【函館2歳S】「4角6番手以内」が単複回収率170%超え 京大競馬研の本命は末脚光るカルプスペルシュ
京都大学競馬研究会
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4角で前に付けることが必須条件
7月13日(土)に函館2歳Sが行われる。昨年は10番人気のゼルトザームが勝利するなど、例年荒れやすい印象があるレースだ。今年も函館の短距離で新馬や未勝利を勝利した馬が多く名を連ね、キャリアの浅い出走馬は横の比較が難しい。非常に難解で大混戦の一戦となった。
以下では、本レースが行われる函館芝1200mのコース形態とそれに起因するレース質、そして想定される展開を踏まえ予想する。
まず函館芝1200mのコース形態を見る。向正面2コーナーのポケットからスタートして初角までの距離は約490m。緩やかな上り坂となっている。その後の3、4コーナーはスパイラルカーブで最終直線は約260m。直線半ばにかけて緩やかな下り坂でその後は平坦。コースを通してイメージより起伏がある上に、洋芝で全体的に時計がかかるというのも大きな特徴だ。
まず注目すべきはやはり初角までの距離だ。約490mとかなり長く、先行争いは激化する傾向にある。発走後が緩やかな上り坂とはいえ、前半のペースは上がりやすい。また本レースに限れば、先行有利になりやすい新馬、未勝利の函館短距離戦を前目で押し切って勝利した馬が多く直行してくる。そのためテンの速さがあるメンバーが揃い、先行争いはより激化しやすく、タフな洋芝ともなると序盤、中盤の先行負荷はキャリアの浅い若駒にとって大きい。
したがって超差し有利かと思いきや、3~4コーナーがスパイラルカーブかつ最終直線が約260mとかなり短いため、完全な差し決着にならないのも特徴だ。スパイラルカーブで外に振られた先行馬のさらに外を回して差してくる馬は、距離ロスが大きくなり、まず頭まで届かない。最後方付近から大外を回して差す競馬は厳しい。差し馬の場合、中団~好位を追走し、4角で先行馬が外に膨れた所を前目のインから馬群を捌いて差してくるのが最も理想的だ。
序盤、中盤の先行負荷が大きい前目脱落戦でも、残し切れる地力の高い先行馬と、中団から馬群を上手くさばける追走力の高い差し馬。つまり4角で前目の位置を取ることのできる地力の高い馬が好走しやすい。というのがこのコースが持つ特徴だ。
この傾向は数字からも明らか。過去10年の函館2歳Sで4角6番手以内の馬の成績は【9-8-7-46】勝率12.9%、連対率24.3%、複勝率34.3%、単勝回収率172%、複勝回収率170%と非常に優秀だ。勝ち馬9頭、馬券内30頭中24頭が該当しており、やはり4角で前目の位置まで押し上げていることが好走のための鉄則だ。タフなペースを先行した地力の高い先行馬と、追走力がある差し馬、特に高い瞬発力があり内から馬群を捌いた経験のある馬を高く評価したい。
続いて今回想定される展開から恵まれる馬を考える。メンバー構成は前走通過順位に3番手以内のある先行馬が12頭。出走馬全14頭に対し驚愕の多さだ。この中には距離延長馬もおり、間違いなく先行争いは激化する。
ただテンの速さで整理すると、前走ダートの馬を除いてシュードタキライト、ヴーレヴー、ヒデノブルースカイ、ニシノラヴァンダの4頭が抜けており、この4頭が中心となって序盤の熾烈な先行争いを繰り広げる可能性が高い。この4頭は前走が少頭数の単騎楽逃げ、牝馬限定、今回斤量増等の懸念点をそれぞれ持っており、序盤から先行負荷の高い競馬をした場合、終盤で脚色が鈍ると考える。
この展開で恵まれるのはやはり中団からの差し馬だ。4頭が作るハイペースを中団で追走し、4角から直線にかけて馬群を捌いてスムーズに末脚を使える差し馬が恵まれる。前が潰れた所を落ち着いて差して来られる馬を高く評価したい。
追走力のある差し馬が中心
◎カルプスペルシュ
新馬戦は好スタートを決めたが左右にフラフラとヨレてしまうロスがあり、二の脚を上手く使えなかった。しかし、その後はすぐに立て直しイン3番手まで位置を押し上げ、前半3F35.6秒を積極的に先行。4角では無理に大外を回さず、内から馬群を捌く形で抜け出し、上がり3F最速33.8秒の脚を使い勝利した。
この上がり3Fは破格の時計で、函館芝1200mの2歳新馬、未勝利を上がり3F34.1秒以内で勝利した馬は本馬と今年デビューしたもう一頭を除くと2頭のみ。ドナベティ(上がり34.0秒)はファンタジーS2着、モンドキャンノ(上がり3F34.1秒)は函館2歳S2着、京王杯2歳S1着、朝日杯FS2着と世代限定重賞で活躍した。上がり3F33秒台を記録したのは本馬が史上初。高い能力を持つのは間違いない。馬群を捌き追い出しに入った後の脚色も良く、今回は上積みも期待できる。馬群を捌いた経験があることも大きい。
新馬戦の3着馬が次走未勝利2着、4着馬が次走勝ち上がっているように、レースレベルも申し分ない。テンの速さを考えれば今回は自然と差しに回る形になりそうだが、前走で見せた追走力なら中団~好位まで位置を押し上げられる。前目から持ち前の瞬発力を発揮できれば、勝ち負けは必至だ。
◯エンドレスサマー
新馬戦は好スタートからハナを取り切り0.8秒差で逃げ切り勝ち。前半3F34.8秒と新馬戦の単騎逃げであった割には流れたが、脚色は十分で上がり3F2位の馬に0.4秒差をつける最速の34.6秒。高い瞬発力で勝利し、まだまだ余力を残しており能力の底を見せていない。前走は逃げたがテンの速さを考えると今回は差しに回る形になるだろう。こちらも中団~好位で運んで脚を使えれば。
▲エメラヴィ
新馬戦はややゆったりとしたスタートから二の脚が速く先行。前半3F34.7秒を3番手で先行し、インアウトの形でスムーズに追い出し、上がり3F34.7秒で余裕を残して0.4秒差勝ち。同じく上がり34秒台中盤だった6着馬が次走差して未勝利を勝ち上がっているように、レースレベルも高い。本命対抗の2頭と同じく中団~好位で競馬が出来そうだ。
△サトノカルナバル
新馬戦は好スタートから先行し、前半3F36.5秒という超スローペースの瞬発力戦を上がり3F最速、同2位の馬より1.0秒速い脚を使い、7馬身差勝ちの好内容だった。最後も持ったままでまだまだ能力の底を見せていない。ただ今回追走ペースが上がってどうか。追走さえできれば距離短縮で自然と差しに回り好走できそう。大差勝ちがオッズに組み込まれそうで、妙味を考慮して4番手評価とする。
×チギリ
前々走新馬戦はやや出負けしたものの二の脚が速くスッと先行。その後はやや位置を下げ、外を回し上がり3F最速の脚を使ったがヴーレヴーを捉えきれず2着。今回の先行負荷が高い展開ならこの差は逆転可能と見る。ただ、これまで少頭数しか経験していないこと、そもそも近2走は牝馬限定戦でレースレベルが懸念材料であるため5番手評価とする。
×リリーフィールド
新馬戦は函館ダート1000m。スムーズなスタートから二の脚が速くスッと先頭。そのままマイペースで逃げて上がり最速、同2位の馬より0.7秒速い脚で圧勝した。タイムも優秀で同日古馬1勝クラスより前半3Fは0.5秒遅いにもかかわらず、後半の脚だけで同タイムまで持って行った。最後も流しておりまだまだ能力の底を見せていない。2着馬が次走同条件で圧勝しており、レースレベルも高い。今回はこの内容がダート適性によるものか、絶対的な能力によるものかが分かる試金石の一戦。ここで負けても自己条件に戻ったら買いたい。
買い目は◎単勝1点、馬連◎-◯▲△×5点、3連複◎-◯▲△-◯▲△×9点で勝負する。(花田)
▽函館2歳S予想▽
◎カルプスペルシュ
◯エンドレスサマー
▲エメラヴィ
△サトノカルナバル
×チギリ
×リリーフィールド
ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派が揃う。
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