【宝塚記念】天皇賞春組はキケン 2200m戦の実績で絞り込め!前哨戦から見えてきた本命馬は?

東森カツヤ

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宝塚記念の特殊性

6月28日(日)に阪神競馬場で行われるのは宝塚記念(GⅠ・芝2200m)。ファン投票で選出された現役屈指の名馬たちが共演する一戦だ。今回の記事では宝塚記念を予想する上で大きなヒントとなる前哨戦3レースを振り返る。データとレース内容の両面から浮上してくるのはどの馬だろうか。

その前に、宝塚記念はなかなかに特殊な傾向を示すレースなので、まずはそのことに触れておきたい。

宝塚記念は梅雨時の阪神最終週で行われること、2200mという“中途半端”な距離設定、ロングスパートで上がりのかかりやすい内回りという条件が重なるため、中央芝GⅠの中でもかなり風変わりなレースである。

宝塚記念の人気別成績ⒸSPAIA



上記の条件により、派手な末脚を武器にするタイプが決め手を削がれることに加え、春天組は長距離戦の反動、ドバイ遠征組もその反動に苦しみ、上位人気があまりアテにならない。過去10年では6~8番人気の伏兵が半数の5勝を挙げている。

よって、本来はドバイ遠征組を下げ、鳴尾記念や目黒記念を好走してきた、スタミナに長けた地味なキャラの中穴馬を狙っていくレースなのだが、今年はドバイミーティングが中止になったため当然ながら前走ドバイ組は不在(グローリーヴェイズはドバイを予定していた)。目黒記念と鳴尾記念から臨む馬も計2頭だけ。異例の年といっていい。

そんな異例の年ゆえに大事にしたいヒントが距離実績。2200mのいわゆる“非根幹距離”(=主に1200、1600、2000、2400mを大レースが多く施行されるため「根幹距離」と呼ぶのに対比して2200mなど、それ以外の距離を指す言葉)で行われる宝塚記念はとにかく同距離での実績がモノを言う。

過去10年の勝ち馬を見ても10年ナカヤマフェスタ(セントライト記念)、15年ラブリーデイ(京都記念)、16年マリアライト(エリザベス女王杯)、17年サトノクラウン(京都記念)、19年リスグラシュー(エリザベス女王杯)と、2200mでの重賞勝ちがあった馬が人気・穴問わず勝っていることが分かる。

2200m重賞勝ちがあった馬の宝塚記念好走歴ⒸSPAIA



今年の出走馬でいえばクロノジェネシス、スティッフェリオ、ダンビュライト、ブラストワンピース、ラッキーライラックがこれに該当する。この5頭の内容にも注目しながら、前哨戦を振り返っていこう。

金鯱賞から直行が◎のサートゥルナーリア

金鯱賞からはただ1頭、サートゥルナーリアがエントリー。

レースラップは下記の通り。
12.9-11.8-13.2-13.0-12.7-12.4-11.8-11.2-11.1-11.5

前半1000mが63.6というのは古馬重賞としては超がいくつもつくスローペース。サートゥルナーリアは左回り不安もささやかれる中、5番手追走から直線で楽々抜け出しての完勝。上がり3ハロンは33.2をマークし、一般論として着差がつきにくいといわれる超スローペースにもかかわらず2着を2馬身突き放した非常に強い内容。

しかし個人的に強調したいのはこのレースの内容そのものより、宝塚記念まで中14週というゆとりのある出走間隔。サートゥルナーリアはテンションが上がりやすい馬で、使い詰めると気性の不安が露呈する。

4着に負けたダービーは皐月賞から中5週、6着の天皇賞・秋は神戸新聞杯から中4週だったが、それ以外のレースはいずれも中7週以上で出走して【5-1-0-0】の成績(新馬除く)。休み明けの不安どころかむしろ、これこそがこの馬にとっての必勝ローテで非常に好感が持てる。

大阪杯はイン前決着で……

今年の大阪杯は逃げ馬不在のメンバーで、レースラップは下記の通り。
12.9-11.7-12.3-11.9-11.6-12.1-11.7-11.3-11.2-11.7

ダノンキングリーが逃げの手に出たが、ペースは前後半60.4-58.0と実に2.4秒も差がある後傾ラップ。決着としてもイン前に好走馬が偏ったレースだった。

1着ラッキーライラックは好発を決めてラチ沿いをとり切り、逃げるダノンキングリーを見ながら進んであとはかわすだけの完璧なレース運び。昨秋からの充実は確かだが、こと大阪杯に限って言えば出来すぎの印象もある。中山記念では休み明けのせいか反応の悪さを見せていたこともあり、間隔があいたローテも若干の不安。

2着クロノジェネシスはラッキーライラックの隣に位置。最後のクビ差は4角で通ったところの差だけで、ほとんど勝ちに等しい内容。

4着カデナはスタートで出遅れ。しかしその後は最内を絶対に回ってくると決めていたかのような騎乗ぶりで、直線は進路が空くまでかなり待たされながらも猛追して4着まで追い上げた。腹をくくった騎乗が奏功した面は否めないが、復調気配。

5着ワグネリアンは勝ったラッキーライラックを真後ろから見る形。最後は前から離されてしまったし、カデナにも交わされた。少々物足りない内容だった。宝塚記念向きの消耗戦タイプでもなく、見送りが妥当か。

注目は7着のブラストワンピース。内枠で後手に回り、3~4コーナーにかけて大外から早目に動いて行く競馬。1,2,4,5着馬が道中ラチ沿いに徹した馬だということを考えると、ブラストワンピースのレースぶりは見た目以上に負荷が大きかったはずで、敗戦にも情状酌量の余地あり。荒れ馬場の2200mで行われたAJCCを勝っている点など、適性面で宝塚記念はいかにも合いそう。

天皇賞組を買う際に気をつけたいこと

宝塚記念における前走・天皇賞組は過去10年で【4-2-2-30】。単回収率は57%、複回収率は62%と低調。特に天皇賞で1~3着に入っていた馬は【0-0-2-14】で連対すらない。路線の住み分けが進んだ結果だろう。

また、前走・天皇賞での脚質別に成績を見ると、天皇賞4角通過3番手以内の馬は【0-0-1-12】、4~9番手の馬は【2-0-1-9】、10番手以下は【2-2-0-9】となっている。つまり、天皇賞で差しや追い込みの競馬をした馬の方が成績はいい。したがって、天皇賞組から馬券を買うなら4着以下馬か差し馬、もしくはその両方が重なっていることが望ましい。

スティッフェリオは天皇賞で先行して(4角3番手)2着というデータ上ダブルパンチで逆風がある。レース内容的にも好位で折り合って徹底的にロスを削った立ち回りをしており、北村友騎手の名騎乗であわや勝利という場面を作ったもの。あれ以上の結果を引き出すのは容易でないだろう。

5着トーセンカンビーナは出遅れて最後方から。残り1000m付近から外に出して追い上げていき、ラップを見てもラスト4ハロン11.9-11.9-11.9-12.2と前も止まっていない中をしぶとく詰めている。GⅠで勝負するにはもうワンパンチ必要な感はあるが、悪くない5着。

6着キセキは阪神大賞典でもそうだったが、長距離戦だと折り合いがつかない。この2戦は暴走が敗因とハッキリしているので参考外でいい。特に直近の2戦で馬券を買った人は、適距離の2200mに替わる今回、見限ってしまうのは非常にもったいない。

冒頭で述べた2200m重賞勝ちのあるダンビュライトだが、引っかかるキセキを行かせての2番手という形から最後は失速して9着。去勢明け初戦で今後へのメドを立てることはできなかった。もうしばらく静観が必要か。

前哨戦のまとめ

前哨戦回顧からの推奨馬はサートゥルナーリア、ブラストワンピース、キセキの3頭。この中から1頭本命を選ぶとすればブラストワンピース。2200mでの重賞勝ちがあり、重い馬場・上がりのかかるレースでの実績も抜群。大阪杯も上位馬と比べてロスの非常に大きい競馬をしていて見直しが効く。

上記の3頭にラッキーライラックやクロノジェネシス、穴党の人はトーセンカンビーナあたりを加えてみても面白いかもしれない。

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