【ユニコーンS】順調の強み生かし軸はリメイク ダートと距離に慣れたバトルクライの前進に期待

山崎エリカ

2022年ユニコーンS指数アイキャッチ,ⒸSPAIA

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先行争いが激化しやすいが、前からも押し切れる舞台

ユニコーンSは先行争いが激化し、前がやり合うことが多い。昨年も好発を切り先手を奪おうとしたカレンロマチェンコの内から、プロバーティオが先頭に立ちハイペースとなった。過去10年を見ても平均ペースで流れたのは、ベストウォーリアが勝った2013年のみ。一方、7度も「超」の付くハイペースで決着している。

しかし、2014年コーリンベリー、2019年ワイドファラオと逃げた馬が2度も連対しており、ペースが速くても前から押し切れることも少なくない。この辺りが将来のGⅠ馬とその後の2勝クラス、3勝クラスで頭打ちになる馬が戦う3歳戦らしい。展開上有利になりやすいのは差し、追い込み馬だが、強ければ前からでも押し切れる。今回はそれを踏まえて予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

2022年ユニコーンSPP指数,ⒸSPAIA


【能力値1位 リメイク】
オープンの昇竜S、端午Sと1400mのオープン特別を連勝している馬。特に前々走は前半3F34秒8-後半3F37秒0の超ハイペース。それを5番枠から3番手に付け、3~4角で外を楽な手応えで進出。最後の直線では2番手から先に抜け出したジレトールをラスト1Fで競り落とし、2馬身半差の勝利。かなり強い内容で当時の指数はここでもNO.1タイである。

前走の端午Sは2番枠から五分のスタートを切ったが、外から主張してくる各馬に先に行かせ、ジレトールの直後、好位内目を追走。このため3~4角では包まれる形となったが、同馬の直後をキープし、直線ではジレトールの直後から抜け出す形。ここでもラスト1Fで前を捕らえ勝利した。

前走は前々走で自己最高指数を大きく更新した後の一戦だったこともあり、さすがに指数を下げた。しかし、上がり3Fタイムは最速と上々の内容だった。今回は前走以上の走りを見せられる状態だろう。

問題は初の1600mをこなせるか。ユニコーンSは前がやり合うことが多いが、前走は前を見る形の競馬にも対応。先行争いに加わらなくても走れることがわかった点は大きい。折り合いをつけ、距離克服が期待できそうだ。底力が上の海外遠征組の体調面が万全でなければ、順調にきた強みでリメイクが浮上する。軸馬にはピッタリだ。

【能力値2位 コンバスチョン】
昨年6月の東京ダ1600m新馬戦では、好位直後の外でレースを進め、直線に入るとしっかり伸び続け、ラスト2F12秒5-12秒3で勝利した素質馬。その後の活躍は当然で、全日本2歳優駿2着、例年の水準なら勝利レベルの指数を記録したことは高く評価できる。

前走UAEダービーでは7番枠からまずまずのスタート。そこから速い二の脚で先行馬群の中目に入れ、最終的には好位直後でレースを進めた。しかし、直線では大失速。前哨戦にあたるヒヤシンスSで、ある程度の力を出したところからの海外遠征となり、本来の状態ではなかったのだろう。

UAEダービーが前半4F48秒08-後半4F54秒01の激流となったこともあるが、ヒヤシンスS6着だったクラウンプライドがコンバスチョン直後の外から早めに動き、優勝したことをみると、同馬の能力負けとは考えにくい。

今年の3歳ダート路線で近走好成績を残している馬たちの多くは、2歳秋の時点でドライスタウト、コンバスチョン、セキフウ、クラウンプライドあたりと対戦し負けている馬が多い。比較すると近走好成績を残している馬たちより、海外遠征組の方が底力は上と判断できる。

もちろん競走馬は状態が大事。あれだけ強いドライスタウトが休養明けで本調子を欠けば、あっさりと大敗するのが競馬だ。今回のコンバスチョンは自身の状態が全て。能力を出せる状態なら、ここは勝利して当然。今回は100点とまではいかないだろうが、能力を出せる状態には戻っていそう。当然有力と見るべきだ。

【能力値3位 ハセドン】
デビュー2戦目からダートに変わり、3戦3勝と無敗を継続中。前走は同レースの前哨戦のような位置付けの青竜Sを制した。

しかし、前走は淀みない流れを3番枠から出遅れ、そこから無理せず最後方でレースを進めたもの。4角で動き内目から中目を通して、直線で大外に出されると、一頭だけ違う脚色で伸びて勝利。ただ、末脚勝負タイプは先週のエプソムCで1番人気に支持されたジャスティンカフェのように、展開や馬場状態に左右されることが多い。

前走で超後半型のレースをしているので、前半で置かれ気味になり、前から離されやすくなる。そこを無理に前に付いていけば、脚がたまらず末脚が不発に終わる可能性が高まる。前走は稍重で高速ダートだったが、今回は良馬場で前走より馬場が重くなる可能性が高い。勝ちに行った時はより消耗するだろう。さらに今回は勝ちを意識した場合、ある程度の位置を取りに行くか、後方から外に出していくかの競馬になる1番枠だけに乗り難しい。

【能力値3位 ヴァルツァーシャル】
デビュー2戦目のオキザリス賞は勝ち馬ドライスタウトから大きく離された3着。しかし、同レースは2番枠から後方に下げる競馬をし、4角で外に出されると1頭だけ目立つ脚色で伸びるなど、光るものを見せていた。

前々走の1勝クラスでは16番枠からまずまずのスタート切り、中団の外目を追走。4角では前を行く馬にかなり離されていたが、豪快な差し切りを決めた。

前々走で記録した指数は、古馬3勝クラスで上位入線レベルのもの。かなり力をつけている。同様の指数で走れれば、例年のユニコーンSなら3着に入ることは十分可能だ。前走の青竜Sでも4着。前々走でかなり力を出しており、疲れが残って凡退ということも考えられたが、連続好走したことは高く評価しなければならない。追い込み馬なので展開次第のところはあるが、チャンスは十分にありそうだ。

【能力値5位 ペイシャエス】
前々走の中山ダ1800mの1勝クラスを5馬身差で圧勝し、ヴァルツァーシャルの前々走より1pt高い指数を記録した馬。前々走は11番枠からスタートし、楽に逃げ馬の外2番手まで上がっていく形。前半はゆったりとした流れだったが、向正面では外からスマイルオンミーが捲って来たため一気にペースアップ。先行馬には苦しい展開になったが、4角で手応えを失って下がる同馬に対し、逃げ馬に食らいつき直線序盤で早々に先頭に立った。ラスト1Fで突き抜けた内容はとても強かった。

前走の青竜Sでは8番枠から五分のスタートを切ったが、芝地点では外のグットディールの方が速く、押して押してダートに変わったところで何とか2番手外まで持って行く形。同レースは最後方からハセドンの追い込みが届いたように、淀みない流れで最後に甘さを見せて6着に敗れた。しかし、出脚が悪かったのは前々走で自己最高指数を記録したことも影響したはず。

今回も前走同様に芝スタート。オーバーペースの競馬になる危険性もあるが、しぶとい馬でそれでも見せ場は作れそう。また今回は前走から前進が期待でき、前半が極端に速いペースにならなければ、ここも上位争いに加わってくる可能性が高い。警戒が必要な1頭だ。

穴馬はダートと距離に慣れたバトルクライ

4走前の初ダートでは2着に10馬身差をつけての圧勝。記録した指数は古馬2勝クラスレベルを上回るもので、高いダート適性と能力を見せた。続くダートの1勝クラスも順当に突破した。

前々走の端午Sは1Fの距離延長。8番枠から好発を切ったものの、芝地点では二の脚が遅く、挟まれるようにして位置を下げ、中団よりやや後方からの競馬となった。リメイクの直後からの競馬となり3~4角で包まれ、4角手前では前と距離を詰め過ぎてクビを上げるチグハグな競馬。直線で外に出されて進路を確保してからは伸びてはいたが、前が止まらない流れではさすがに厳しく6着に敗れた。

前走の青竜Sも芝スタートだったこともあり、スタート直後に挟まれ、中団外目からの競馬になった。同レースはペースが速くなったこともあり、3着に善戦。ただ、けっしてスムーズな競馬だったとは言えないなかで3着まできたあたりは能力の高さだろう。

初ダート戦で見せた指数の高さから、能力の天井は相当なところにある可能性を感じる。前走で距離延長にも対応できており、今回は距離にも慣れが見込め、さらなる上昇が期待できる。一気に勢力図を変える可能性のある馬だ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)リメイクの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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