【アイビスSD】国内唯一は傾向も特別!直線重賞を攻略するヒントとは

勝木淳

2020年アイビスサマーダッシュデータインフォグラフィックⒸSPAIA

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初代勝ち馬メジロダーリングから20回目

国内唯一の直線競馬の重賞アイビスSDは今年で20回目を迎える。第1回は21世紀の幕開けである2001年。12頭立てで行われ、2番人気メジロダーリングが53秒9で勝利、2枠2番だった。

いったい、日本の直線競馬はどうなるのか。欧州のように内と外に馬群がふたつできるのかなど想像した日々が懐かしい。記念すべき20回目のアイビスSDについて過去10年の傾向から探っていくことにする。

人気順別成績(過去10年)ⒸSPAIA

まずは人気順別の成績である。過去10年で1人気が【7-1-0-2】勝率70%と圧倒的。展開など紛れる要素が少ない直線競馬はやはりスピード性能がストレートに結果に結びつくため、前評判と結果がつながりやすい。

スピードという数値化しやすいものが決め手になるこのレース、10年で7勝の1人気馬に無理に逆らわないほうがいいだろう。ただし、2人気以下はややこしい。2人気【0-2-0-8】、3人気【0-3-2-5】、4人気【0-0-3-7】、5人気【0-3-0-7】と馬券には絡んでくるが、勝ち馬が出ていない。

残り3勝は7人気(1勝)と8人気(2勝)。10人気以下の大穴が頭に飛び込むことはないものの、1人気以外の上位人気馬が馬券に絡むわりには勝っていない点に注意が必要だろう。

10人気以下の複穴も少なく、大波乱決着は少ない。などと書くと大荒れになりそうで気が引けるが、データはデータ。傾向としては1人気から10人気以内へという馬券の組み方がこのレースのセオリーである。

短距離戦のセオリーは若い馬、とかく斤量面で優位な3歳馬が活躍するがどうだろうか。年齢別成績を調べる。

年齢別成績(過去10年)ⒸSPAIA

3歳【0-2-1-8】意外かどうかは人それぞれだが、勝利がない点は気になるところ。10年に限らず第1回から調べると、3歳は2勝(05年テイエムチュラサン、06年サチノスイーティー)、いずれも51キロの牝馬であり、過去10年の2着2回3着1回も今年のCBC賞で復活したラブカンプー含めすべて51キロの牝馬である。

話は変わるが、(全世代)牝馬は過去19回で牝馬は12勝で通算【12-9-9-88】、この10年でも【5-5-5-52】と好成績。夏は牝馬とは限らないが、アイビスSDの牝馬は強い。

話を年齢に戻すと、もっとも成績がいいのは【4-1-1-7】勝率30.8%、複勝率46.2%の4歳。やはり若い世代だが、ここは気をつけたい。というのも降級制度廃止により今後は夏の重賞への4歳馬の出走は増加するからだ。

5歳は【3-6-4-31】で出走数は4歳13頭に対して44頭で3倍以上開きがある。制度廃止直後の昨年は4歳馬のワンツーだったから一概に4歳の数値が悪くなるとは言い切れないが、頭数が増えることによって5歳馬との確率上の開きは縮まる可能性はあるやもしれない。

また7歳【2-0-1-30】、6歳【1-1-3-38】と全体的には若い馬だけでいいかというとそうでもない。夏は逆張りの高齢馬とは穴党のセオリーでもある。

8枠、非サンデー系、前走逃げ

直線競馬といえば注目すべきは枠順だ。

枠番別成績(過去10年)ⒸSPAIA

ご存じのように外枠、それも8枠が【4-2-1-17】で勝率トップの16.7%を誇る。ただし集計期間外だが第1回メジロダーリング2枠2番のように2枠【2-2-2-11】は興味深い。

初期は施行時期が新潟開催の後半だったが、06年から夏の新潟開幕週もしくは2週目に移行、芝の状態がもっともいい時期になったことで8枠がかぜん優位になった。周回コースのレースではロスが大きすぎる外ラチ沿いは直線競馬でしか使われない。

直線競馬は1日に1レース必ず組まれるため開催が進むと外ラチ沿いのアドバンテージが小さくなる。反対に開幕週に組まれるアイビスSDは外ラチ沿いが絶好な状態であり、8枠が強い。

一方で7枠【1-1-5-17】、6枠【1-3-1-15】など外枠でも勝ちきれないケースが目立つ。これは絶好の外ラチ沿いに馬群が形成されることで進路をなくす、もしくは揉まれこむといった現象が起きている証拠だろう。

それは2枠の好成績でもいえる。2枠で馬券に絡んだ6頭でスピードを生かして先手を奪ったのは13年3人気2着フォーエバーマークのみで、残る5頭はすべて先行もしくは中団に控えた組である。

外ラチ沿いに馬群ができると、内枠はつまり外枠化する。揉まれずに中団で外の馬を外ラチ沿いに押し込めながら、ストレスなく走れる。中途半端な外枠であれば2枠の差し馬を上位にとるのも面白い。

種牡馬別成績(過去10年)ⒸSPAIA

顕著な傾向として種牡馬別の成績がある。複数回勝ち馬を出しているサクラバクシンオーはすでに産駒はいないが、上位10頭はすべて非サンデー系である。

サンデー系で最上位はキンシャサノキセキ【0-1-0-2】。ここまでサンデー系が不振の芝重賞は珍しい。新潟直線1000m全体(同じく過去10年)でも着度数別のトップ10には4位ダイワメジャー【4-7-14-79】勝率3.8%どまりが入るぐらい。

そのダイワメジャーもアイビスSDでは活躍馬を出していない。非サンデー系となれば自然と絞られてくるだろう。最後に前走脚質別成績をみる。

前走脚質別成績(過去10年)ⒸSPAIA

逃げ【5-4-1-14】勝率20.8%、複勝率41.7%が圧倒的。アイビスSDで逃げるかどうかではなく、前走逃げていた馬が有利というのは事前予想で使える。馬柱のなかに前走逃げた馬を見つけたら、まずは印をつけておこう。

冒頭のメジロダーリングはアイビスSDでは5番手から抜け出したが、その前の函館SSを逃げ切っていた。前走でスピード力を見せた馬は究極の速力比べのアイビスSDでは有利になるのだ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

2020年アイビスサマーダッシュデータインフォグラフィック

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