【阪神C】外伸び馬場が演出した好勝負! 来年注目は内を伸びた2着ホウオウアマゾン

勝木淳

2021年阪神Cのレース展開,ⒸSPAIA

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時計を要するハイレベル戦

関西圏最後の重賞・阪神Cは芝1400m。スプリントでもなく、マイルでもなく、そのどちらからも転戦、そこに1400m巧者が相まみえる難解さに例年頭を悩ませる。1着賞金6700万円はGⅠを除くマイル以下の重賞では最高賞金額。この秋、思うような結果を残せなかった馬たちにとって、これ以上ない舞台だ。今年もマイルCS、スプリンターズSほか様々な臨戦過程から出走馬が集結。その力量を横の比較で判断するのは困難を極めた。

ハイレベルな組み合わせが多い阪神Cは締まった流れになりやすく、前後半600mは19年33.9-34.2、20年34.0-34.3、ともに1分19秒台で決着。前半も早いが、後半も早く、総合的なスピードが求められた。今年の前後半600mは34.3-35.0とやや後半時計を要し、決着タイムは1.20.3だった。

しかし、これは今年、阪神開催12週目で外有利な馬場状態だったことが大きく関わる。勝ったグレナディアガーズのように4コーナーから思い切って馬場の外目へ持ち出さないといけなかった。そのため距離ロスする分、後半、時計がかかった。それを差し引けば、今年も阪神Cらしいレベルの高い決着だったといえる。

1400mで折り合ったグレナディアガーズ

レースはファストフォース、ダイメイフジで前の隊列が決まりかけたところに、スタートで後手を踏んだラウダシオンが強引に先行、ファストフォースは息を入れにくくかった。ラウダシオンの動きで先行集団はかき回された形になり、思わぬ大敗を喫した馬も多かったが、なかにはそもそも1400mだと忙しい馬も多かったので、見直しは必要だろう。ルークズネストは1400mのファルコンS逃げ切り勝ちこそあるが、この距離での先行は合わないようにみえた。

勝ったグレナディアガーズは1年前の朝日杯FS以来の勝利。今年はマイル戦で折り合いに苦労する場面が目立ち、前走マイルCSでも早め先頭で見せ場を作るも、最後の直線では伸びず13着大敗と前半のロスが響いた結果だった。

フランケル産駒特有のあり余る前進気勢を1400mのタイトな流れで相殺した形。これまで以上に控え、かつリズムよく前半を乗り切り、脚を貯めることに成功した。先行集団の早めの動きにも動じず、勝負所でひと呼吸置いて進出、馬場の外目に導くという手順はC.デムーロ騎手の好プレー。兄のちょっと強引な仕掛けも助かった。この開催、C.デムーロ騎手は阪神の芝を完全把握。グレナディアガーズはその集大成のようだった。

とはいえ、この好走は外が伸び、最後の1ハロン12.2と時計を要する馬場だったこともアシストした形。朝日杯FS以来の勝利だけに、適度に力のいる馬場が理想。マイル路線にしろ、スプリント路線にしろ、来年はスピード優先の馬場できれいに折り合えるかどうかにかかっている。

内を伸びたホウオウアマゾン、そしてセイウンコウセイ

2着はホウオウアマゾンで3歳牡馬のワンツー。牝馬に押され気味な状況が続く中、3歳世代は短距離も中距離も牡馬の層が厚い。ホウオウアマゾンもグレナディアガーズと同じく阪神マイルの重賞勝ち馬。そのアーリントンCは2番手から抜け出し。この秋は阪神ばかりに出走、スワンS3着、マイルCS5着と阪神巧者だ。

ただ、ここ2戦は逃げて善戦したように前に行って粘り込むタイプだったが、今回は4コーナー5番手。同位置にいたダノンファンタジーが外へ行ったのに対し、こちらは状態の悪い内側から抜け出し、2着。レース内容の進境は目覚ましく、来年の阪急杯あたり、面白いのではないか。そして坂井瑠星騎手の進化も止まらない。

3着ダノンファンタジーは正攻法。昨年の覇者で前走スワンSと同舞台。そのときよりも早めの競馬。流れを考えれば、ちょっと厳しかった。内のホウオウアマゾンにも差されたあたり、続戦でパフォーマンスを落とした可能性もある。

6着セイウンコウセイは42戦目のここがラストラン。勝負所で故障したベストアクターのすぐ内側にいて、大きな不利を受けてしまった。それでも最内からじわじわと伸びて6着。GⅠ馬の意地を見た気がする。道悪の高松宮記念で力強く抜け出したシーンと重なる。この秋、GⅠ馬の引退が相次ぎ、ひとつの時代の節目を感じさせる。ターフへの別れの告げ方はそれぞれだが、馬場の悪い内側を伸びたラストはセイウンコウセイらしかった。

2021年阪神Cのレース結果,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2005-2009 00年代後半戦』(星海社新書)。

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