【函館2歳S】同舞台の新馬戦組が優勢でエメラヴィを高評価 コース、位置取り、経験がものを言う一戦
勝木淳
ⒸSPAIA
前走未勝利もチャンス
世代最初の重賞はその後、活躍する馬をなかなか出せず早熟っぽい馬の代名詞になりがちだが、状況を冷静に考えれば、新馬戦が始まってからまだ1カ月半、6週しか開催されていない。早期デビュー同士の戦いが完成度の高さを競うのは自然なこと。どの馬が2歳7月2週目で大人びた走りを披露できるか。完成度はこのレースの非常に大きなポイントでもある。データは過去10年分を使用する。
函館5週間の戦いゆえに、ほぼ1戦1勝か2戦1勝。レース経験が少ないということは我々も適性をつかむ材料がないに等しい。ジャッジの難しいレースだけに、1番人気【2-1-0-7】勝率20.0%、複勝率30.0%と想定外も多い。それでも4番人気【3-1-2-4】勝率30.0%、複勝率60.0%でここまでが8勝。大雑把な見立ては間違わない。一方で、10番人気以下【2-2-4-50】勝率3.4%、複勝率13.8%と思いもよらない伏兵の激走もある。やや極端な傾向も世代初の重賞らしい。みんな能力を正確に見定めきれていない。
前走新馬戦【7-8-9-79】勝率6.8%、複勝率23.3%と当然ながら1戦1勝馬が好走の大半をしめる。5週間の短期決戦だけに、回り道はマイナス要素と考えがちだが、未勝利は【3-2-1-23】勝率10.3%、複勝率20.7%と数こそ少ないものの、決して見劣らない。一つでも多くレースを経験したことが、重賞でプラスに働くという見方もできる。
控えた経験が生きる
開幕週の芝1000mを勝ったヒデノブルースカイ、翌日芝1200mを勝ったエメラヴィを筆頭にヴーレヴー、ニシノラヴァンダら函館新馬勝ちを中心に、4週目の未勝利戦を勝ったシュードタキライト、チギリなど、今年も実力拮抗の一戦になる。新馬、未勝利の傾向をしっかりつかもう。
函館新馬戦のコース別では、同舞台芝1200mが【5-4-5-38】勝率9.6%、複勝率26.9%。ここは分母が大きいので確率は抑え気味だが有力だ。対して、毎年初日に組まれる芝1000mは【1-0-1-11】勝率7.7%、複勝率15.4%と冴えない。初日の新馬勝ちは話題になり、さらに重賞まで中4週と間隔をしっかりとれるから、人気になりやすいが、簡単には飛びつけない。今年のヒデノブルースカイの57.6はとりわけ目立つ時計ではない。ラスト200mは12.4。距離延長は壁だろう。
同舞台の新馬を勝った馬についてもう少し詳しく。位置取りでは逃げ【1-0-1-16】勝率5.6%、複勝率11.1%、先行【4-4-4-18】勝率13.3%、複勝率40.0%と控えた組の成績がいい。新馬戦を夢中になって押し切った馬より、控えて抜け出す大人びた競馬で勝つ。重賞に向けて控えた経験が強みとなる。エメラヴィ、カルプスペルシュ、ヤンキーバローズらが候補。3頭の勝ち時計はさほど変わらないが、着差が大きいのは0.4秒差をつけたエメラヴィ。逃げて引き離したのではなく、好位から抜け出してつけた着差だけに評価したい。
最後に未勝利組について。函館組ならすべて前走芝1200mで、逃げ【1-1-0-6】勝率12.5%、複勝率25.0%、先行【2-1-1-11】勝率13.3%、複勝率26.7%。逃げ先行の差は新馬戦ほど大きくないが、こちらも一旦、控えて抜け出す形が強い。シュードタキライト、チギリはともに先行して未勝利を脱した。シュードタキライトは前後半600m34.3-35.7の前傾ラップ。2歳夏は短距離といえどまだ飛ばすレースが少ないだけにハイペースの経験は貴重だ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
《関連記事》
・【函館2歳S】過去10年のレース結果一覧
・【競馬】2歳戦に強い騎手、調教師を東大HCが徹底調査 川田将雅騎手はGⅠで勝率42.9%、単勝回収率317%
・東大HCが産駒、騎手別の「函館巧者」を紹介 「ジャスタウェイ産駒×芝2000m」、佐々木大輔騎手が狙い目
おすすめ記事