【関屋記念】逃げ・先行に注意の超高速馬場を想定 本命は先行策あるサンライズロナウド、グランデマーレにも期待
山崎エリカ
ⒸSPAIA
新潟芝1600mは意外に“前”から押し切ることができる
関屋記念は超高速馬場となりやすい新潟外回り芝1600mで行われる。このコースはゲートから3角までの距離が約550m。最初のコーナーまでの距離が長いと差し馬有利をイメージしがちだが、意外にも過去10年では逃げ馬が2勝、2着2回、3着1回と活躍し、連対馬20頭中7頭は逃げ、番手と前へ行く馬が結果を出している。
初角までが長いので、前半のペースはそこまで遅くないが、日本最長となる約659mの最終直線を意識して中盤で一度緩むことが多く、過去10年でハイペースになったことは一度もない。そのため、一昨年にはシュリ(2着)が逃げて、番手の馬と“行った行った”の競馬となった。このように、これまで楽に前へ行けなかったシュリのような馬が最初の長い直線を利用し、好位を確保して好走するパターンも多い。今回はそれを踏まえて予想を組み立てたい。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 サンライズロナウド】
デビューから7戦はダートを使われ、1勝クラスを低迷していたが、芝に転向すると一気に上昇。芝2000mの1、2勝クラスをそれぞれ勝利した。その後、今年1月の芝1400m・新春S(3勝クラス)を見事に差し切ると、次走のシルクロードSで4着、続く阪急杯では3着と健闘した。
その阪急杯では2番枠から五分のスタートを切るが、軽く促されると行きたがってブレーキをかけられる場面があるなど、ややチグハグな入り方で中団の最内を追走。道中では位置を押し上げて行ったが、3~4角ではワンテンポ我慢させると、“かかって”しまい苦労しながら3列目で直線へ。序盤で中目に誘導し、ラスト1Fで前2頭に並びかけるところまで迫ったがハナ+クビ差の3着だった。
前走の海外遠征での芝1200m戦は、前が残る流れを出遅れて後方からの競馬になったのでこれは参考外だが、本馬は距離が短いとコントロールしやすい反面、ワンパンチ足りない。芝2000mの長久手特別(2勝クラス)では、暴走して前後半5F57秒6-後半61秒1という、かなりのハイペースで逃げ切った実績がある。
本質的には、中距離の逃げ先行でスタミナを生かす競馬が向いているが、現状の気性を考えるとマイルくらいがちょうどいいだろう。今回は長久手特別で鞍上だった横山典弘騎手に戻り、リズム重視で先行する可能性が高いと見て本命候補とする。
【能力値2位 パラレルヴィジョン】
デビューから芝2000mを中心に使われ、4戦目で2勝クラスを勝利したが、準OPに昇格してからは善戦するものの中々勝てずにいた。その後は初ダートのマイル戦で差し有利展開に恵まれて勝利すると、初の芝マイル戦となったニューイヤーSも勝利。続くダービー卿CTで初重賞制覇を達成した。
ダービー卿CTでは2番枠から好スタートを切ると、外のセッションを行かせて2列目の最内を確保。その後、外から折り合いを欠いたエエヤンがハナを奪って単騎逃げしたことで、離れた3番手の外を追走することになった。4角では離れたエエヤンを一頭分外から追いかけ、2番手まで上がって直線へ。序盤で4馬身ほどあった差をじわじわ詰め、ラスト1Fで同馬を捉えて3/4差で勝利した。
パラレルヴィジョンは芝1800mでもラストで甘さを見せていたが、マイル戦になるとそれが解消された。なお、ニューイヤーSとダービー卿CTでは、やや遅めのペースを先行する形での勝利だった。
前走の安田記念では中団中目、優勝馬ロマンチックウォリアーの後ろという絶好位を取りながら、最後の直線では反応が悪く13着に敗れた。これは休養明けのダービー卿CTで好走した疲労によるものが大きい。今回は逃げ馬不在だったダービー卿CT時よりもペースが速くなる想定となり、先行できない可能性もあるが、立て直された効果には期待できる。
【能力値3位 サクラトゥジュール】
オープン入り後は善戦しながらも中々勝ち切れなかったが、休養明けとなった4走前のメイSでようやく勝利。前走の東京新聞杯では初重賞制覇を達成した。
その前走は1番枠からやや出遅れ、軽く促されて中団最内から追走。空いていたインコースをコントロールしながら3角へ。3~4角の中間地点で仕掛けたが、進路がないまま直線を迎えることに。序盤は外を狙っていたが、最終的には最内に誘導され、ラスト2Fでは3列目から2番手に上がった。ラスト1Fで先頭のウインカーネリアンとの差は1馬身3/4差ほどあったが、そこからしっかり差し切って1馬身差で完勝した。
前走はインがかなり空いていたにせよ、緩みない流れをじわじわ挽回していく強い内容での勝利。7番人気と低評価だったが、4走前のメイSではマテンロウスカイ(今年の中山記念覇者)をクビ差で下し、3着馬には3馬身差をつけて勝利し、重賞でも通用する指数を記録していた。
ここでも当然、通用する実力はあるが、今回は前走で自己最高指数タイを記録後の休養明けとなる。前走の好走でダメージが出て、半年の休養となっているだけに、初戦から万全の状態に持っていくのは難しいだろう。
東京新聞杯ではその前走・中山金杯で前有利の展開のなか、後方に下がってしまい能力を出し切れなかったこと、折り合いの観点からマイルの方がレースをしやすいことから穴馬に推した。しかし、今回は苦しい戦いになりそうだ。
【能力値4位 トゥードジボン】
デビューからマイル路線を使われ、これまで逃げて4勝。いずれも同型馬不在or手薄となった展開を利して、スローペースの後半勝負に持ち込んだものだった。また、今年の米子Sは京都で行われており、これまで3勝を挙げる京都芝1600mがベストのイメージを受ける。
その米子Sは2番枠から五分のスタート。外から勢い良く先頭に立ったモズゴールドバレルが前に行く馬を待ってくれたこともあり、二の脚でハナを取り切った。そこからは上手くペースを落とし、2馬身ほどのリードを取って3角手前で息を入れた。下りに入ると一気にペースを引き上げ、4角で徐々に馬場の良い中目に誘導。ここで後続馬に詰め寄られたが、直線序盤で再び引き離して1馬身半差。最後までその差をキープして勝利した。
逃げ先行タイプのドルチェモアやセッションが出走していた京都金杯では4番枠から2列目の外に誘導され3着に善戦したが、このレースはタフな馬場で前後半4F45秒3-48秒5と、かなりのハイペースで流れ、レース上がりは3F37秒1も要したものだった。今回想定されるような超高速馬場では、逃げ以外では結果を残せていない。
逃げられる可能性は高いが、前走の米子Sは逃げ馬不在のなか、ハナを主張し、前後半4F46秒6-44秒9のスローペースで逃げたものだ。加えて、前々走のマイラーズCでかなり押して逃げたことが、米子Sのテンの速さや粘り強さに繋がった面がある。関屋記念は逃げ馬活躍の舞台ではあるが、前走以上の走りは期待しにくく、評価を下げたい。
【能力値5位 プレサージュリフト】
東京芝1600mの新馬戦、続くクイーンCともに、出遅れて最後方付近からの追走だったが、メンバー屈指の上がり3Fで差し切って2連勝した馬。極端に内有利となった桜花賞では後方から3~4角の外を回るロスがあり11着に敗れたが、昨年の京都金杯、東京新聞杯で3着に入るなど芝マイルでは安定した成績を残している。
昨年の東京新聞杯では、大外16番枠から出遅れ、そこからじわっと挽回して中団外目を追走。道中も淡々とレースが流れるなか、内に入れられないまま3~4角は中団の外目。直線序盤でさらに外に誘導し、ラスト2F目で追われると徐々に伸び始めて3列目まで上がる。ラスト1Fで内のナミュールと併せて伸びてきたがクビ差及ばずの3着だった。
近走は、3走前のキャピタルS、前走のメイSと、先行策で2、1着と好走しており、自ら勝ちに行く競馬で上位争いに加われるようになったことは大きな収穫。しかし、この馬が自己最高指数を記録したのは前記の東京新聞杯。ラスト1Fで抜け出したところを差されて3着に敗れた昨年の京都金杯しかり、先行するとラストで甘さを見せる面がある。
本質的には差しがベストの馬ではあるが、今回そこまでペースが上がらないと想定する場合は届かない可能性が高い。また、休養明けの前走で好走した後の一戦であり、疲れも懸念されるため評価を下げたい。
穴馬候補はグランデマーレとロジリオン
【グランデマーレ】
2019年の新馬戦を逃げ切り、デビュー2戦目の葉牡丹賞では道中2番手から4角で堂々と先頭に立つ競馬で勝利した素質馬。そこから長期休養明けで挑んだ神戸新聞杯では17着と大敗したが、その後は芝マイル路線で再浮上。2、3勝クラスと連勝し、2022年にはニューイヤーSで2着に健闘した。
このニューイヤーSは13番枠。中山芝1600mで不利となる外枠だったが、まずまずのスタートを切って、ひとつ内のボンセルヴィーソに付いて行く形で2番手外を確保した。道中も淡々とレースが流れる中でポジションを維持し3角へ。3~4角でボンセルヴィーソにじわっと迫って半馬身差で直線へ。しぶとく粘る同馬をゴール手前で何とか交わしたが、外からカラテに差されてしまいクビ差2着だった。
このレースでは重賞でも通用する指数を記録しており、重賞で勝ち負けするのは時間の問題となるはずだった。しかし、その後は度重なる骨折で複数回の休養を余儀なくされたが、昨秋の信越Sで2着、続くオーロCでは1着と復活を果たした。
今年は3戦いずれも凡退しているが、前々走の京王杯スプリングCは3~4角の中団最内で包まれ、直線でも前が壁になるなどしての9着敗退。前走のパラダイスSは前と内が残る流れを14番枠から出遅れて中団外からの追走となり、終始3頭分外を回るロスが生じて12着と、明確な敗因がある。
また、この馬は先行してこそ能力を出し切れる馬。近2走、短い距離を使われているので、マイル戦の今回は楽に先行できるはず。ここでの復活を期待する。
【ロジリオン】
デビュー4戦目の京王杯2歳Sで2着、翌年のクロッカスSを勝利と、着実に力をつけてきた馬。続くファルコンSでは1番枠から出遅れて後方最内を追走の形。最後の直線では進路を作れずに5着に敗れた。そのため次走のNHKマイルCでは10番人気まで人気が落ちたが、結果は3着好走と、まともに走ることができれば高い能力を発揮できることを証明した。
前走のパラダイスSは4着。13番枠から五分のスタートを切り、コントロールしながら好位直後の外を追走。3角手前で内に入れようとしたが、一列下がって、4角では外に誘導して直線へ。ラスト1Fですっと伸びて3番手争いに加わったが、そこから伸び切れずに4着に敗れた。
このレースは、3角手前で後ろのシュトラウスが“かかった”ことで進路を譲り、そこからチグハグな競馬になってしまった。斤量が軽かったため大崩れはしなかったが、全能力を出し切れたレースではなかった。今回、同じ3歳馬ならば、人気しそうなディスペランツァよりも1kg斤量が軽いこの馬に食指が動く。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)サンライズロナウドの前々走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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