【ヴィクトリアマイル】純白の桜の女王ソダシが輝き放つ! ベスト舞台で完璧なレース運び

勝木淳

2022年ヴィクトリアマイル回顧,ⒸSPAIA

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ソダシ、美しく力強い勝利

20年勝ち馬アーモンドアイ、21年勝ち馬グランアレグリアはかつての桜の女王、かつ長く日本競馬界の中心にいた主役たちだ。この流れを継ぐソダシやデアリングタクトがここで顔をそろえるのは必然だった。ソダシの勝利で桜花賞馬のヴィクトリアマイル制覇は3年連続6頭目。4歳時の勝利となると、ブエナビスタ、アパパネにつぐ3頭目。桜から1年1カ月後にあたるマイルGⅠはこれ以上ない舞台。ここにたどり着くまではソダシにとって中身の濃い年月だった。

桜花賞勝利後のソダシは距離の壁にぶち当たった。クロフネ産駒らしく高次元のスピード比べ、持続力勝負には強いが、前半で息を抜き、後半で加速する、いわゆる緩急が求められる競馬に苦労した。その過程で競馬に対してイヤな気持ちを抱き、精神面の難しさも見せる。その後はダート挑戦など試行錯誤、とにかくソダシが輝きを取り戻すのをファンは待った。

契機は年明け初戦フェブラリーS。父も走った東京ダート1600m。ソダシがもっとも力を発揮できるスキのない持続力勝負になり3着。これがヴィクトリアマイルにつながった。東京1600mは芝もダートもソダシの強みを存分に発揮できる舞台ゆえに、2着ファインルージュに2馬身差の完勝。美しくも力強い、華のある勝利だった。

後半800m45.9の持続力勝負

ハナ候補ローザノワールはマイル戦出走が昨年5月谷川岳S以来の中距離志向。スタートダッシュで劣りながらも、必死に先手を主張。ソダシやレシステンシアのローザノワールを待つ構えにも助けられ、先手を奪う。この場面を見ても明らかにスローペース。前半800mは12.5-10.8-11.4-11.6、46.3。ローザノワールが先頭に立つ場面こそペースがあがったが、すぐに流れは落ち着いた。土曜メイン京王杯SCが良馬場だったように驚異的な回復力を見せた東京芝、このペースで後方待機勢はほぼノーチャンスになったといっていい。

ソダシはインの4番手。無理に引っ張る必要がない落ち込みの少ない流れのなか、理想的なポジションだった。さらにこの位置を4コーナーまでキープできるほどソダシの闘志は戻っていた。後半800mは11.7-11.1-11.3-11.8、45.9。ローザノワールもこのまま瞬発力勝負では分が悪いと、4コーナーからペースをあげた。マイル適性で劣る馬にとって、ゆったりする区間がないままのペースアップ。上手くギアチェンジできなかった。ソダシはスタート直後200mをのぞくすべて11秒台というこの上ない流れと位置取りを最大限に生かした。

不利があった上位人気馬たち

対照的だったのは1番人気12着のレイパパレ。某芸人の呪いかどうかは置いておくとして、ソダシが好む高次元の持続力勝負のなか、勝負所でギアチェンジしきれなかった。とはいえ、スタート直後につまずき、落馬寸前の不利がありながらも、果敢に先行。スピードがないわけではない。最初のアクシデントが響いたか、3コーナー付近まで外目で首を激しく振りリズムを崩す走り。ちょっと力を出し切れなかった。大阪杯1、2着からも持続力勝負は望むところ。決して合わないことはないが、マイル戦は中距離戦ほど息を抜くところがない。慣れない流れに戸惑った。

2着ファインルージュも前半から積極的に行き、ソダシの背後をとった。前後半800m46.3-45.9という流れでは勝利を目指すにはギリギリのポジションであり、願ってもない形だったのではないか。しかし、残り400mで前を行くクリノプレミアムが外へ動き、その際に接触、つまずいてしまった。一旦は進路を失いつつも、切りかえて伸びてきた。かなり充実したデキにあっただけに悔しい。ソダシとは着差ほどに力の開きはないのではないか。

3着レシステンシアは昨年と同じローテ、高松宮記念で結果が出なかったこともあり、人気を一気に落としていた。それだけに番手から競馬し、最後まで2着争いに食い下がったのは収穫だった。東京マイルでここまで踏ん張れれば、ギリギリだがマイル戦もいける。元々、若い頃にスピードが勝ちすぎたために短距離路線へ進んだ経緯もあり、戦歴ほどスプリンタータイプでもない。この3着で今後の選択肢は広がった。

5着ソングラインも3コーナー付近でつまずく不利があった。流れを考えれば、馬群のなかで易々と引けない。あそこでポジションを下げてしまっては、最後の直線で勝負に加われない。そういった厳しい状況下でのできごとだった。不利を踏まえれば最後、ファンルージュと併せる形に持ち込み、しっかり伸びたのはさすがだ。

牝馬三冠デアリングタクトは6着。長期休養明けながら、道中はファインルージュと同じソダシの背後をとり、競馬に参加できた。最後は上位勢に末脚で劣ったのは仕方なし。まずは戦列復帰という目標は達成できた。

2022年ヴィクトリアマイル回顧展開,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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