【共同通信杯】経験より素質を重視 リスグラシューの半弟ネブラディスクに有力データ
勝木淳

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「先物買い」の共同通信杯
昨年、ジャスティンミラノがここから連勝で牡馬クラシック第一冠を奪取し、共同通信杯はこの10年で皐月賞馬を5頭も出した。ここまで皐月賞とつながるのは間隔がちょうどいいからだけだろうか。
共同通信杯はスローから平均に近いペースで流れ、最後に東京らしく瞬発力を求められる。細かい差はあるものの、共同通信杯は変わっていない。あくまで東京芝1800mらしい総合力を問い続けている。
どちらかといえば皐月賞が変わってきたのではないか。昨年は1:57.1のレコード。あくまで馬場状態に左右されるが、良馬場であればスピード重視の競馬になる。皐月賞は昔から「速い馬が勝つ」と言われるが、近年はよりスピードを求められるケースが多い。
皐月賞がスピード勝負になるほど、共同通信杯で試される総合力がいきる。東京向きのスピードと中山適性の隔たりが年々縮まったことで、共同通信杯の存在感が高まり、より好メンバーが集まる。
今年は皐月賞の最重要ステップレースで、いったいどんなパフォーマンスがみられるのか。楽しみだ。データは過去10年分を使用する。
1番人気は【0-4-2-4】複勝率60.0%と不思議なことに未勝利。3番人気【5-1-1-3】勝率50.0%、複勝率70.0%、4番人気【2-1-2-5】勝率20.0%、複勝率50.0%、または6番人気【2-1-0-7】勝率20.0%、複勝率30.0%が好走ゾーンとなっている。
戦前の勢力図はレース後に覆され、新たな序列が生まれるイメージ。レース前は実績不足であっても、実はかなり強い馬を「先物買い」するのが有効だ。
レース経験別成績を見ると、キャリア1戦が【3-3-2-7】勝率20.0%、複勝率53.3%と相性がいい。東京芝1800mの重賞で隠れていた才能が引き出される。
2戦【2-0-2-16】勝率10.0%、複勝率20.0%、3戦【4-5-4-25】勝率10.5%、複勝率34.2%とキャリアが浅い馬が買い。経験より素質だ。共同通信杯はそれを万人にアピールする場でもある。
ネブラディスクに心強いデータ
キャリア2戦の東京スポーツ杯2歳S3着レッドキングリーに対し、新馬戦直後のネブラディスクは逆転できるか。人気とキャリアの傾向を踏まえると、逆転するのが有力なシナリオだ。
前走新馬戦1着は距離でくっきり。延長【0-0-0-4】、1800m【1-2-1-3】勝率14.3%、複勝率57.1%、短縮【2-1-1-0】と、マイル以下を使わず中距離戦の新馬デビュー1着が条件となる。
2000mの新馬戦を勝ったネブラディスクは有力。新馬戦は前後半1000m62.2-59.6のスローペースのなか、上がり600m34.4で3馬身差の快勝をおさめた。リスグラシューの半弟という良血らしい瞬発力は素質そのもの。難しいキャリア2戦目だが、ここを勝てば一気に先頭集団の仲間入りだ。
ではキャリア2戦以上にはどんな傾向があるのか。前走クラスでは未勝利戦が【0-0-0-10】。素質が重要なレースらしく未勝利戦経由は厳しい。重賞は4着以内【2-3-5-17】、5着以下【0-2-2-20】。東スポ杯2歳S3着は有力も、複勝率を考えると、ネブラディスクのデータと比べて見劣る。
重賞好走馬が負けるから1番人気が未勝利でもある。ホープフルS10、11着のショウナンマクベス、マスカレードボールら敗退組も、2、3着なら可能性がある。どちらも2走前に東京で2勝目をあげた。舞台替わりの変わり身も期待できる。
もう一つポイントになるのが前走1勝クラス【4-2-1-16】勝率17.4%、複勝率30.4%だ。ここは前走1着【3-1-1-4】勝率33.3%、複勝率55.6%が有力だが、2、3着【1-1-0-1】で惜敗までは好走ゾーンからこぼれない。
2勝目をあげたリトルジャイアンツ、カラマティアノスだけでなく、エリカ賞2着のワンモアスマイルも、1勝馬といえどチャンスはある。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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