【共同通信杯】ジオグリフより前でレースができるアサヒが最有力 穴馬は前に行くとしぶといサンストックトン

山崎エリカ

2022年共同通信杯_PP指数,ⒸSPAIA

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皐月賞前哨戦の意味合いを持つレース

共同通信杯は皐月賞への優先出走権こそないが、前哨戦としての意味合いを持つレースだ。過去10年ではゴールドシップ(2012年)、イスラボニータ(2014年)、リアルスティール(2015年)、ディーマジェスティ(2016年)、ダノンキングリー(2019年)、エフフォーリア(2021年)がこのレースを勝ち、後の皐月賞で3着以内に好走している。

また、このレースの2着馬ディープブリランテ(2012年)は、その後ダービー馬となり、同じく2着のドゥラメンテ(2015年)は、皐月賞、ダービーを制し2冠馬となった。昨年のエフフォーリアのように、近年は弥生賞やスプリングSを使わずに、皐月賞へ直行する馬も多くなっているだけに、弥生賞やスプリングS以上にクラシックに繋がるレースと言っても良いだろう。

なぜ、本番に繋がるのかは、連載の『2歳馬ジャッジ』を読んでくれている方ならすぐに推測がつくだろう。前週のきさらぎ賞やエルフィンS、前日のクイーンCとの勢力分散の影響もあり、例年、少頭数で負担の少ない(消耗度の低い)レースになるのが理由。きさらぎ賞よりも本番に繋がるのは、出走馬の能力の違いもあるが、コーナーが緩くて距離が長い東京芝Dコース使用することも理由のひとつだ。

同レースは良馬場で4F通過49秒台後半の「超」のつくスローペースになることもあり、逆にハイペースになったことは過去10年でゼロ。つまり、一昨年のこのレースでビターエンダーが逃げて2着に好走したように、基本的には逃げ、先行馬が有利。先週の東京新聞杯のように、先行争いが激しくなればペースが上がる可能性もあるが、何が何でも逃げたい馬が不在のここは、例年の傾向どおり逃げ、先行馬が有利と見て、予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

2022年共同通信杯_PP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 ジオグリフ】
前々走の札幌2歳Sでは、4馬身差の圧勝。イクイノックスが優勝した東京スポーツ杯2歳S、キラーアビリティが優勝したホープフルSに並ぶ、世代NO.1の指数を記録した。ただし、前々走は連続開催の札幌最終週の時計の掛かる馬場、トップキャストがオーバーペースで逃げた中、出遅れて最後方からレースを進め、前がバテ始めた3角外から捲ったもの。展開に恵まれての結果だけに、そこまで高い評価はできない。

前走の朝日杯フューチュリティSでは5着。ここでもやや出負け。距離が長いところで後方からレースをした直後の一戦だったこともあり、促しつつも進んで行かず、後方2番手を追走。3角から外に出しながら進出開始したものの、4角入口で内の馬に大外に弾かれるロスもあった。ペースが速かったこともあり、バテた馬を交わして前との差を詰めたものの、5着が精一杯。4角のロスもあったが、突き詰めると、序盤で置かれて位置取りが悪くなってしまったのが敗因。

今回は札幌2歳Sと同距離になるだけに、出遅れても勝負圏内の位置は取れると見ているが、このレースでは二冠馬ドゥラメンテが取りこぼしたように、差し馬苦戦の舞台。どちらかというとここよりも距離が長く、ペースも上がる皐月賞で狙いたいが、元々の能力から上位争いに加わってくるとは見ている。

【能力値2位 ダノンスコーピオン】
前々走の萩Sでは後のホープフルS覇者キラーアビリティをクビ差下して勝利。そのレースは3角手前から進出開始、ラスト1F手前で2着が先頭に立って終いが甘くなったところを外から差したもの。キラーアビリティをマークする形の競馬が上手くいっての勝利だった。

前走の朝日杯フューチュリティSでも、前々走からさらに前進を見せ3着と好走。まずまずのスタートを切って行きたがったが、コントロールに苦労しながらも位置を下げ、中団馬群で脚をタメた。最後の直線では進路を探しながら、馬場の良い外に出す競馬で3着。直線での進路取りがスムーズではなかったが、外差し有利の決着だったことを考えると、序盤で行かせなかった鞍上の好判断が好走に繋がったと見ている。

今回は自己最高指数を大幅に更新した後の一戦になるだけに、ここにピークを持ってくるのは難しいと見ている。実際、この中間の追い切りに騎乗した川田騎手も「いい頃の動きができていない」という辛口のコメント。今回は前走から相手弱化の一戦、ジオグリフやアサヒよりも前でレースを運べるのは好材料だが、人気ほどの信頼はできない。

【能力値3位 ビーアストニッシド】
前々走の京都2歳Sでは、未勝利を勝ったばかりながら、内枠から好発を決めて逃げ、いきなり2着と好走。序盤で外から同馬に絡んでいったグッドフェイスは最下位、3列目の内でレースを進めハナ差の3着だったフィデルは次走ホープフルSでも4着に善戦しているように、11月の阪神芝2000mは先行馬に厳しい馬場だったが、しぶとい粘りを見せた。

前走のシンザン記念でも最内枠を利して好位の内々でレースを進め4着。同レース当日は内から2頭分が伸びる馬場だったにせよ、向正面から4角まで行きたがって折り合いを欠きながらも、4着に粘ったのはスタミナがあればこそ。同馬は新馬戦の時から折り合いの難しさを見せているが、前走から距離が長くなり、労せず逃げ、先行できる点は好ましい。

【能力値4位 アサヒ】
6月の新馬戦は好位の外でレースを進め、向正面で位置を押し上げ3角では2列目。最後の直線では一旦先頭に並びかけたがジオグリフの2着に敗れた。その次走では、出遅れて最後方からあまりに強引な捲りを見せ、新馬戦で3着に下したアスクビクターモアに先着を許した。しかし、3戦目の未勝利戦は相手にも恵まれ、順当に勝利。レースを順調に使われて上昇し、前走の東京スポーツ杯2歳Sでは2着と好走した。

前走は内枠から五分のスタートを切り、そこから様子を見ながら促して、最終的に好位の内々を追走。前半4F48秒6の超スローペースだったため、アルナシームが折り合いを欠き向正面で一気に位置を押し上げペースアップ。その結果、差し、追い込み有利の決着になったが、その後のシンザン記念やきさらぎ賞の上位馬を相手に好走した点は評価できる。

素質面ではジオグリフの方が明確に上だが、同馬はスタートと二の脚が甘く、ここでも後方からになる公算が高い。

それに対してアサヒはジオグリフよりもスタートと二の脚が速く、より前でレースを運べる点は好材料。またテンが速く、前に行けるダノンスコーピオンが、ここがピークではないとなると、この馬が最有力に浮上する。勝ち切れない面があるが、内枠の今回は前走同様、3~4角の内々で距離損の少ないレースができるのも好ましく、ここは中心視してみたい。

【能力値5位 アケルナルスター】
デビュー2戦目の未勝利戦は外枠からやや出遅れ、押っつけても進まず最後方からの競馬。道中も最後方付近を追走、4角で大外を回って直線で追い出されるとエンジン点火。前半5F62秒2-後半5F59秒8とペースが遅く、上がり勝負となった中で、最後までしっかり伸びて差し切った。

前走のホープフルSは、内枠からまずまずのスタートだったが、ここでも促してもあまり進んで行かす後方に下がる形。道中も後方2番手を追走しながら内をキープ。直線序盤では馬群の中で少し反応が悪かったが、ラスト1Fで進路が開き追い出されると、一気に4着争いに加わり、わずかに敗れて7着。

デビューから3戦連続で上がり3Fタイム最速を記録。素質は高いが、ジオグリフよりもスタートや二の脚が遅い。陣営のコメントによると、臆病な気性で前半は馬群の中に入っていけず、どうしても後方からの競馬になってしまうらしい。ここでは末脚NO.1、ハマった時の爆発力は大きく、どこかで穴を開けそうだが、位置取りが悪くなるリスクを抱えている以上は中心視できない。

穴馬は前に行くとしぶといサンストックトン

サンストックトンは新馬戦では後の百日草特別の2着馬ホウオウプレミアの2着、次走の未勝利戦では2番手でレースを進め2着。このレースでは最後の直線で先頭に立ったところで、同馬をマークしていたレヴァンジルが外から上がって来て、2頭のマッチレースとなった。サンストックトンはゴール手前でレヴァンジルに差されたものの、3着馬に8馬身差をつけての2着。記録した指数は1勝クラス勝ちレベルのものだった。

前々走の未勝利戦は内の馬のテンが速く、中団外からの競馬。自分の型の競馬ができずに指数をダウンさせたが、相手が弱かったこともあり、勝つことができた。また、前走の京成杯は内から寄られ、少しリズムを崩して位置取りが悪くなり、道中は後方の外を追走。終始外々を回るロスが生じたため、本来の能力を出し切れずに7着に敗れた。

しかし、今回のメンバーなら内枠を利して2列目の内を狙っていけるだろう。同馬はトップクラスが相手となると決め手不足なので、前に行って持久力を生かしてこその馬。今年の共同通信杯が例年どおりのスローペースなら穴を開けるのは、前々内々でレースを運べるこのタイプだろう。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ジオグリフの前走指数「-11」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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