【チャンピオンズC】芝レース経験馬は未勝利、過去連覇もなし! チュウワウィザードやソダシが挑む秋のダート王決定戦の歴史

緒方きしん

チャンピオンズC過去5年の戦績,ⒸSPAIA

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白毛馬ソダシがダートに初挑戦

ジャパンCは、コントレイルが勝利。レース後に福永騎手の流した涙が印象的な、良い一戦だった。コントレイルは有終の美を飾り、種牡馬としての第二の活躍に向けて弾みをつけた。波乱となったエリザベス女王杯から一転して、マイルCS・ジャパンCは1番人気馬が勝利したことになる。

今週はチャンピオンズC。前年度覇者チュウワウィザード、今年のフェブラリーS勝ち馬カフェファラオ、今年の帝王賞勝ち馬テーオーケインズなど、今まさに勢いにのるダートの実力派がズラリと揃った。さらには阪神JF・桜花賞を制している白毛馬ソダシも参戦。こちらは未知数である初ダートの走りに注目が集まる。

2014年にジャパンCダートからチャンピオンズCに名前を変更。ジャパンCダート時代にはクロフネやカネヒキリ、ヴァーミリアンらが、チャンピオンズCになってからはホッコータルマエやゴールドドリームらが勝利しており、まさに秋冬のダート王者を決める一戦と言える。今回は、チャンピオンズCの歴史を振り返る。

1番人気は大崩れしない傾向

チャンピオンズC過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA



ここ5年で1番人気は1勝。唯一人気に応えたのは、2018年のルヴァンスレーヴ。当時3歳だったが、その勢いと実力が評価され、単勝1.9倍という圧倒的な人気を集めた。一方で、昨年1.4倍とさらなる人気を集めたクリソベリルは4着に敗れ、国内初の黒星を喫している。他の3年間は、それぞれ1番人気馬が2着と、大崩れはしていない。

2017年は8番人気ゴールドドリーム→1番人気テイエムジンソク→9番人気コパノリッキーという、字面からすればいかにも高配当になりそうな決着だったが、実際は8番人気が13.0倍、9番人気が13.2倍と人気が割れていたレースだったため、三連単は1584.9倍という"15万馬券"に収まっている。

過去には1番人気コパノリッキーが7着に敗れ、牝馬のサンビスタ(12番人気、66.4倍)が勝利した2015年のような例もある。かつてジャパンCダート時代には5番人気イーグルカフェ・13番人気リージェントブラフの決着で馬連配当が600倍オーバーだった2002年や、1着1番人気カネヒキリに続き2着11番人気シーキングザダイヤ・3着13番人気スターキングマンが食い込み三連単が3717.9倍となった2005年など波乱もあった、秋のダートの大一番。今年は人気で決着するのか、波乱の時代に戻るのか──。

芝レース経験馬はチャンピオンズC未勝利

今年は何と言っても白毛馬ソダシの参戦に注目が集まる。注目は初ダートへの対応力だろう。血統や走りからダートへのポテンシャルを感じさせつつも、やはり芝からダートへ変わるというのはハードルが高いもの。春のダートGⅠフェブラリーSの場合、芝レースとの縁がやや深い印象はある。2019年に安田記念勝ち馬モズアスコットが勝利したことが記憶に新しく、今年エアスピネルの猛追を振り切って勝利したカフェファラオも夏には函館記念に参戦している。

しかしチャンピオンズCは、そうではない。これまでチャンピオンズCを制した8頭は、いずれも芝競走は未経験という生粋のダート馬。クリソベリルもルヴァンスレーヴもホッコータルマエも、デビューから引退まで徹頭徹尾ダートにこだわった馬だった。

もちろん、ジャパンCダート時代には、芝レースを走った経験のある馬がジャパンCダートを制したケースは少なくない。たとえばジャパンCダート最後の王者であるベルシャザールは、2歳時にはホープフルSを制し、ダービーでもオルフェーヴルの3着となった実力派。2007年覇者のヴァーミリアンはラジオたんぱ杯2歳Sを制しているし、2002年覇者のイーグルカフェはNHKマイルCを制している。

そして何より忘れてはならないのが、ソダシの父であるクロフネ。アグネスタキオンやジャングルポケットと同期のクロフネは、NHKマイルCや毎日杯を制覇した芝の実績馬だった。ダービーでも5着に食い込み、天皇賞・秋への出走を予定していたクロフネだったが、急遽参戦を表明したアグネスデジタルに外国産馬の出走枠を奪われ、予定外のダート参戦をすることになる。

その方向転換が今でも語り草となっている武蔵野Sでの圧勝劇へと繋がった。さらにその次走ジャパンCダートでも快勝したクロフネは、怪我により引退したが、種牡馬としても活躍を収めた。まさに、芝馬としてもダート馬としても、さらには種牡馬としても、高いポテンシャルを持つ名馬だった。

過去の傾向を破るのはどの馬か

上述の通り、芝→ダートの転換で成功した名馬は、少なくない。ただクロフネにせよベルシャザール・ヴァーミリアンなどにせよ、ジャパンCダート前にはしっかりとダートに慣れていることは見逃せない。ダート戦で実力を発揮できるかは、適性の高さだけではなく後天的な「慣れ」も左右する。ソダシがいきなりチャンピオンズCで好走できるかは、ソダシ自身の持つダート適性だけではなく、そうした経験値も影響してくる。ソダシが飛び越えなくてはいけないハードルは、決して少なくない。それだけ、意欲的な挑戦であることを改めて念頭に置きたい。

また、連覇を狙って挑むチュウワウィザードはというと、こちらも逆風となるデータがある。ジャパンCダートからチャンピオンズCに名称が変更されてから、かれこれ8年目になるが、その間、連覇を達成した馬はいないのだ。2019年・2020年は2年とも2着ゴールドドリーム、3着インティという結果だったが、2年連続で勝利した馬はまだいない。ホッコータルマエやサウンドトゥルー、クリソベリルといった馬が連覇を狙ったが、馬券圏内にすら食い込めずに敗れた。

今年は地方馬カジノフォンテンや、ベテラン・エアスピネルの参戦など、注目したいポイントが目白押しのチャンピオンズCになる。地方馬が勝利しても、7歳以上のベテランが勝利しても、チャンピオンズC初の記録となる。今年は何かしらの「レース史上初」が達成される予感もある。結局は前例を打ち破ってこその名馬とも言える。 各馬の魅力とポテンシャルが十分に発揮される、好レースとなることに期待したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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