【桜花賞】勝ち馬の共通項は「460kg以上」 有力候補は“好相性”サンデー系ら主流血統

坂上明大

桜花賞に強い血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

牝馬クラシック第1戦・桜花賞。現3歳牝馬で重賞2勝以上を挙げた馬が1頭もおらず、今年の牝馬クラシック戦線は大混戦となっています。レース毎に着順が入れ替わっているだけに、適性面や状態面の評価がより重要な一戦となりそうです。本記事では血統面を中心に、桜花賞のレース傾向を整理していきます。

まず紹介したいデータは前走距離別成績。2~3歳GⅠは1600~3000mで行われるため、前哨戦なども1600m以上のレースがハイレベルになりやすく、特に桜花賞までの牝馬路線についてはほぼ例外なくマイル路線が最も強い傾向にあります。阪神JF(今年は京都開催)や、同コースで行われるチューリップ賞などのハイレベルなマイル路線で戦ってきた馬を中心に考えるのが桜花賞予想におけるセオリーではないでしょうか。

前走距離別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<前走距離別成績(過去10年)>
距離延長【1-0-2-48/51】
勝率2.0%/連対率2.0%/複勝率5.9%/単回収率80%/複回収率33%
同距離【9-10-8-89/116】
勝率7.8%/連対率16.4%/複勝率23.3%/単回収率43%/複回収率62%
距離短縮【0-0-0-11/11】
勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%

また、馬体重別成績にも明確な傾向があります。芝1600mというスピードが求められる条件だけに筋肉量が多いことは大きなアドバンテージで、成長スピードという点においても馬体重は重要な指標。特に過去10年の勝ち馬は全10頭が馬体重460kg以上で、過去10年の牝馬三冠レースでも最も勝ち馬の平均馬体重が重いレースとなっています。

馬体重別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<馬体重別成績(過去10年)>
~459kg【0-4-4-94/102】
勝率0.0%/連対率3.9%/複勝率7.8%/単回収率0%/複回収率36%
460kg~【10-6-6-54/76】
勝率13.2%/連対率21.1%/複勝率28.9%/単回収率120%/複回収率69%

血統面では、クラシックレースらしくディープインパクトを中心としたサンデーサイレンス系、キングカメハメハを中心としたKingmambo系という日本の主流系統が中心となっています。ただ、サンデーサイレンス系、特にディープインパクト系は小柄な中長距離馬も多いため、前述の馬体重460kg以上というボーダーはクリアしておきたいところです。

父系別成績(馬体重460kg以上・過去10年),ⒸSPAIA


<父系別成績(馬体重460kg以上・過去10年)>
サンデーサイレンス系【3-6-3-27/39】
勝率7.7%/連対率23.1%/複勝率30.8%/単回収率126%/複回収率86%
Kingmambo系【4-0-1-7/12】
勝率33.3%/連対率33.3%/複勝率41.7%/単回収率251%/複回収率84%

血統解説

・エンブロイダリー
3代母ビワハイジ(1995年阪神3歳牝馬S)に遡る名牝系に属し、母ロッテンマイヤーは2016年クイーンC3着馬。サンデーサイレンス系アドマイヤマーズ産駒の本馬も無駄肉の少ない同牝系らしい馬体で、芝1600~2000mで瞬発力を生かす競馬がベストでしょう。

父アドマイヤマーズも母父クロフネもNHKマイルC優勝馬で、3歳春のマイルGⅠはピッタリの配合形。前走馬体重482kgと馬格に恵まれている点も大きな魅力です。

・エリカエクスプレス
母エンタイスドはCapri(2017年愛ダービー、英セントレジャー)やパッションⅡ(2020年愛オークス3着)、Tower of London(2024年ドバイゴールドC、カラC)などの全きょうだいというスタミナ豊富な一族です。

また、Roberto系エピファネイア産駒の本馬はSadler's Wellsの4×3が特徴的で、同じような配合からはアリストテレス(2020年菊花賞2着)やオーソクレース(2021年菊花賞2着)といった長距離馬が多く出ています。本馬自身も中長距離向きの配合形で、マイル戦なら緩い流れの方が競馬をしやすいでしょう。

・アルマヴェローチェ
母ラクアミは2016年朝日杯FS2着馬モンドキャンノの半姉で、母自身も芝1400~1600mで3勝。Danzig系ハービンジャー産駒の本馬も、晩成傾向ある父の仔としては完成度が高く、前走馬体重484kgと馬格にも恵まれています。

また、桜花賞と相性が良いサンデーサイレンス系ダイワメジャーの血を母父に持つ点も魅力。ベストは1800~2000mでの持続力勝負で、本当に良くなるのは秋以降だと思いますが、現時点でも世代屈指の実力馬であることは間違いありません。


2025年桜花賞・有力馬の血統と評価,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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