キズナは「母系の良さをうまく引き出している」2019年産駒がデビューする種牡馬、新種牡馬の血統背景
門田光生
Ⓒ明石智子
社台スタリオンで産駒デビューを控えた種牡馬たち
2018年のリーディングサイヤーベスト10の中に、社台スタリオンで繋養されている種牡馬が実に8頭もいる。残る2頭のステイゴールド、ゴールドアリュールは死亡しているので、実質全てのトップサイヤーがこのスタリオンに集まっていることになる。
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ただ、ディープインパクトをはじめとしてトップサイヤーは語りつくされた感があるし、まだ産駒デビューしていない新種牡馬がどんなタイプの仔を出すのかを予想するのも、また競馬の楽しみの一つといえる。そこで、社台スタリオンに繋養されている、まだ産駒がデビューしていない種牡馬についてレビューしてみよう。
今年産駒がデビューする種牡馬 再び対決!エピファネイア対キズナ
今年、産駒がデビューするのはエピファネイア、キズナ、リアルインパクトの3頭。特にキズナとエピファネイアはともに2010年生まれで、牡馬三冠でしのぎを削ったのは記憶に新しいところだ。
エピファネイアは菊花賞とジャパンカップを勝った一流馬。
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母シーザリオはオークス馬だから、産駒は中~長距離で大物が出るパターンか。早々にブックフル(満口)となったように人気も上々である。弟2頭が2歳GⅠを制し、母系の良さと仕上がりの早さをアピールできたのも大きい。キズナより優位な点は、何といっても優秀なディープインパクト産駒の牝馬に配合しやすいこと。
エピファネイアの母の父はサンデーサイレンス産駒のスペシャルウィーク。ディープ産駒の牝馬と配合するとサンデーサイレンスの4×3、いわゆる「奇跡の血量」と呼ばれるインブリードになる。この利点を生かして、キズナとの第2ラウンドを制することができるか注目したい。
一方のキズナ産駒は「母系の良さをうまく引き出している」と関係者が語るように、産地の評判がすこぶるいいとのこと。
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ディープインパクト×ストームキャットの配合パターンは、同スタリオンで来年産駒デビューするサトノアラジン、そして再来年産駒がデビューする予定のリアルスティールがスタンバイ。今後強力なライバルになる可能性が高いわけで、まずはスタートダッシュを決めてアドバンテージを得たいところだ。
今年スタッドインした種牡馬 サトノダイヤモンド産駒は仕上がりの早さに期待
昨年までターフを沸かせていたサトノアラジン、サトノダイヤモンド、リアルスティール、レッドファルクス、そして輸入馬のマインドユアビスケッツの5頭が新たに仲間に加わった。 サトノダイヤモンドは父がディープインパクト、母はアルゼンチンのGⅠ馬。
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セレクトセールで2億円を超える金額で落札され、現役時代は菊花賞、有馬記念を勝利。そんなエリートを絵に描いたような馬だが、同じ父を持つライバル種牡馬が多いのと、自身がピークを過ぎた時に引退したところが個人的には気になる。3歳時のサトノダイヤモンドは本当に強かっただけに、自身と同じく完成度の早さが産駒にうまく伝われば成功の確率も高まるだろう。
マインドユアビスケッツはアメリカの短~中距離ダートで活躍したデピュティミニスター系の種牡馬。
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社台のデピュティミニスター系といえばフレンチデピュティ~クロフネのライン。同馬は高齢になるフレンチデピュティの後釜として導入されたと思われる。バリバリのダート血統だから産駒の主戦場はダートと考えるのが妥当だが、フレンチデピュティもクロフネもダートだけでなく芝の一流馬を輩出。この馬にもオールラウンダーとしての活躍が期待される。
もう1頭挙げるならレッドファルクス。
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フォーティナイナー系×サンデーサイレンスという配合はジャパンカップを勝ったアドマイヤムーンと同じ。芝2400mのGⅠを勝ったアドマイヤムーンでさえ、代表産駒がセイウンコウセイ(GⅠ高松宮記念、芝1200m)、ファインニードル(GⅠスプリンターズS、芝1200m)と短距離指向。同じくフォーティナイナー系で、ダートの種牡馬として一時代を築いたサウスヴィグラス(2018年死亡)の後継者になり得るのではと思っている。
すでに産駒がデビューしている種牡馬 大きく躍進したハービンジャーとロードカナロア
最後に、すでにデビューしている種牡馬にも触れておく。初年度から現在までハイアベレージを叩き出しているディープインパクト、キングカメハメハの2頭は別格として、ここ2年で大きく躍進した種牡馬といえばハービンジャーとロードカナロア。前者は有馬記念、後者は牝馬三冠とジャパンカップを産駒が制し、前述の二大巨頭に対抗できるポテンシャルがあることを証明した。
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両馬に共通するのはサンデーサイレンスの血を持っていないこと。ディープインパクトに良血牝馬が集まるので他のサンデー系はどうしても繁殖牝馬の質が落ちるのだが、この2頭はその心配がない。また、ロードカナロアに関しては父キングカメハメハが体調を崩して2013年から種付け頭数を抑えているのも幸い。
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同じく後継種牡馬であるルーラーシップとともに、本来は父と種付けするはずの良血牝馬がこちらへ流れているのも、スタートダッシュが決まった要因の一つだろう。ともあれ、近年の活躍で繁殖牝馬の質が一段と上がるのは間違いなく、これまで以上に数字を伸ばすことが予想される。
《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。編集部チーフも兼任。本社予想、「最終逆転」コーナーを担当。現在、サンケイスポーツにて地方競馬の記事を執筆中。
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