【函館記念】「血と騎手」でバイオスパーク 東大HCが函館芝2000mを徹底検証

東大ホースメンクラブ

函館芝2000コース図,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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コース紹介

今週は函館芝2000mを舞台に、サマー2000シリーズ第2戦・GⅢ函館記念が行われる。今年のフェブラリーS覇者・カフェファラオが電撃参戦を表明して注目度を増したレースに、冬の中山で堅実な走りを見せてきたウインイクシード、福島民報杯大差勝ちから凱旋門賞を目指すマイネルウィルトスなどが挑む。

当該コースが舞台の重賞は函館記念のみ。今週はこのコースの特徴をデータで分析していく(使用するデータは2011年7月17日〜2021年7月11日)。

まずはコース紹介。直線のポケット地点をスタートし、1コーナーまでゆるやかに下りながらポジションを争い、4コーナーまで1000m近く上り続けるタフな設定になっている。直線がわずか260m余りしかない上、ローカル競馬場では最大となる3.5mの高低差がレースに彩りを加えている個性的なコースだ。

タフなコースで外は厳しい

函館芝2000m・過去10年の枠別成績,ⒸSPAIA

<函館芝2000m・過去10年の枠別成績>
1枠【17-21-24-139】勝率8.5%/連対率18.9%/複勝率30.8%
2枠【20-17-19-159】勝率9.3%/連対率17.2%/複勝率26.0%
3枠【19-23-17-168】勝率8.4%/連対率18.5%/複勝率26.0%
4枠【26-19-20-174】勝率10.9%/連対率18.8%/複勝率27.2%
5枠【19-19-17-198】勝率7.5%/連対率15.0%/複勝率21.7%
6枠【19-18-15-216】勝率7.1%/連対率13.8%/複勝率19.4%
7枠【20-21-21-218】勝率7.1%/連対率14.6%/複勝率22.1%
8枠【16-18-21-236】勝率5.5%/連対率11.7%/複勝率18.9%

枠別成績を確認すると、上記の通り顕著に内枠が有利。唯一複勝率が3割を超えている1枠をはじめ、良績は4枠までに集中している。5枠より外は複勝率が2割近辺にとどまっており、外々を回されると余力が残らないのが見て取れる。

函館記念の過去10年でも、勝ち馬10頭のうち8頭が4枠より内、連対馬20頭のうち17頭が4枠より内と傾向は変わらない。昨年こそ15番人気のアドマイヤジャスタが7枠14番から勝って大波乱となったものの、同じく13番人気ながら2着に激走したドゥオーモは3枠6番、3着バイオスパークも1枠2番だった。レース検討の際は内からすくっていく認識で臨みたい。

函館芝2000m・過去10年の脚質別成績,ⒸSPAIA

<函館芝2000m・過去10年の脚質別成績>
逃げ【34-18-9-99】勝率21.3%/連対率32.5%/複勝率38.1%
先行【55-73-69-341】勝率10.2%/連対率23.8%/複勝率36.6%
差し【38-45-52-510】勝率5.9%/連対率12.9%/複勝率20.9%
追込【14-12-19-533】勝率2.4%/連対率4.5%/複勝率7.8%

直線の短さを指摘した通り、直線で後ろから末脚で解決というレース運びは難しく、4角の時点で前にいることが大きなアドバンテージとなる。マクリ【15-8-5-23】複勝率54.9%、4角3番手以内・複勝率40.6%、単勝回収率160%・複勝回収率128%と数字でも裏付けられており、考え方は至極シンプルでいい。

過去10年の函館記念では4角3番手以内が【6-5-6-25】複勝率40.5%、単勝回収率105%・複勝回収率220%と同様の傾向であり、4角10番手以下も【0-1-1-61】とほとんど考慮に入れなくて良い。「先行」の定義を少し広げる程度のスタンスをとりつつ、馬場やコース適性などを吟味して買い目を組んでいきたい。

「函館の破壊王・ハービンジャー」

函館芝2000m・過去10年の種牡馬別成績,ⒸSPAIA

<函館芝2000m・過去10年の種牡馬別成績>
ハービンジャー【13-10-10-73】勝率12.3%/連対率21.7%/複勝率31.1%
ディープインパクト【11-11-8-80】勝率10.0%/連対率20.0%/複勝率27.3%
ハーツクライ【11-5-6-60】勝率13.4%/連対率19.5%/複勝率26.8%
オルフェーヴル【1-6-5-15】勝率3.7%/連対率25.9%/複勝率44.4%

種牡馬別成績ではアスコットの破壊王・ハービンジャーが優秀。実働6年で13勝を稼ぎ出し、並み居るサイアーを退けて勝利数トップに君臨している。函館記念に出走するハービンジャー産駒のワセダインブルーはダイヤモンドS以来の実戦となるが、昨年の五稜郭Sでも9番人気の低評価を覆して2着に来ており、抑えておきたい一頭。

セレクトセールをラスト世代で盛り上げたばかりのディープインパクトも能力の違いでハイアベレージをキープ。とはいえコースとキレで勝負するタイプの差は否めず、勝ち星の大半は未勝利・1勝クラスに限定されている。重賞では【0-2-0-11】と平均以下の成績であり、ローカルのスペシャリストの前では見送りが妥当だろう。

その他ではハーツクライ産駒の他、覚えておきたいのがオルフェーヴル。並外れたパワーを確実に後継へとつなげており、出走数はまだ少ないながらも5割に近い複勝率をマーク。昨年函館記念3着馬のバイオスパークなど参戦予定の産駒が相性の良さを披露する。

函館芝2000m・過去10年の騎手別成績,ⒸSPAIA

<函館芝2000m・過去10年の騎手別成績>
ルメール【9-6-4-16】勝率25.7%/連対率42.9%/複勝率54.3%
池添謙一【9-6-7-39】勝率14.8%/連対率24.6%/複勝率36.1%
吉田隼人【9-10-8-64】勝率9.9%/連対率20.9%/複勝率29.7%
岩田康誠【17-16-11-57】勝率16.8%/連対率32.7%/複勝率43.6%

騎手別成績ではカフェファラオに騎乗するルメール騎手の数字に注目したい。どのコースでもほぼ穴がないリーディングジョッキーらしく、複勝率5割超えをキープしている。ただし2019年の【3-2-2-1】複勝率85.7%などと比較すると近年はやや数字を落としており、付け入る隙はありそうだ。断然人気なら嫌った方が期待値が高そうだ。

夏を函館で戦っているジョッキーの中では池添謙一騎手を推奨。このコースの乗り方を熟知しており、前走4角5番手以内に騎乗した際は【4-4-6-19】複勝率42.4%、単複回収率ともに110%以上と頼れる乗り役だ。近年もエース・ライデンという「ヤマカツ」2騎で函館記念を快走しており、今年のバイオスパークでも結果が求められる。

昨年の函館記念をアドマイヤジャスタで勝って飛躍につなげた吉田隼人騎手の他、騎乗予定がないものの岩田康誠騎手がずば抜けた成績だ。勝率の高さが際立っており、単系馬券で狙いたいところ。

函館芝2000コースデータ,ⒸSPAIA,インフォグラフィック

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。



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