つまりは急坂の立ち上がり部分からスタートする。スタート直後が急坂のため、ダッシュがつきにくい。坂を上がったあたりからゴール板、1コーナー手前にかけて遅れ気味に先行してくる馬がいると、思わぬ乱ペースもある。ここで先行争いがもつれると、最後の直線で逆転もある。
しかし、距離を意識して最初の急坂で無理しないと判断すれば、先行勢のペースになる。急坂を2度通過するコースでスタミナも問われる。昨年のシリウスSはサンライズホープが番手から抜け出し、2着は4コーナー15番手のウェスタールンド、3着は先行したブルベアイリーデだった。今年の平安Sはテーオーケインズ、ケイアイパープルの先行勢が1、2着、3着はその背後にいたメイショウハリオだった。
1番人気【7-1-0-7】勝率46.7%、複勝率53.3%と強く、勝ち馬はすべて4番人気以内で3着以内は7番人気までが大半を占める。比較的堅い傾向。重賞はシリウスSと平安Sで4回組まれ、1番人気は1、2、16、1着だった。16着は昨年のシリウスSのゴッドセレクション。3歳で前走JDD2着。古馬がやや手薄で押し出された感もあった。
コーナーまで距離があるコースであり、内外の差はない印象だが、1枠だけが【0-1-1-26】複勝率7.1%と落ちる。ダートの1枠は砂を被るイメージだが、芝より揉まれると辛く、最内枠はアドバンテージにはならない。克服するだけの先行力、ないし下げても盛り返せる末脚が必要だろう。1枠は割引。これは覚えておきたい。
ダートと芝の違いといえば、決め手があげられる。ダートは芝ほど決め手の差が出ない印象だが、比較的ゆったりとした流れになり、かつ最後の急坂でスタミナを問うコースとあって、決め手は大切。上がり1位は【7-2-1-6】勝率43.8%、複勝率62.5%と勝ち切る傾向にある。2~5位は複勝率が高く、芝ほど差がないととれるが、勝率の高さから決め手を活かせる舞台ではある。
前走1700、1800mは位置取りがカギ
上位人気堅実、1枠不利、単勝は決め手をもった馬から。そんなコースの輪郭をつかんだので、次は前走データ、特に距離に注目し、出走予定馬のなかから候補を絞ってみたい。
レースの少ない同距離は【2-0-0-14】勝率、複勝率12.5%。連覇を狙うサンライズホープなどが該当するが、2勝は前走2、3着の好走馬。サンライズホープは同条件の平安S7着。逃げて目標にされた分とはいえ、1.3差は負けすぎかもしれない。
短縮と延長では距離延長にあたる前走1900m未満が【11-12-12-128】勝率6.7%、複勝率21.5%と質量ともに上回る。今年もハヤブサナンデクン、ジュンライトボルトなど候補多数。
距離内訳は主に1700mか1800mになる。ここを比べると1700mが【3-4-3-23】勝率9.1%、複勝率30.3%と確率面でリードし、プロキオンS組には注目したい。1800mは【7-8-9-97】勝率5.8%、複勝率19.8%。出走数が多いから確率が低く出ているだけで、もちろん評価を下げるわけにいかない。今年、上位人気候補に該当馬も多い。
では1700、1800mをまとめて前走位置取りの傾向をみてみよう。前走逃げ【1-0-0-8】勝率、複勝率11.1%、先行【1-5-5-24】勝率2.9%、複勝率31.4%に対し、中団が【6-4-5-46】勝率9.8%、複勝率24.6%と優勢。この舞台の上がり3ハロンデータでも触れたが、前走1700、1800mで脚を溜めながら流れに乗れた馬がここでも末脚を発揮して勝ち切る。先行の複勝率は悪くないので、相手候補に加えつつ、一発狙いは前走中団に委ねても面白い。ゲンパチルシファー(白山大賞典の両にらみ)、アルドーレなどやはりプロキオンS組が浮上する。
なおバーデンヴァイラー、オーヴェルニュなどの短縮組は前走4着以内【1-1-3-14】、5着以下【1-2-0-31】と4着以内が優勢。帝王賞9着オーヴェルニュよりマーキュリーCを勝ったバーデンヴァイラーが候補にあがる。春は重賞初挑戦のアンタレスSで15着と大敗したが、1000m通過1.01.1、ラスト1F13.0と時計を要し、先行勢には辛い流れだった。この経験が次走に活きたともとれる。ハヤブサナンデクンとともに展開のカギを握る存在で、レースの中心になる。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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