【天皇賞(春)】例年と違う内回りで試される「先行力とスタミナ」 東大HCの本命はディープボンド

東大ホースメンクラブ

OPクラス以上の芝2200m戦平均成績,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

「阪神開催」だからこそ狙いたい馬を探せ

今週日曜は古馬長距離王決定戦、天皇賞(春)が行われる。菊花賞でコントレイルの三冠阻止まであと一歩に迫ったアリストテレス、阪神大賞典を楽勝したディープボンドの4歳馬2頭が人気を集めそうだが、復活を期す菊花賞馬ワールドプレミア、中距離路線で現役トップクラスの実力を披露してきたカレンブーケドール、日経賞覇者ウインマリリンなども盾獲りに名乗りを上げる難解な一戦だ。

天皇賞(春)は例年京都外回りコースが舞台で、道中のペース配分と位置取り、名物である3コーナーの坂などをめぐる駆け引きが独特の傾向を生み出していた。しかし今年は京都競馬場改修工事の影響で27年ぶりに阪神での開催。同じ関西の主場とはいえ、阪神芝3200mは外回りから内回りというトリッキーなコース形態で、コース改修後のサンプルは2月の松籟Sしかないため分析が難しい。かといって京都のデータを基に予想しても信頼度に不安が残る。

そこで今週は勝負の肝となる阪神内回りコースに注目し、求められる適性をチェック。京都との性格の違いを見ながら、阪神開催だからこそ狙いたい馬を探っていく。


瞬発力の京都、持続力の阪神

過去10年・OPクラス以上の芝2200m戦平均ⒸSPAIA


<過去10年・OPクラス以上の芝2200m戦平均>
京都(外回り):連対馬逃げ・先行率52%(29/56) 1着上がり平均34.49
阪神(内回り):連対馬逃げ・先行率68%(30/44) 1着上がり平均35.14

前述した通り阪神のサンプルが少ないため、芝3200mを対象に内回り・外回りの比較はできない。そのため該当例が多い芝2200m戦のデータを参考にする。スタート地点はほぼ同じ上、最初の1000mがゆったりと流れやすい昨今の長距離戦では実質的には後半だけの勝負となることが多く、2200mの分析でも意味をなすだろう。

まず大きな違いとなるのは前めの脚質の有効性。連対馬の脚質を見ると、京都よりも阪神の方がかなり逃げ・先行有利であることが分かる。GⅠレースを例に挙げれば、2011-2019年のエリザベス女王杯(京都)は7頭の勝ち馬が4角7番手以下だったが、過去10年の宝塚記念を同様のポジションから差し切ったのは怪物オルフェーヴルのみ。三冠かつ凱旋門賞2着2回レベルの暴力的なポテンシャルがあれば後方待機のレース運びも許容されるが、混戦ムードのレースでは致命的な欠点となる。

もう一つは上がりタイム。勝ち馬の平均を見ても実に0.65秒もの違いがあり、問われる能力が瞬発力・持続力とくっきり分かれている。

一旦長距離戦線へと話を戻すと、近年淀の長距離GⅠを総なめしたフィエールマンはGⅠ3勝を全て上がり3F2位以内にまとめ、ゆっくり入ってレース半ばから仕掛ける1000m+2200m(2000m)のようなレース運びを持ち味としていた。高速決着だった天皇賞(秋)を2着に好走しながら、シビアな持続戦となった引退レースの有馬記念でサラキアに交わされたように、「ステイヤー然とした」ステイヤーではなかった。

その他天皇賞(春)の好走馬を見てもグローリーヴェイズ・パフォーマプロミス・ミッキースワローなど、中距離戦を切れで勝負してきた馬が多い。加えて、最重要ステップの阪神大賞典から本番でも結果を出した馬がサトノダイヤモンドやシュヴァルグランといった中距離GⅠウィナーに限られていることも事実。長距離の前哨戦でしぶとく結果を出してきたスタミナ自慢は京都でことごとく涙を飲んできた。

しかし今年は僥倖といえるタフな阪神開催、さらに週末は雨の予報。削り合い大歓迎、つらくても根性で伸びる古き良きステイヤーが輝く千載一遇のチャンスが訪れた。


スタミナ自慢が仁川を席巻する

◎ディープボンド
コントレイルとともにクラシックを戦い、華やかな三冠ロードを進む同期の後塵を拝しながらも善戦してきた馬。前走の阪神大賞典では重馬場ながら後半6F「12.1-12.2-12.1-12.2-12.3-12.9」というラップで、数値を見ただけで厳しさの分かるスタミナ勝負を前めで追走、先行馬が脱落していく中を一頭だけ伸び続けて完勝した。

最初のコーナーを5番手以内で入った他馬が全て凡走した菊花賞でも、道中5番手からポジションを上げて4着を死守。阪神で問われる先行脚質とスタミナを兼備した数少ない存在だ。前走のパフォーマンスから重馬場適性も折り紙付きで、デビュー以来皐月賞を除いて手綱を取ってきた和田竜二騎手とのコンビも心強い。ノースヒルズゆかりのキズナ産駒が、初GⅠ勝利をキズナが勝てなかった天皇賞(春)で、同馬から血も名前も受け継いだこの馬が飾るというドラマに期待したい。

◯カレンブーケドール
先頭に立ちたがらない悪癖が災いして勝ち切れないが、馬柱に2着を並べ続ける超堅実派。中長距離を中心に使われ、3000m以上のレースは初めてだが、切れではなく前で長くいい脚を使うタイプだけに軽視は禁物。

4走続けて2着だった秋華賞・ジャパンC・京都記念・オールカマーは全て道悪で、特に2019年ジャパンCでは、一番馬場が良かったラチ沿いのスワーヴリチャードに外からしぶとく食らいついた。日経賞も良馬場とはいえ、開催が進んで荒れた馬場ながらやはり2着を確保。同レースを牝馬が68年間勝っていないこともあり人気は落ち着きそうで、コース取りが楽な内枠も引いた。馬券的には一番の狙いといえる。

▲オーソリティ
3番手も中距離先行タイプをチョイス。前走ダイヤモンドSはグロンディオーズの急襲に屈したものの、先行勢が下がる中でもう一脚を使ってクビ差まで粘り、3着以下には5馬身差をつけて力を示した。道中の不利がありながら勝ち切った青葉賞、3番手からの王道の競馬だったアルゼンチン共和国杯も素晴らしい。

右回りでのパフォーマンス低下を懸念する声もあるが、ホープフルSはスタート直後に他馬と接触しポジションを下げてしまい、有馬記念の大敗は間隔が詰まっての疲労が尾を引いたもので、それほど深刻に考える必要はない。鞍上の川田将雅騎手もきっちり前で競馬をするタイプで、外枠を感じさせない絶妙なレース運びをしてくれるだろう。

以下、日経賞覇者ウインマリリン、長距離実績のあるユーキャンスマイル、ナムラドノヴァン、阪神大賞典で復調気配を見せたメイショウテンゲンまで押さえる。アリストテレスは菊花賞2着とはいえ京都開催であり、前走で露呈した操縦面の不安はスタミナ勝負では分が悪い。

菊花賞覇者のワールドプレミアも同様で、リスグラシューが楽勝しアーモンドアイが沈んだタフな有馬記念で武豊騎手が後方待機を選択したように、一気の脚が持ち味のタイプ。京都の天皇賞(春)なら本命を打つだろうが、阪神開催では評価を下げる。道中で隣のアリストテレスの影響を受けた際にリカバリーのしにくい最内枠という点も不安が残る。

▽天皇賞(春)予想▽
◎ディープボンド
◯カレンブーケドール
▲オーソリティ
△ウインマリリン
×ユーキャンスマイル
×ナムラドノヴァン
×メイショウテンゲン

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。




《関連記事》
【天皇賞(春)】ハイブリッド式消去法で残ったのは3頭だけ! 当日馬体重がポイントとなる“特注馬”は?
【天皇賞(春)】名手が技術を見せるか、牝馬の歴史的快挙か 27年ぶり仁川の春盾注目ポイント
【天皇賞(春)】68年ぶりの牝馬優勝なるか? アリストテレス、ディープボンドは買えるのか?

おすすめ記事