【神戸新聞杯】安定した先行力と堅実な末脚が生きる舞台 京大競馬研の本命はジューンテイク
京都大学競馬研究会
ⒸSPAIA
中京芝2000mとの違いに注意
9月22日(日)に神戸新聞杯(GⅡ)が行われる。3着までの馬に菊花賞の優先出走権が与えられるトライアル競走だ。例年は阪神芝2400mで施行されるが、今年は阪神競馬場の改修工事に伴う変則開催で2年ぶりに中京芝2200mで施行される。ここからクラシック最終戦の菊花賞に挑もうとする有力馬が集結。大混戦模様の難解な一戦となった。
以下では、本レースが行われる中京芝2200mのコース形態とそれに起因するレースの質、そして想定される展開を踏まえ予想する。
まずは中京芝2200mのコース形態をみる。スタート地点は4コーナーポケットで、中京芝2000mのスタート地点より200m手前から走る。初角までの距離は約500m(Bコース使用時)で、途中に急な上り坂がある正面スタンド前の直線を目一杯走った後、コースを一周する。
1~2コーナーは緩やかな上りで向正面半ばまで坂が続き、その後3~4コーナーから最後の直線途中までは下り坂。4コーナーはスパイラルカーブで最後の直線は412.5m。ゴール手前340m地点から240m地点にかけては、中山競馬場芝コースに次いで傾斜がきつい高低差2.0mの急な上り坂。ラスト240mはほぼ平坦というコースだ。
まず注目すべきは初角までの距離が長いことだ。先行馬同士の先手争いは長引きやすく、初角に入るまでに急な上り坂があるとはいえ、序盤のペースは流れる。その後1、2コーナーから向正面半ばまでの緩やかな上り坂と、序盤の速い流れが影響して中盤のペースは緩みやすい。
上り坂を終えると今度は下り坂になるため、そこから後半は先行勢が一気に再加速する。このため、直線に入るまでに後方勢が先行勢とのポジション差を埋めにくく、また4コーナーはスパイラルカーブであり、スピードをつけて直線に進入すると外に振られやすい。膨れた先行勢のさらに外を回す後方勢は1着までは届きにくい。
小倉記念時に中京芝2000mのレースの質として「序盤、中盤で前に位置を取り、出来るだけラチ沿いを走ることができる器用な先行馬が恵まれやすい」と分析した。しかし、中京芝2200mは全く違うレースの質となる。
2000mに比べて初角までの距離が200m延びることで、序盤の先行負荷が格段に高くなる。ラチ沿いを走ることができても、地力のない先行馬は最後の急坂で脱落し、速い上がりを使える差し馬が台頭してくる。
もちろんコース形態上、膨れた先行勢のさらに外を回す後方勢は1着まで届きにくいため、差し馬なら馬群を捌き、前目の位置からロスなく末脚を伸ばすことが必須だ。ただ、内前有利になりやすい中京芝2000mで行われた小倉記念やローズSと異なるレースの質であることはしっかり押さえておきたい。
<中京芝コース3勝クラス以上 上がり3F5位以内馬の成績(過去10年)>
2000m【58-50-49-221】
勝率15.3%、連対率28.6%、複勝率41.5%、単勝回収率142%、複勝回収率113%
芝2200m【19-18-16-55】
勝率17.6%、連対率34.3%、複勝率49.1%、単勝回収率144%、複勝回収率170%
この傾向は数字にも表れている。中京芝コース3勝クラス以上のレースにおける上がり3F5位以内の馬の成績(過去10年)は、中京芝2000mで勝率15.3%、連対率28.6%、複勝率41.5%、単勝回収率142%、複勝回収率113%であるのに対し、中京芝2200mは勝率17.6%、連対率34.3%、複勝率49.1%、単勝回収率144%、複勝回収率170%。全ての項目で中京芝2200mの方が高くなっている。
先週のローズSはコース替わり初週の恩恵もあり、クイーンズウォークとレガレイラを除けば上がりの速くない先行勢が上位を独占した。これで世間に「中京=先行有利」のイメージを持たれそうだが、芝2200mは別物である。前目の位置につける先行力、そしてそれ以上に上がりの速さを重視して印を打つ。
離れた2番手集団が最も恵まれる
続いて今回想定される展開から恵まれる馬を考える。メンバー構成は前走通過順位に3番手以内のある先行馬が6頭(ダービー取消のメイショウタバル含む)。全15頭に対して少なくない。ただメイショウタバルのテンの速さが抜けているため、この馬がレースを引っ張っていくことになる。
メイショウタバルの皐月賞は前半1000m57.5秒の超ハイペースの逃げ。初角までの距離が長いコース形態も考えれば、皐月賞同様1000m通過60秒を切るペースで逃げると想定される。他の先行馬は同馬に序盤から競るほどの先行力を持たない。そのため2番手以降は離れたやや縦長の集団となり、メイショウタバルの単騎逃げを追走していく形になる。同馬の不安定な気性を考えれば、単騎とはいえ折り合って61、62秒台の楽逃げになることはまず考えられない。
この場合、最も恵まれるのは2番手以降の集団で前目に付け、堅実な末脚を持つ馬だ。2番手集団の前方にいる馬は実質的に楽逃げ、楽な先行の形になる。その位置を取るための先行力と、後方からの強襲を位置取りの差でしのげるだけの末脚を持つ馬を重視する。
安定した先行力と堅実な末脚
◎ジューンテイク
日本ダービーは1.0秒差10着。世代一線級相手には完敗したが、コスモキュランダ、アーバンシックら互角の競馬をした馬が次走セントライト記念で巻き返した。本馬も世代上位の実力を持つことは間違いない。
ダービーでは今回対戦する同組の中では最も強い競馬をしていた。2走前の京都新聞杯は内有利の馬場が向いたとはいえ、先行力を見せて最内枠から好位を追走。内から馬群を捌いて上がり最速の末脚を使う好内容だった。4走前のすみれSも上がり最速の脚を使い、後のダービー4着馬サンライズアースに0.3秒差の2着と迫った。また今回上位人気想定のメリオーレムは完封していた。
世代一線級相手には一歩及ばないものの、今回のメンバーであれば能力、実績ともに随一。勝ち負け必至だ。
◯ミスタージーティー
日本ダービーは前半1000m62.2秒の超スローペースで、後方の馬は完全にノーチャンスで度外視可能な敗戦。ただその中でも上がり2位の脚を使えており、着順、着差以上に評価できる内容だった。
2走前の皐月賞は逆に前半1000m57.5秒の超ハイペースを先行し1.0秒差10着。これも評価を下げる内容ではなかった。3走前の若葉Sでジューンテイクをはじめ京都新聞杯上位馬を撃破しているように世代上位の能力を持つ。先行力と堅実な末脚を兼ね備えており、近2走の敗戦で高いオッズ妙味も見込める。
▲バッデレイト
前走の阿賀野川特別は青葉賞4着のサトノシュトラーセに先着し、タイム差なしの2着。ヘデントールが勝利した前日同コースの3勝クラスより0.5秒速い時計を記録した。安定した先行力と堅実な末脚を使えるのが強みで、今回のメンバーなら好位から持ち前の瞬発力を発揮できる。まだ完全に能力の底を見せておらず、さらなる上積みが期待できる。
△ウエストナウ
京都新聞杯は内前有利の展開が向いたとはいえ、キャリア2戦目の重賞挑戦としては評価できる2着。デビュー戦は差して勝利、2戦目は初重賞で先行して即通用という素質馬らしい戦績。今回も前目の位置から初戦で見せた瞬発力を発揮できれば好走できる。
×ヴィレム
2走前のプリンシパルSは前目からの差し馬が馬券内を独占するなか、ただ一頭最後方から上がり最速の脚で追い込み0.3秒差4着。上位人気想定のメリオーレムよりも強い競馬で上位に迫った。
×サブマリーナ
2走前のつばき賞は、1000m通過61.5秒の楽逃げをしたメイショウタバルに最後方から上がり最速の脚を使い0.1秒差3着。今回想定されるペースなら逆転可能とみる。
×ショウナンラプンタ
本命、対抗に並ぶ実績馬。今回のメンバーでも随一の瞬発力を持つが、後方脚質の距離短縮で後ろからの競馬が想定され、展開が向かない可能性が大いにある。
買い目は◎単勝1点、◎-◯▲△×馬連6点、◎-◯▲△-◯▲△×3連複12点で勝負する。(花田)
▽神戸新聞杯予想▽
◎ジューンテイク
◯ミスタージーティー
▲バッデレイト
△ウエストナウ
×ヴィレム
×サブマリーナ
×ショウナンラプンタ
※サブマリーナは9月21日朝に出走取消が発表されました。
ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派が揃う。
《関連記事》
・【神戸新聞杯】日本と欧州の血統を併せ持つ馬が強い 中京替わりで注目のビザンチンドリーム
・【神戸新聞杯】ダービー上位馬不在で条件戦組に好機 血統も後押しするオールセインツとメリオーレム
・【神戸新聞杯】過去10年のレース結果一覧
おすすめ記事