【マーチS回顧】力量接近の激戦制したブライアンセンス 4歳時に揉まれた経験が5歳で花を咲かせる

勝木淳

2025年マーチステークス、レース結果,ⒸSPAIA

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ダート重賞らしい我慢比べ

GⅠ高松宮記念直前に行われたダートのハンデ重賞マーチSはブライアンセンスが勝ち、重賞初制覇。2着マテンロウスカイ、3着ロードクロンヌで決まった。ハンデ構成はトップハンデの59キロがマテンロウスカイ、ダノンスコーピオン、ペイシャエスの3頭。このうち2頭は芝の重賞勝ち馬であり、ダート挑戦に際し、ちょっと重すぎやしないか。

対して最軽量は55キロのストライク、ピュアキアン、コパノニコルソン。昇級馬、昇級2戦目、昇級後オープン実績なしといった面々。上下差4キロとハンデキャッパーのジャッジは少々厳しめだったが、力量差は大きくないという判断と受けとれる。

力量接近のレースらしく、先行争いは激しく、先手をどうしてもとりたいピュアキアンが外から主張したこともあり、序盤600mは36.1と突っ込んで入った。マーチSで前半3F36.1より速かった例はメイショウハリオが勝った22年など計12回で、このうち4コーナー3番手以内の馬が勝ったのは6例あった。

レースはその後もロードクロンヌらが追いかけ、1000mは1:00.9で通過する。最初の1000mが1:00.9以下だったのもレース史上12例あり、4コーナー3番手以内は7勝。ダートはハイペースでも前は簡単には止まらない。芝とはニュアンスが違う。

だからこの速い流れでもレースの動き出しは早く、真っ先に動いたのはトップハンデのマテンロウスカイ。中盤は内で砂を被っていたが、いち早く先頭に立つことで馬の気持ちを切らせなかった。芝を走る馬にとってダートの叩き合いは想像以上に辛い。それを避ける意図もあっただろうか。

これを合図にロードクロンヌ、ペイシャエス、ブライアンセンスが上昇開始する。後半600mは12.4-12.7-13.4の38.5。かなり時計を要したものの、早めに動いた組がつくった物理的な差がモノをいった。前も後ろも厳しく、ダートらしい我慢強さが試された。


研ぎ澄まされたブライアンセンス

勝ったブライアンセンスは57.5キロを背負った昨年の6着馬。その昨年は走破時計1:51.7で今年は1:51.5。ほぼ時計は変わらないが、好位から粘りきれなかった昨年に対し、今年は好位の後ろで機をうかがった。前走アルデバランSもじわじわと位置をあげながら、抜け出したように、ここにきてダートの一線級らしいしぶとさをみせるようになった。

思えば、3歳時はユニコーンS2番人気3着の好素材。条件戦を突破し、オープン入りした昨年は壁にはね返されて終わったが、昨夏から4戦して8キロ増、10キロ減、8キロ増、6キロ減と増減を繰り返し、昨年マーチSと同体重での出走だったが、中身が変わった印象がある。無駄なところがなくなり、研ぎ澄まされたようだ。これもまた本格化の合図だろう。

マーチSの傾向が4歳苦戦、5歳好成績であるように、ダートのピークは5歳から。4歳時に揉まれた経験が5歳で花を咲かせる。ブライアンセンスは理想的な成長曲線をたどってきた。外を意識しながら、外を回りすぎないように4コーナーでは馬の間を抜けるなど進路取りの妙も光る。岩田望来騎手は進路の取り方が絶妙であり、ストロングポイント。今回も随所に光った。


4歳ロードクロンヌはここからが勝負

2着は先に動いたマテンロウスカイ。早々にピュアキアンをかわし、先に仕掛けることでつくったアドバンテージをいかした。トップハンデ59キロ、初ダートといった状況に対し、どう対処すればいいのか。横山典弘騎手の答えには唸るしかない。おそらくこの手しかないだろう。

最後はブライアンセンスの決め手に屈したものの、やれることはやったレースだった。この結果を受け、今後はどの路線に進むのか。芝もダートも1800mでの好走が多く、距離適性の強さも感じる一戦だった。

3着ロードクロンヌは昇級初戦でハンデ57キロだから、今回はかなり見込まれての出走だった。前走上総Sでの0.9秒差圧勝を高く評価されたわけだが、その通り重賞級の力はみせた。こちらはまだ4歳であり、ダート界でいえば発展途上の段階。母リラコサージュ、その母サッカーマムの系統はレディルージュなど芝の活躍馬もいるが、ロードクロンヌの叔父にはダートグレード2勝のロードゴラッソがおり、このままダートで経験を積めば、重賞制覇は近い。

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ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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