【根岸S】2009年以降、逃げ馬は3着以内ゼロ 巻き返し必至の穴馬とは?

山崎エリカ

2021年根岸S PP指数インフォグラフィック

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差し馬優勢

2008年の根岸Sでは逃げたタイセイアトムが2着に粘っているが、それ以降は逃げ馬の3着以内はゼロ。しかも、タイセイアトムが2着に粘った年は、降雪により月曜日に代替開催。不良馬場の上に、2列目を追走していたトウショウギアが故障し、有力馬がことごとく後退する不利があったものだ。

一方、追込馬の優勝は2008年以降で、ワイルドワンダー、ゴールスキー、カフジテイク、ノンコノユメと4頭もいる。その他にも追込馬の2着が1回、3着が4回もあり、これは追込馬の活躍としては異常な数字。

なぜかと言うと、ダ1200mの重賞が4月の東京スプリントまで行われないため、1200mがベストの快速馬や、砂を被るのが苦手で前に行きたい馬が揃って出走してくるからだ。また中〜長距離適性の高い馬は、同じくフェブラリーSの前哨戦である東海Sに出走するため、よりこちらがスプリント色が強くなるというのもある。

今年は前半3F33秒9で飛ばした、2018年のサイタスリーレッドのような逃げ馬こそ不在だが、砂を被るのが苦手で前に行く競馬をしているスマートセラヴィーが出走。他にもブルベアイリーデ、ヘリオス、テイエムサウスダン、サクセスエナジー、アルクトスなどの快速馬が集った。極端なハイペースには至らずとも、平均よりは速い流れにはなるだろう。先行馬よりも差し馬優勢と見ている。

能力値1〜5位の馬は?

2021年根岸S PP指数インフォグラフィック


【能力値1位 アルクトス】
レコード決着となった昨秋のマイルCS南部杯を優勝。一昨年にダ1400mの欅Sでワンダーリーデルを3着に負かして勝利した実績や、稍重のプロキオンS勝ちの実績もあり、東京ダ1400mも軽いダートも得意としている。前走のチャンピオンズCは9着に敗れたが、前哨戦のマイルCS南部杯を馬場に恵まれて快勝した後の一戦。余力もなく、距離も長かっただけにそこまで悲観する必要もない。

しかし、今回は斤量59kgを背負う上に、前走から距離も短くなるのでダッシュが付きにくいだろう。加えて外枠に入ったので、ロスの大きい競馬になってしまう危険性がある。また、今回が始動戦で、陣営のコメントからもここが目標ではないことが推測されるだけに、馬券の中心にはしにくい。

【能力値2位 レッドルゼル】
昨春のコーラルSでは、サクセスエナジーを2着に下して勝利。サクセスエナジーよりもハンデ2.5kgをもらっていたにせよ、レースがよどみなく流れた中で、同馬の後ろの3番手からレースを運んで、3着バティスティーニに0.7秒差を付けたのは立派なもの。この時点で重賞通用レベルの指数を記録している。

前走のカペラSは、前半33秒9-後半3F36秒6の超絶ハイペースで流れて、先行したダンシングプリンス、ジャスティンがラスト1Fで減速。ジャスティンをクビ差捉えられなかったが、同馬はダ1200mでは現役トップレベルの馬。カペラSまでダートで6戦6勝のダンシングプリンスをクビ差でも捉えた点は立派だ。

昨年のプロキオンSでは勝ちに行く競馬で8着に敗れたように、本質的には1400mではやや距離が長いが、その後は後半型の競馬にシフトしており、差す競馬ならこの距離でもやれるだろう。コーラルSの時のように軽いダートも好ましく、他の能力値上位馬と比較した場合に死角が少ない点も好材料。最有力と見ている。

【能力値2位 タイムフライヤー】
一昨年の秋にダート路線に転向し、同年の武蔵野Sで2着。昨夏のエルムSでは、2着ウェスタールンドに2馬身差をつけて完勝した。その次走、休養明けで挑んだ武蔵野Sでは5着敗退したが、超絶ハイペースで差し、追込馬が上位独占という結果。中団追走でもやや厳しい展開だっただけに、勝ち馬と0.4秒差なら悪くない。

しかし、前走のチャンピオンズCでは、最内枠を利して内目中団の競馬をした割に、最後の直線で伸びず8着に敗退。これは武蔵野Sが馬体重14kg減だったために、調教をセーブし、馬体回復に努めた影響もあっただろう。反応が悪く、4コーナー出口から直線入り口にかけて、いつものように右手前に替えることもできていなかった。

今回は前走時から中7週あるので、立て直せている可能性が高い。ただし、ダ1400mはやや忙しい。前走でダ1800mを使われ、中団からレースをした後になるので、ポジションは悪くなるリスクはある。もともとの能力から巻き返しがあっても不思議ないが、展開の後押しも欲しいところだ。

穴馬はメイショウテンスイ

メイショウテンスイはダ1400mの兵庫ジュニアグランプリとサマーチャンピオンで2着、軽いダートだったグリーンチャンネルCも勝利した実績がある。グリーンチャンネルCでは、外枠から抜群のスタートを決めて、内からハナを主張してくるジャスパープリンスらを行かせて楽に3番手を追走。直線では早め先頭に立ってしまったために、ブルベアイリーデにクビ差まで迫れたが、立派な内容だった。

しかし、前走のギャラクシーSでは、まさかの15着大敗。これはここでも好スタートを決めて、大外枠のスマートセラヴィーがハナに立つのを待ったが、同馬が控えたことで逃げざるを得ない展開。結果、ペースがきつくなって失速したものだ。これまで逃げた経験がなく、しかも馬体重16kg増と重め残りだったことを考えると、実走ペースよりも苦しかったはず。

もともと折り合ってこその馬。今回は前走時よりもテンが速い馬が多く出走しているので、前に馬を置いた競馬ができるだろう。テイエムサウスダンが逃げてかなりハイペースになった前々走の霜月Sでも好位で折り合って2着と善戦しており、スランプを感じさせない。巻き返しが期待できる。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)レッドルゼルの前走指数「-28」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.8秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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