【ジャパンC】データ上今年の3歳は『過去30年で最弱の世代』 エース2頭はアーモンドアイを倒せるか?

東大ホースメンクラブ

3歳世代の古馬重賞複勝率推移ⒸSPAIA,インフォグラフィック

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「過去30年で最も古馬に通用しなかった世代」

今週日曜は三冠馬3頭が直接対決で雌雄を決するジャパンCが行われる。天皇賞(秋)を制しJRA・GⅠ8勝の金字塔を打ち立てたアーモンドアイ、父以来15年ぶりに無敗で三冠を制したコントレイル、史上初の無敗牝馬三冠を成し遂げたデアリングタクトがついに激突。競馬の枠を超え、世界中の視線が府中に注がれる。

7000頭を超える同世代の頂点に君臨し、未だ敗北を知らない2頭の3歳馬は、数々の伝説を残してきた絶対女王に勝つことができるのか。空前のレースのヒントを少しでも探るべく、データを多方面から紐解いていく(使用するデータは1986年6月22日〜2020年11月22日)。

3歳世代の古馬重賞成績ⒸSPAIA
3歳世代の古馬重賞成績のうち3着以内だった馬一覧ⒸSPAIA

まずは「3歳馬vs古馬」の観点から、今年の古馬重賞における3歳馬の走りを振り返る。

現3歳世代の重賞挑戦は鳴尾記念のキメラヴェリテから始まった。52kgの軽量から6番人気に支持されたものの、道中ポジションを下げる苦しい競馬で15着に大敗。続く中京記念でもNHKマイル3着馬ギルデッドミラーが1番人気6着に敗れると、セントウルSのビアンフェまで9頭連続で着外。厚い古馬の壁に跳ね返され続けてしまう。

桜花賞3着馬のスマイルカナが京成杯AHで果敢に逃げを打ち、2着に粘って初めて馬券圏内に入るも、その後も3歳馬は苦戦を強いられた。GⅠでは10頭が出走して全て4着以下に負けている。古馬重賞における複勝率14.7%は、データがある1986年以降ではワースト2位。31世代前となる1990年(複勝率14.5%)に次ぐ低水準だ。現状の数字では「過去30年で最も古馬に通用しなかった世代」のそしりを免れない。

ただ、希望がないわけではない。前述したスマイルカナに加え、コントレイルに次ぐ大関格のサリオスは伝統のGⅡ毎日王冠を圧勝。本番のマイルCSは5着だったが、これは大外枠に加えベストとは程遠いレース運びの中、前残りをただ1頭上がり最速の脚で追い込んでのもの。グランアレグリアやインディチャンプなど、マイル界のトップクラスに対しても力負けしていない。

その他カフェファラオ・オーソリティが歴戦の古馬を下しており、「世代の一線級」に限れば、互角以上の戦いを見せている。

無敗で中央古馬GⅠを勝つ難しさ

無敗のまま中央重賞で古馬に初挑戦した3歳馬の成績ⒸSPAIA
無敗のまま中央重賞で古馬に初挑戦した3歳馬の成績のうちGⅠで古馬に初挑戦した3歳馬一覧ⒸSPAIA

次に「無敗のまま中央重賞で古馬に初挑戦した3歳馬」の歴史を辿っていく。なお、昨年のクリソベリルはチャンピオンズCの前に船橋の日本テレビ盃で古馬対戦済みのため除外。

1986年以降、無傷で古馬重賞への参戦が叶ったのはわずかに15頭。そのうち勝ったのはファインモーション(エリザベス女王杯)とカレンブラックヒル(毎日王冠)の2頭しかいない(他、カワカミプリンセスもエリザベス女王杯を1位入線。進路妨害で12着に降着)。

ただ、15頭のうち重賞を既に勝っていた馬は10頭で、このケースは【2-2-2-4】。着外に敗れた4頭のうち3頭は骨折による長期休養明け(グラスワンダー・コスモヴァレンチ・レーヴディソール)で、もう1頭が1位入線降着のカワカミプリンセス。古馬初挑戦がGⅠだった5例も、レーヴディソールとカワカミプリンセス以外は3着以内。

重賞勝ちのある無敗馬が故障明け以外なら、馬券圏内を外すという心配はない。よって「3着以内」という観点ならコントレイル・デアリングタクトも安泰だ。またデータの期間からは外れるが、1984年の無敗三冠馬シンボリルドルフは同じく無敗のままジャパンCで古馬に初挑戦し、4番人気で3着だった(勝ち馬カツラギエース)。

ジャパンカップ×ローテーション別データⒸSPAIA

最後にローテーション別に3強の有利不利を見極めよう。

まずは菊花賞からの臨戦となるコントレイル。同様のローテは36頭の前例があるが、勝ったのはジャングルポケットとローズキングダムの2頭のみ。過酷な淀の3000mから調整の難しさが伺える。

勝ち馬2頭の事情を見ると、ローズキングダムは2位入線も、ブエナビスタに進路妨害を受けての1着繰り上がり。ジャングルポケットは菊花賞が前走5F63.0秒という歴史的なスローペース(1986年以降の菊花賞35レースで5番目に遅いタイム、しかも良馬場)の上、3ハロン目から10区間連続で1F12秒台以上の緩い流れで進み、不完全燃焼の4着。最後の直線でアリストテレスとのタフな叩き合いを制したコントレイルの菊花賞とは疲労の残り具合が全く違うレースだった。

データ上も、同年の菊花賞勝ち馬4頭が【0-1-1-2】とジャパンCでは未勝利。同年の日本ダービー馬10頭で見ても、ジャパンCを勝ったのはジャングルポケットのみだ。

対するデアリングタクトは秋華賞からの参戦だが、9頭出走してジェンティルドンナとアーモンドアイが勝利。秋華賞勝ち馬に限ると【2-1-1-1】と安定している。何よりも先輩の牝馬三冠馬が2頭ともジャパンCを制している実績がある。中5週と菊花賞組より1週ゆとりのある利点はもちろん、53kgと恵まれた斤量も背中を押すだろう。次なる偉業、史上最速となる6戦目での優勝にも期待が持てる。

迎え撃つアーモンドアイは3歳馬2頭よりさらに厳しい天皇賞(秋)から中3週での臨戦となるが、このローテで使われた牝馬は過去4勝を挙げている。2番人気以内では【3-2-1-1】、さらに天皇賞(秋)1番人気だった馬に限ると【3-1-1-0】とパーフェクトだ。2着のブエナビスタは前述した通り1位入線を果たしており、実質的には【4-0-1-0】勝率80.0%。有終のGⅠ9勝目に向け、データ上はデアリングタクトとの一騎打ちになる可能性が高い。

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