【京都牝馬S】やはりポイントは阪神! イベリス好走の要因と高松宮記念で密かに狙いたい馬とは

勝木淳

2021年京都牝馬Sのレース結果ⒸSPAIA

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阪神を味方につけたイベリス

京都ではなく阪神で行われた京都牝馬S。この先2年間、関西圏はこういった状況が続く。2016年から1400mに距離を短縮されたこともあり、京都牝馬Sの過去データはことさら扱いづらい。もちろん舞台が阪神になったからといってすべてのデータが使えないわけではなく、なかにはそういったデータの取捨選択が巧みな方もいるだろう。

データのなかには使えないデータがある。距離が1400mになった2016年から逃げ馬は9、5、5、17、11着。逃げ切りはマイル戦最後だった15年ケイアイエレガント以来なかった。

舞台が阪神になった途端にイベリスが京都牝馬Sを逃げ切った。これは阪神だからこその逃走劇だった。昨年まで京都牝馬Sが行われた京都芝1400mは外回りを使用、最後の直線は約400m。1400m戦はマイル戦ほど緩みがなく、逃げ馬は息を入れにくい。加えて最後は平坦な400mの直線。脚を溜めた馬が間に合ってしまう。過去5年間のデータはそれを物語る。

一方、今年の舞台は阪神芝内回り1400m。直線はAコースで356.5m。ゴール板でコンマ1秒を争う世界なので、この50m弱は大きい。阪神は最後に急坂がある。逃げ馬にもキツいが、後続馬の切れ味を削ぐ装置にもなる。今週行われる同舞台の阪急杯は過去10年で逃げ馬【3-0-0-7】。18年ダイアナヘイローなどペース次第で逃げ馬にも勝機は十分。舞台が阪神だったことでイベリスが受けた恩恵は大きい。

だがイベリスはこの恩恵だけで勝ったわけではない。発馬直後から最初の200m付近まで酒井学騎手はハミをしっかりかけ、手綱を押して周囲に迷わず逃げる姿勢を示し、後続を引かせることに成功した。他馬に「競りかけるな」と主張したことで、イベリスは後続のプレッシャーを受けずに走れた。

前半600mは前走阪神Cと同じ34.0だが、ヤマカツマーメイドやマルターズディオサのプレッシャーを受けた前走より余裕があった。阪神Cは残り800~600mが11.4。京都牝馬Sは11.7、たとえわずかでも3角付近でペースを落としたことで、コーナーを利用して坂下まで11.4-11.2と加速。イベリスより外を回らざるを得ない先行馬はみんなここで苦しくなった。一旦リズムを整え、早めに突き放しにいけたことが勝因である。

復活の契機をつかんだアイラブテーラー

イベリスに早めにスパートされたことで先行勢は突きバテの形になり、2、3着は待機策のギルデッドミラーとブランノワール。2頭とも外を回してイベリスを追ったため、捕らえるには至らなかった。展開が向いた感もあるが、イベリスが加速した付近での手応えはギルデッドミラーが断然上位。NHKマイルC3着の実績馬で、ここ2戦は折り合いを欠くなど凡走続きだったが、今回できっかけをつかんだのではないか。

ブランノワールは展開にプラスして得意(3勝)の阪神だったことも大きかった。昇級して1年、オープンで牡馬相手に0.7以内と善戦中だが、過信は禁物だろう。得意の阪神で厳しい流れになるような場合に一考だ。

1番人気リリーバレロは11着。昇級緒戦かつ距離短縮で忙しかった。2番人気シャインガーネットは正攻法の競馬で一旦抜けかかるも後続に差されて5着。この競馬をみる限り、1400mはベストだろう。ただ若干全体時計が速すぎた印象。馬場状態も今後は考慮したい。

4着アイラブテーラーは前走の淀短距離Sでは枠内で膠着、大きく出遅れて競馬に参加できなかったが、今回はゲートを五分に近い形で切り、道中は後方2番手のインコースと競馬に参加できた。最後は外を回して猛然と追いあげており、復活の兆しを見せた。もちろんゲートが不安定で難しい馬ではあるが、賞金の問題をクリアして高松宮記念に出走できれば走りそうな予感もある。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

2021年京都牝馬Sのレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA


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