【皐月賞】GⅠからGⅠへ 2戦2勝の直行ローテで先輩たちに続け、キラーアビリティ

門田光生

皐月賞の前走着順別成績(過去15年),ⒸSPAIA

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「最も速い馬が勝つ」

2022年4月17日に中山競馬場で行われる第82回皐月賞。牡馬三冠路線の初戦であるこのレースは「最も速い馬が勝つ」といわれるが、過去15年で逃げ、先行馬が勝ったのは5回。残る10回は差し馬が勝利している。当然ながら「テンに速い馬が勝つ」わけではないようだ。

皐月賞を逃げ切ったといえばミホノブルボン。「坂路の申し子」と呼ばれ、距離不安説がささやかれていた菊花賞でも厳しい展開をしのいで僅差の2着。芯の強さを感じさせる馬であった。成績を振り返ってみると、逃げる競馬をしたのはスプリングS(4戦目)が初めて。「逃げ馬」のイメージが強かっただけに、思い込みは恐ろしいとあらためて思った。

そんな皐月賞だが、どのような傾向があるのか。先週の桜花賞と同様、過去15年のデータを基にして検証していきたい。

皐月賞出走馬の所属,ⒸSPAIA


☆所属
美浦9連対(5勝)、栗東21連対(10勝)。出走頭数は栗東所属馬が2倍ほど多いので、勝率、連対率で差はない。近5年では栗東所属馬が4勝を挙げていてやや優勢。

前走着順と着差,ⒸSPAIA


☆前走着順と着差
前走1着馬が20連対(12勝)。勝率、連対率ともに前走2着以下と比べて抜けた数字となっている。前走2着馬は2勝。前走で連対を外して皐月賞を勝ったのは、2008年のキャプテントゥーレ(前走4着)だけ。

前走1着からの勝ち馬12頭について前走の着差を掘り下げると、このうち9頭が前走を0.1~2秒差で勝った馬。前走0.6秒以上で楽勝した5頭はすべて連対を外している。

前走を0.5秒差以上で負けた馬は65頭いて、連対したのは2007年のサンツェッペリン(0.7秒差)だけ。キャプテントゥーレにせよ、サンツェッペリンにせよ10年以上前のデータになるので、近年の傾向からは前走で連対、負けても0.5秒差以内というのは必須のようである。

前走人気,ⒸSPAIA


☆前走人気
前走で1番人気に支持されていた馬は18連対(9勝)。これも前走着順と同様、そうでない組と比べて勝率、連対率とも倍以上の数字。逆に前走が8番人気以下だった35頭はすべて4着以下となっている。

皐月賞出走馬のキャリア,ⒸSPAIA


☆キャリア
勝ち馬が出ているのはキャリア3戦から7戦まで。2着馬も15頭中、14頭がこれに該当(例外は2008年サンツェッペリンの8戦)。ここ5年だと、馬券に絡んだ15頭すべてがキャリア3~5戦に該当している。

皐月賞出走馬の主な前走(過去15年),ⒸSPAIA
皐月賞出走馬の主な前走(過去5年),ⒸSPAIA


☆前走
皐月賞トライアルは弥生賞、スプリングS、若葉Sの3つだが、ほかにも共同通信杯や毎日杯などのステップレースが存在。それに加えて、最近では朝日杯FSやホープフルSから直接挑む馬も出てきた。

最も多く勝ち馬が出ているのは共同通信杯の5勝。連対馬が多いのは弥生賞の9連対(2勝)だが、勝率3%強では物足りない。スプリングSは4勝(6連対)で、連対率9.2%は主要レースの中では低い。毎日杯組は16頭いて、馬券に絡んだのは2017年のアルアイン(1着)だけ。これも信頼度はもうひとつ。

近5年では、GⅠに昇格したホープフルS組が2戦2勝。朝日杯FS組も連対しており、GⅠからGⅠへというのが近年のトレンドのようだ。近15年で最多勝の共同通信杯組だが、ここ5年だと【1-0-2-8】で、強調するほどの成績となっていない。

皐月賞におけるその他のデータ,ⒸSPAIA


☆その他
そのほかで気になったデータを挙げていく。まず誕生月。桜花賞では特に気にならなかったが、皐月賞は勝ち馬15頭中、14頭が3~5月生まれ。残る1頭は2月生まれで、そのほかの月に生まれた馬から勝ち馬は出ていない。また、前走で馬体重440キロ以下だった馬、前走が条件戦だった馬はすべて馬券圏外。

最後に、セールにて税込6000万円以上で落札された馬21頭のうち、最高着順は3着(3頭)。連対した馬はいない。

「GⅠからGⅠへ」がトレンドに

皐月賞のデータをまとめてみよう。まず好走確率が上がるのはA「前走を0.1~2秒差で勝った」B「前走1番人気」C「キャリア3~5戦」D「前走GⅠ」E「3~5月生まれ」。逆に好走確率が下がってしまうのはF「前走で連対を外した」G「前走0.5秒差以上で負けた」。

連対した例がないのはH「前走0.6秒差以上で勝った」I「前走8番人気以下」J「キャリア9戦以上」K「前走馬体重440キロ以下」L「前走が条件戦」M「セールにて税込6000万円以上で落札された」。

個人的に気になるのは、M「セールにて税込6000万円以上で落札された」というデータ。上記でも少し触れたが、21頭と十分なサンプルがあるにもかかわらず最高着順が3着で、連対馬は出ていない。

当然ながら良血が多く、皐月賞で上位人気していた馬も少なくない。今回でいえば、アスクビクターモア、ジャスティンパレス、ダノンベルーガ、デシエルト、サトノヘリオス。いずれも力のある馬だが、データ的に狙いづらい。ダービーで巻き返した例はあるので、そこで改めて期待したい。

今回プラスデータを最も多く持つのは、キラーアビリティ、ジャスティンパレス、ドウデュースの3頭だが、ジャスティンパレスは価格のデータで消えたので、キラーアビリティかドウデュースが今回の本命候補となる。

2戦2勝のホープフルS組で、その2頭と同じくホープフルS1着馬のキラーアビリティ。このパターンは勝率100%ということで本命視する。ドウデュースは2着が多い弥生賞組だから、連の筆頭候補でちょうどいい。

3番手はプラスデータ2つのオニャンコポン。京成杯組はここ15年で【0-0-2-5】と連対馬が出ていないが、父エイシンフラッシュも2010年に京成杯から皐月賞3着、そしてダービー1着へつなげた。まずは皐月賞で父を超えられるかに注目。

ジオグリフはマイナスデータがないし、昨年の1着馬エフフォーリアを筆頭に、近15年最多勝の共同通信杯組というのが強調点。

最後はイクイノックス。東京スポーツ杯2歳Sから直接挑むのは2017年のキングズラッシュ(15着)しかいないが、ここ数年のGⅠはどれだけ間隔が開いてもきっちり調整してくるケースが目立つ。今後の指標になるという意味合いからも注目してみたい。

◎キラーアビリティ
◯ドウデュース
▲オニャンコポン
△ジオグリフ
×イクイノックス

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて園田・姫路競馬を中心に予想・記事を執筆中。
春はいろいろな始まりの季節ですが、税金ラッシュの始まりでもあります。通知書がくるたびにため息をついております。

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