【宝塚記念】史上初・牝馬のグランプリ3連勝! 称えたいクロノジェネシス陣営の確かな手腕
勝木淳
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グランプリはクセが強い
グランプリレースの三連勝はスピードシンボリ、グラスワンダーそしてクロノジェネシスと3頭しかいない。宝塚記念、有馬記念ともにシーズン末期に組まれ、目標設定が難しい。
春なら大阪杯、天皇賞(春)、秋であれば天皇賞(秋)、ジャパンCを経てグランプリを迎える。超A級であればあるほど、狙いはグランプリ一本という組み立ては難しい。馬の状態の頂点を通過し、さらに短期間で上積みは望みにくく、どうしたって現状維持が精いっぱいだろう。
さらに宝塚記念の阪神芝2200m、有馬記念の中山芝2500mはともにほかのGⅠがない。条件戦を含めても施行レース数は多いとはいえない条件のため、経験できる機会は少ない。シーズン末期で馬場状態も読みにくく、どちらも展開に泣くという場面が多々みられる舞台である。ほかのGⅠと共通する部分がない舞台、それが春秋グランプリ。
逆をいえば、ドリームジャーニーのようなグランプリに滅法強いというタイプもいる。クセが強いからこそ、馬券的には難解で、ドリームレースである。クロノジェネシスも古馬になって京都記念とグランプリレースでしか勝利をあげていない。久々にあらわれたグランプリに滅法強い馬だ。
クロノジェネシス陣営の確かな手腕
クロノジェネシスは史上3頭目、かつ牝馬としては史上初のグランプリ3連勝。昨年は異次元の馬場で2分13秒5、今年はレース前に雨こそあったものの、開催2週目の比較的時計が出る馬場で2分10秒9。同舞台であっても問われる適性は異なった。グランプリレースでクロノジェネシスに勝てる馬は現れるだろうか。
ドバイ遠征帰りは香港や欧州遠征に比べると、帰国後の成績がよくないとされる。砂漠の国への遠征は堪えるともいわれるが、時期もあるだろう。ドバイは3月末。12月いっぱいまで秋シーズンが続く日本では、休養のタイミングが難しい。どうしても真冬に立ち上げないと3月末にピークを作れない。前年秋からドバイまで休む間がない日程によって、帰国後に調子を崩すケースがあるのではないか。
そういった意味でもクロノジェネシスはドバイ遠征後にしっかり休み、宝塚記念を目標に立て直せた。ほかのGⅠレースに出走する国内組と比べると、ドバイ遠征を敢行したことで、開き直って宝塚記念を目標にできた点も大きい。レイパパレやカレンブーケドールは必ずしも宝塚記念が大目標ではなかった。
3歳春、430キロ台で背が高く華奢な印象だった馬体は、宝塚記念で478キロ。ここまで40キロ以上体を増やし、パフォーマンスをあげてきた。すさまじい成長力であり、陣営の手腕はもっと高く評価されていい。
さて、秋はという話題になるだろう。血統や走法は欧州の馬場にフィットして不思議はない。どういう形で陣営は遠征させるのか。注目したい。クラブの馬であり、できれば長期遠征ではなく、本番だけ遠征して勝ちたいだろう。ここまでクロノジェネシスを見事にエスコートしてきた陣営に期待したい。
上位と下位、実力差が垣間見えた一戦
2着は7番人気ユニコーンライオン。展開のカギを握り、最後は3着レイパパレを差しかえしてみせた。鳴尾記念の回顧で評価したように相当に粘っこい強さを発揮した。先に出たレイパパレは折り合いに不安を抱えており、控えてもらえ、マイペース。前半1000m1分0秒0、ラスト1000mは58秒5、完璧だった。
この馬を手の内に入れた坂井瑠星騎手は、迷わずに後半800m標識からスパート、得意の4ハロン型のロングスパートに持ち込んだ。11.5-11.5-11.5-11.7、最後200mでラップが落ち込まず、これでは後方から差す組はどうにもならなかった。馬の魅力を最大限に引き出す競馬は馬券を買った側からすれば、これ以上心強いものはない。
3着2番人気レイパパレは、距離が若干長いかもしれないが、それも前半で行きたがってスタミナをロスしてしまうからだろう。その分、ユニコーンライオンに差しかえされた。以前と比べれば、かなり我慢できるようになったものの、川田将雅騎手は序盤、かなり気を使ってレースを運んでいた。こうした面が解消できれば、2200mはこなせるだろう。連勝記録は止まったが、それはいつか止まるものであり、評価を下げることはない。
4着カレンブーケドールは前走天皇賞(春)と比べると、勝利を意識して慎重になり、位置取りを下げたことが裏目に出たか。追いかけたクロノジェネシスにあっさり離されてしまった。以前も書いたが、どうやったらこの馬は勝てるだろうか。中距離、長距離いずれもひと押しが足りない。悩みは深い。
5着キセキは宝塚記念3年連続掲示板確保と、この馬としては安定感がある舞台。パドックで以前と変わらない力強い歩様を披露、見た目には衰えを感じないが、それでも以前のような成績はあげられなくなりつつある。ガツンと行ってしまう危うさが鳴りを潜めたのは、いいことなのかどうなのか。
ロングスパート型の競馬になり、かつ最後までラップが落ち込まないというハイレベルな競馬になっては、中団より後ろにいた馬は手も足も出ないといった感じだったか。アリストテレスなどふるわなかった馬たちは、レベル的に疑問符がつく。もちろん、上半期最後のGⅠとあって状態面もあっただろうが、こういった厳しいレースを乗り越える強さが足りなかった。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。
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